女の子2
すみません。旅行に出掛けるので、10日間くらい更新出来ません。
本当はGW中に終わらせる予定だったのですが(長い休暇で見てくれる人が増えるのを期待して)・・・
全然ダメだったっ!!
アクセス数はさておき、戻りましたら完結まであと数話、頑張りますので、どうぞ最後までお付き合い下さいますよう宜しくお願いします。
それから、先日高い評価点を入れて下さった貴重な方には、お礼を申し上げます。
力を頂き、ありがとうございました!
「おい!」
ああ、やっと願いが通じて、助けが来てくれたようだ。
良かった、助かったと安心したのに。
「こんなとこにひきこもっていないで、はやくかえれよ!」
助けに現れたのは、家族じゃなくてフローよりもちびな子供だった。
はぁ?! なんで?!
なんで、ちびすけばっかり出て来るんだ? しかも、ちびのくせにやけに生意気だし。
「帰れるならとうに帰っているよ! 帰れないから、困って助けを呼んでるんじゃないか。なんで、助けに来るのがお前みたいなちびなんだよ! 他に誰か、大人はいないのかよ?!」
むっとして言うと、ちびもむっとして、ふてくされる。
「ここにいるのはおれだけだから・・・しょうがないだろ! みんなは、そとにいる。ついてこい」
はぁ? なんだこいつは!?
でも、一応、助けてはくれるみたいだ。
仕方がない。こんなちびっこでも、ここは縋るしか・・・
フローを抱き上げて、ちびすけの後をついて歩きながら、ふと思った。
ん? 黒い髪のこのちび、誰かに似てると思ったら、小さい頃の俺に似てないか?
俺に似てるということは!!
分かった! 分かったぞ! 弟か!! 弟だな!! 弟に違いない!!
母上の十番目の子供だ! 俺達兄弟はみんなそっくりなんだ、間違いない!
母上が俺の知らない間に弟を産んだんだ。
それにしても、なんで母上はこんな生まれたばっかりの弟を助けに寄こすんだよ!!
どうせなら、ルカウス兄上にしてくれれば良かったのに!
すると突然、フローが腕の中で暴れ出す。
「フロー、どうした?」
「いや! フロー、ここにいる。ここでお父さまを待ってるの。おろして!」
フローは暴れて俺の手を逃れ、その場にしゃがみ込んだ。
え? 地面を見て気付いた。森の中にいたはずなのに、一体いつの間に?
俺達は知らぬ間に森を抜け、今、周囲を見渡せば氷に囲まれた世界にいる。
寒いはずだよ。
「フロー、こんなところにいたらフローが凍えてしまうよ。お兄ちゃんと一緒に行こう?」
「おそとはこわいから、いや。みんなフローがきらいなんだもん。さむくても、がまんする。フロー、ここにいる」
「フロー、いい子だからお兄ちゃんの言う事を聞いてくれよ」
「・・・・・・」
「フロー」
「そいつはおいていけ。こわがりなんだ。ひとりぼっちでもここにいるほうがあんしんなんだよ。それより、あんただよ。あきらめないで、さっさともどってくれよ。じゃないと、おれ、こまる」
俺がフローを説得していると、前を歩いていたちびが戻ってきて、苛立っているような、それでいて泣きそうな顔をして言った。
「俺だって早く帰りたいのは山々だけどさ、こんなところにフローをひとりきりで置いていけないよ。それに、こんなに小さいのに、ひとりぼっちでもいいなんてこと、絶対にないと思うんだ」
ちびすけがちびのくせにため息をつく。
「はやくしろよ」
本当に生意気な弟だ。
「なぁ、フロー、お兄ちゃんと一緒にここを出て、フローのお父様を探しに行こう? お父様はフローのところに来たくても来られないのかも知れないよ。お兄ちゃんはフローのお父様と同じ魔法使いだから、きっとフローのお父様もすぐに見付けられると思うんだ」
「お父さまを?」
「うん、お父様のところへ連れて行ってあげるよ」
「フロー、お父さまのところへいきたい!」
フローは俺に手を伸ばしかけたけど、再び引っ込めてしまった。
「でも、おそとには出られない」
「お兄ちゃんがついているよ。お兄ちゃんが一緒なら平気だろう? フローをいじめるやつは全部やっつけてやるから」
連れ出すために言った口からのでまかせじゃなくて、その時俺は本当に、怯えて外に出られない小さなフローを守ってやりたいと思った。
「フローといっしょにいてくれるの?」
「フローが望むなら」
フローの瞳が揺れる。どうしようか、迷ってるみたいだ。
「お兄ちゃんはフローのこと、きらいにならない?」
「ならないよ。フローは俺の大切な・・・だ。嫌いになるわけない。フローが好きだよ、大好きだよ。誰よりも何よりも、愛してる」
愛してる? 子供のくせに、俺、何言ってんだ?
