結婚2
王都での結婚式終了後、俺達は新婚旅行を兼ねて、のんびり旅を楽しみながら、フローラの出産に備えるために竜王国へ向かう予定だ。
よし、面倒な式は終わった!
お待ちかねの初・夜を迎えるために、俺はフローラを王都の高級宿へ連れ込んだ。
三日分を前払いし、食事だけはドアの前に置くように指示を出して、他は一切の干渉をしないようにしっかりと言いつける。
父上は、古式ゆかしい巣を作ったみたいだけど、現代っ子の俺はそんなものはどうでもいい。
二人っきり誰にも邪魔されず、一日中愛し合える場所でさえあれば!
「フローラ!!」
部屋へ入るやいなや、フローラをベッドに押し倒した。
フローラはお風呂に入りたいと言ったけれど、俺は無視した。
もう一刻だって待てない。
フローラの評判を気にする母上にガードをがっちり固められ、触れる事はおろか口づけすら叶わなかった。
「んう、んっ・・・レオン、待って」
深く口づけ、舌をねじ込み、柔らかな唇を貪った。
ああ~、うんめぇ~。久しぶりのフローラに、ますます涎が出る。
「嫌だ、もう待てないよ。ずっと我慢させられてた」
身体をまさぐりながらドレスをむしり取り、柔らかな肌にむしゃぶりつく。
あの時、俺はもう、フローラを二度と抱く事は叶わないのだと、絶望の中、諦めた。
フローラの存在を確かめかった。
今、こうしているのが現実なんだと、夢じゃないんだという確証を、実感を、得たかったのだ。
匂いに吸い寄せられるように舌を差し込み、フローラを思う存分味わう。
愛撫に身を震わせるフローラを見て、ようやく落ち着く事が出来た。
悦びが身体中に満ちていく。
早くひとつになりたいと思ったのに、今まで全てを任せてくれていたフローラが、挿入する段になって、拒絶した。
「フローラ、大丈夫だよ。優しくする」
身を縮めて震えるフローラを後ろから抱き寄せて、髪に宥めるように口づけると、フローラは顔を俯けたまま、そうじゃないと首を振る。
「怖いの・・・また、一人取り残されてしまうんじゃないかって。そんなわけないって自分に言い聞かせるけど、でも、これは、レオンを失った私が狂って、自分に都合のいい夢を見てるんじゃないかとも思ってしまうの」
「フローラ・・・」
「夢でもいいの、このままレオンとこうしていられるなら。私、ずっと目を覚まさない、覚ましたくない!」
「ごめん、フローラ、ごめん、ごめんな」
俺の存在が少しでも現実味を帯びるように、フローラを強く抱き締めた。
今でもちょっとでも気を抜くと、番いを無惨に殺されそうになった恐怖に凍り付く。
心に傷を負ったのは、俺だけじゃなかった。
「これは夢じゃない、現実だよ。俺達は生き残って、結婚したんだ。もう、誰に憚ることなく、ずっと一緒にいられるんだよ」
フローラの涙が、俺の腕に滴り落ちる。
「・・・・・・レオン、私をひとり置いていったりしない? 死ぬ時も・・・私を一緒に連れて行ってくれる?」
「ああ、フローラ。ごめんよ、俺が悪かった。もう、二度とフローラに一人で生きろとは言わない。フローラをひとりきりには絶対にしない、約束する」
確かめるように問うフローラの手を取り、口づけた。
「大丈夫、大丈夫だから。ああ、フローラ、愛してる」
「レオン、レオン、そばにいて。怖い。私を離さないで」
不安がるフローラを安心させるために、手をしっかり繋ぎ合わせて愛し合う。
「俺はここにいる。大丈夫、どこにも行かないよ。俺達はずっと一緒だ」
どんどん交わりを深めていくにつれて、心は寄り添い一つに溶け合って、俺達はその夜、番いの本当の意味を知った。
三日間フローラを部屋から一歩も出さず、甘やかしてヤリまくった。
あの忌まわしい初体験の記憶は、愛情を嫌という程注がれたこの三日間の記憶に、塗り替えられたはずだ。
回数を重ねるごとに、俺とフローラの身体は馴染み、心の距離は縮まって、今や一ミリの隙間もないほど、俺とフローラは超ラブラブ。
「あっ、ん、だめ、レオン、やめて」
だから、こうして出発の準備をしているフローラの背後から抱き付いて、首筋に舌を這わせても、胸元へ手を忍び込ませておっぱいを揉んでも、ぜんぜんおっけー、怒られたりしない。
「ねぇ、フローラ、もう一回しちゃだめ?」
朝からすっきりして、機嫌よくキシリアの街へ向かう。
隊長には式に出席してもらって挨拶済みだけど、同じ班だったグレン達には世話になったし、同じ釜のメシを食い、共に戦った仲間でもあるから、竜王国に行く前に挨拶くらいはして行くべきだろう。
俺をお子ちゃまのストーカー呼ばわりした奴らに、俺と番ってますます美しくなった、俺にベタ惚れの妻のフローラを見せびらかしてやる。
独り者のアイツらに、美しい妻を自慢してやるつもりで会いに行ったのに、俺達は思いもよらないほどの歓迎を受けた。
そして、祝いの宴の際には、隊員がおずおずと近寄って来て、フローラに謝罪と祝福をしていくのだった。
「フローラ、良かったな」
「うん・・・」
グレンは、俺達が居なくなってどれほど心配したか、俺達が結婚してどれほど嬉しいか、涙を流して喜んでくれた。
兄貴風を吹かせる調子のいい奴だけど、世話好きで、俺もフローラも随分助けられた。
そのグレンが、見送りの際、これ、俺達からの餞別と言って、フローラに隠れてこっそり包みを渡して寄越す。
仲間だった男達が新婚の俺に渡す餞別といえば、まぁ、精力剤とか栄養ドリンクとか、今夜は頑張れよ的な、そういう類のものだろう。
竜族で、まだぴちぴち若い俺には必要ないものだけど、気持ちは嬉しくて、有り難く受け取った。
宿に着き、フローラが風呂に入ったのを見計らって、隠し持っていた例の餞別を取り出す。
せっかくだから飲んでおくかと包みを開けた。
『正しいエッチの仕方』
『初めてのエッチで失敗しないために』
『お悩み解決-早漏編』
『女を悦ばせる12の方法』
『秘技・愛の四十八手』
・・・・・・
アイツら、俺を馬鹿にしやがって。
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早漏じゃねぇし!
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「フローラ、もう一回してもいい?」
ああ~、さっきのもよかったけど、この体位もすごくいいかも~。




