表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/50

怪我の功名2

 俺の魔力は、結果的に思った以上の影響をフローラにもたらした。


 今朝目覚めた時、フローラは俺におはようの挨拶も無しで、しばらくぼーっとしていたかと思うと、今度は自分の身体を動かしたり見回したりして、そして怪訝な顔をして、俺を見た。


「コレって、レオンがやったの? なんかすごく身体が軽いの。それにいつも胸につっかえてた塊が無くなって、ふわふわしていて・・・すごく幸せな気分なの・・・」


 俺はニンマリした。

 やっぱり思った通りだ。

 俺の魔力はフローラにいい影響を及ぼしている。


「あ、今笑ったでしょ! やっぱりレオンの仕業だったのね!」


 フローラは俺を両手で掬い上げ、自分の目の高さまで持っていく。

「ありがとう、レオン。・・・でも、これってレオンの魔力じゃないの? 私に魔力を渡してしまってレオンは大丈夫なの? お願い、私のために無理はしないで。レオン、分かってる? 絶対よ? 約束して!」

 そして、俺の真意を探ろうと、真剣な眼差しを向けた。


 もちろん俺は、フローラのためなら無理だろうが何だろうが、するに決まってる。

 でも、フローラを不安な気持ちにさせるのは本意ではないから、フローラの手に頭をすり寄せ、甘えて誤魔化した。


「甘えて誤魔化しても、ダメよ!」


 え? もしかして、俺の頭の中、まる見え?

 今までは簡単に騙されてくれたのに。俺は驚いた。

 頭は手の平にすり寄せたまま、目だけを上に向けてフローラを窺ってみると、俺を睨みつけている。

 そして、私は誤魔化されませんからね! と一歩も引かない強い口調で迫ってくる。


 これって、俺達の繋がりが深くなったから?

 ふーん、それはそれで悪くない。

 俺はバタリと倒れ、お手上げ、降参しましたという意味を込めて、両手両足を上に向けた。


「まあ、レオンったら!」


 俺のメッセージはフローラに伝わったようだ。

 フローラはクスクス楽しそうに笑っている。

 フローラが笑うと俺は嬉しくなる。

 俺はフローラが大好きだ。




 俺の魔力は、不安定だったフローラの魔力を落ち着かせただけでなく、気力を与え、身体を強くし、魔法のコントロールにもその威力を発揮した。

 そしてそれは、フローラに自信を与える事となり、フローラは周りの人間に対し無闇に怯えなくなった。

 怯える必要が無くなれば、警戒もする必要は無くなり、硬く強張った表情はどんどん柔らかくなり、明るく笑うようになった。


 もちろん俺はフローラのこの変化を喜んでいる。

 フローラの心の負担が減って、フローラ本来の明るい性格を取り戻し、生き生きとした生活をし始めたのだから、嬉しいに決まっている。


 だが、美しい花に悪い虫は付きもので、今までフローラの警戒心が作り上げていた魔力結界が薄くなるにつれて、悪い虫どもがわんさか寄って来るようになった。

 番いの俺としては、当然気に入らない。

 竜族の男として目覚めた俺は、父上を見習うことに決めた。

 母上の小言なんて、もう空の彼方に飛ばしてやったさ。


 暴露本を読んだ時は、なんか父上って、情けなくてちっちぇーと思ったけど、竜族の男としては全く正しい行為だったと今なら分かる。

 というわけで、寄って来る虫は片っぱしから追っ払う。

 とりあえず、フローラの半径2メートル以内には近付けないように結界を敷いた。

 そして、俺自身も、もうポケットの中に隠れたりしない。

 フローラは俺のものだと周りに知らしめるべく、俺の定位置はフローラの肩の上になった。

 

 フローラから仕事に支障が出ると苦情が入って、しぶしぶ半径2メートルの結界は取り止めにした。

 でもその代わりに、”触れたら虫ぞわぞわ”結界にした。

 フローラには呆れた顔をされたけど、知るもんか。

 俺だって譲歩はしてやったんだからな。

 それから、下心を持って俺のフローラをイヤラしい目で見るような奴には、遠慮なく耳に噛みついてやる。

 フローラを傷付ける奴もだ。

 こうして俺は第5警備隊において、フローラの小さなおっかない用心棒としての市民権を確立した。


 フローラを敵対視する奴は相変わらず居る。

 戦争の爪痕はまだ深く残っている。

 でも、あの日以来、フローラは揺らいでも、自分自身を見失うという事はなくなった。

 俺が心配そうな顔をすると、フローラは決まって、自分の胸を押さえて、レオンがここで私の心を守ってくれてるから大丈夫なのと笑う。


 だから、俺はあの日から毎夜、フローラへの魔力の補充を欠かさない。

 俺の魔力をフローラは必要としている。


 俺のフローラ、可愛いフローラ、いい匂いのフローラ、どこもかしこも柔らかいフローラ。

 フローラだってカメレオンの()を愛でて楽しんでいるのだから、俺がフローラを愛でて愉しんでも、何ら問題はないはずだ。


 ベッドに横たわりながらフローラを腕に抱き、可愛い寝顔を眺めながら考えを巡らせる。

 さぁ、次の一手はどうするかな? ねぇ、フローラ。

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