でも、へんだな、つい最近、同じ言葉を誰かに、言った気がする。
誰だっけ? 誰だろう? 思い出そうとしてみるけれど、うーん、思い出せない。
家族じゃない、でも家族くらい俺にとっては大切な、大事な人だった気がする。
忘れちゃいけない俺の、俺の・・・
『俺の・・・・、愛しい・・・・、俺がどれだけ貴女を愛したか、寂しくなったら思い出して欲しい』
『フロー・・・が凍えないように温め続けるから』
『愛しいフロー・・・心配しないで、俺はずっと傍にいる』
フロー? 違う・・・フロー・・・フロー・・・フロー・・・フロー・・・ラ? フローラ!
思い出した!! フローラだ!!
俺は・・・・・・
俺は全てを思い出した。
なら、ここはどこだ?
目の前にいるフローを見る。
「フローはフローラ、なのか?」
「? フローはフローだよ?」
「フローはいくつだ?」
「ごさい」
なるほど、そういうことか。
「フロー、やっぱり俺と一緒にここから出よう! 俺も戻る! あのちびの言う通り、諦めちゃ駄目だな! 母上なら、きっとなんとかしてくれるはずだ」
俺はフローの小さな頭を手の平で撫で、頬をくすぐる。
「俺はずっとフローに会いたかったんだ。だから、会えてすごく嬉しいよ。フローを傷付ける何者からもフローを守ってやりたいと思ってた。誰よりも愛してやりたいし、幸せにしてやりたい。フローが大好きなんだ。こんなところにひとりぼっちで残していきたくない。俺にフローを愛させてくれ。俺を信じて一緒に来て欲しい」
俺は幼いフローラの手を取り、その小さな手の甲にキスをした。
「フローは俺が好きだろう? 俺と一緒にいたいはずだ」
幼いフローラは目を丸くして驚いていたけれど、俺がじっと見つめれば、はにかんで頷いてくれた。
「よし、ここを出よう! って、あれ? あいつは?」
フローを抱き上げ、道先案内人のちびすけの姿を探す。
俺に戻れと言っておいて、それはないだろう!
生まれたてのちび相手に大人気ないけど、イラッとした。
俺、どっちに行けばいいのか全然分かんねーのに、お前がいなくなったら、マジ戻れないじゃん!
今はあのくそ生意気な弟だけが頼りなのに。
弟に殺意を抱き始めた時、突然足元がぐらぐら揺れ出した。
ピシッという音と共に氷の地面に亀裂が走り、あっと思った時には、ガラガラと氷の世界全てが崩れて、俺達は氷の塊と共に下に落ちていった。
ドンっという衝撃を身体に受けた。
「うっ!! いっ・・・てー」
チッ、身体を動かそうとしても、痺れて動けない。
もしかして、落ちた衝撃で骨が砕けてしまったのだろうか。
フローは? 腕の感覚がなくてよく分からない。
弟め! 全然役に立ってないじゃないか! 助けに来たなら、ちゃんと最後まで面倒を見ていけよ!
クソちび! 出て来い! おい、聞こえないのか!!
「レオン! レオン! しっかりしろ! 目を覚ませ! レオン!」
揺さぶられて目を覚ますと、目の前に兄上の顔があった。
「え? あ、あに・・・うえ?」
ああ、あいつ、兄上を連れて来てくれたんだ。
「レオンっっ、よ、よかっ・・・たっ!」
フロー? じゃない、フローラ・・・か?
「フロー・・・ラ! おれ、・・・戻ってこれた・・・んだな・・・」
俺に縋りついて泣くフローラの、もう小さくはない身体を抱き締めてやっと、戻って来たのだと実感出来た。
「レオン、直ぐに母上のところに連れて行ってやる!」




