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第100話 彩友香

 忍成村に入った。

 温泉地らしく、あたりからは湯気がたなびいている。が、人っ子一人居ない。


 かろうじて舗装にはなっているが、それも古めでヒビの入りまくった狭い道路。民家を縫って作られている細い路地をミカゲの車は走っていた。

 ミカゲはかなりゆっくりと走行していたが、古びた個人病院の前あたりで妙な音が車の下から聞こえて、フェアレディZがパンクしてしまった。


「ちょ、おい……なんだよこれ」


 俺たちは車を降りてタイヤを確認する。タイヤにはトゲトゲした植物を乾燥させたものが10個ぐらい刺さっている。道路を確認すると、妙なトゲトゲがそこらじゅうに散らばっていて足に刺さりそうで危なかった。

 俺たちはそれを踏まないように移動する。


「いたずらにしてはひどすぎんぜ、これはよ……」


 タイヤに刺さったトゲトゲを抜いていくミカゲ。タイヤは前輪の2本がパンクしていて、修理できるわけじゃなく、さらに予備タイヤが1本しかないため、車をこれ以上動かすのは無理だった。

 あきらめて、道の脇にフェアレディZを寄せて置いておくことにした。



「しかし……妙な村だな。ここは」

「うん」


 正直、マフラーを改造していたミカゲのフェアレディZは走行音がうるさいから、忍成村へ入る前まではかなり注目を浴びていた。民家そばを走っていたら苦情を言われるレベルである。

 だけど忍成村に入った途端に誰一人ともすれ違わないうえに、俺たちを伺うような視線も感じない。

 まるで廃墟の村の様相であった。


 しん、と静まりかえった村で、俺とミカゲはあたりを見回す。


 その時……首筋にチクッとした痛みが走ったと思ったら、頭がぼうっとしてあっという間に俺の意識は刈り取られた。




「だってじいちゃん! あいつらの仲間だよ? だったらいいでしょ!!」


 気づくと、なにか消毒液の匂いがして、いきり立った女の子の声が聞こえた。どこかに寝かせられているのだろうが、頭がグラグラしていて、はっきりしない。自分自身がどこにいるかもわかっていない状態だ。


「でもなあ、彩友香さゆか。いきなり手荒いことをやったのではいかん」


 聡明そうなおじいさんの声が聞こえる。彩友香? 一体誰なんだろう。

 そして、ミカゲはどうなったんだろう。

 俺は再び混乱しつつもぼうっとした頭のまま、意識を失った。



「おい、和哉。大丈夫か?」


 ふたたび気を失ってからしばらく経ったんだろう。ミカゲが肩を軽く叩きながら俺を起こす。よかった。ミカゲとはぐれたのかと思ったけど、一緒だった。

 目を開けると、光の消えた手術用の照明器具が見えた。俺はどこかの病院のベッドに寝かされているようだった。


 頭はまだぼうっとしていたが、なんとか上体を起こす。狭い部屋の中には中心に俺が寝ていたベッドがあり、あたりには古びたガラス棚や白い洗面器が置いてあった。どうやら小さな個人病院らしかった。



「ふん、あのまま気を失い続けていればよかったのよ」


 低めの女性の声が聞こえた。しかも俺に敵意をもったような尖った声。


「おめーなあ……いきなり麻酔はねーだろよ」

「麻酔じゃないわよ。ちゃんとした忍術なんだから」


 ミカゲも俺と同じように眠らされた挙句、ここに拉致されたようだ。

 そして俺は、その女性を見る。


 年齢は二十歳前後ぐらい。黒紫色の腰まであるまっすぐな髪の毛と大きめの暗赤色の瞳。尖った声のイメージそのままの気の強そうな顔立ちをした色白の女性だった。

 その女性は小さな丸い椅子に座っている。その向かい側の診察机の前には細身で白髪のおじいさんが居た。


「おお、よかったなあ。気がついたのか」


 おじいさんは俺を見て嬉しそうにコクコクと頷いている。

 そのひとの良さそうな笑顔にちょっとだけ安心した俺だったが、おじいさんはおもむろに椅子の脇から大きな手作りのハリセンを取り出し、目の前にいる気の強そうな女性に向かっていきなり……


 スパ――――ン!


 と思いっきりハリセンを振り下ろした。


「むぐはっ!!!」


 不意打ちをされた女性は、妙な声を出して椅子から転げ落ちた。

 ええ……一体どうゆう状況なの? これ。

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