第103話 ストッカー
「村の内情はこんなもんじゃが……これから勇者さまたちはどうするのじゃ? まあ儂たちの話を本当だと思うかどうかは、勇者さまの受け取り方次第ではあるけどな」
とじいちゃんは俺たちにどうするかを聞いてきた。そうだな……
「まず、その役場職員の3人に会ってみます。でも、いくら出向だとはいえ、無条件にその3人に俺たちが従う義理はないので、そちらの3人の話を聞いてからいろいろと判断したいと思います。まあ、依頼の時点でなにか胡散臭さを感じますけど」
ミカゲも黙って俺の話に頷いてくれる。
彩友香はそれすらも納得せずにぶすくれたままであったが、そこは置いておこう。
「そういえば、現在まで村が孤立しているわけですが、食料や日用品などはどうやって入手しているんですか?」
何時に役場職員と会うなどの約束はしていないわけだし、多少ここに長居しても問題ないはず。なので、出来るだけ現在の忍成村が置かれている状況をじいちゃんに聞くことにした。
「食料は……そうじゃな、秋が終わったばかりじゃから米や畑の野菜、それと山菜やきのこ類の保存食があるから今のところ大丈夫じゃ。あとここには猟師をやっている人もいるしな。年寄りばっかりの村じゃがなんとかなるもんじゃよ」
「そうなの、若い子は少ないの。青年団の人たちも村を出て行っちゃったし」
彩友香は寂しそうに言う。
「おい、お前さ、なんでここの村に住んでるんだ?」
ミカゲが彩友香に質問する。彩友香は痛いところを突かれた質問だったようで、下を向いて黙り込む。あ、ここでダンゴムシの術発動にはならないのね。
「彩友香はわしの孫でな。以前はここから南に下ったところにある大郷市というところに親と一緒に住んでおったんじゃ。だがそこで嫌な目にあったというか、ニュースでよく見るストッカーとかいうやつに追い回されたのじゃ」
うん、わかります。ストーカーですよね。
下を向いたままの格好で、彩友香の表情は見えない。きっと辛かったんだろうな。
「で、ここに身を隠しているのじゃ。名目上は看護助手という形で儂を手伝うことになっているんじゃ。……だけどなぁ、彩友香はまた変な輩、いや役場職員にストッカーされているのじゃよ」
「――――あのおじいさん、ストッカーではなく、ストーカーですよ」
おおそうか。いやあ歳を取ると横文字言葉に弱くてのう、とじいちゃんはハリセンを広げて顔を隠す。結構便利だな、ハリセン。
彩友香が顔を上げる。
彩友香の特徴的な暗赤色の瞳が、燃えるような赤い色に光っている。
あ、泣いているんじゃなかったのね。
「あいつらを麻酔で眠らせてからコテンパンにする予定だったのに! じいちゃんが針を隠すから計画がおじゃんだべ!」
「これ! 彩友香っ!!」
じいちゃんがハリセンを構える。が、そのハリセンをミカゲが抑える。
「まあ、怒る気持ちもわかるが、手段を考えろよ」
と彩友香に言う。
彩友香も麻酔をそういう用途に使ってはマズイものだとわかっていたらしく、燃えるようだった赤い瞳がスウッと暗赤色に戻り、口を尖らせたままではあったがおとなしくなった。
「とにかく、その役場職員と話をしてきます。もしも話が決裂した場合には、ここに戻ってきても大丈夫でしょうか?」
「ああそうだじいさん、俺の車を停めてもらってもいいか?」
「おお、あの赤い車じゃな。戻ってくることも車のことももちろんオーケーじゃ。彩友香がパンクさせてしまったんじゃからなぁ……彩友香、そのことも謝りなさい」
「うっ……ご、ごめんなひゃい」
噛んだ! さっきのごめんもひょっとしたら天然に噛んだのかも。




