第四章:紹介
俺が顔面を抑えてうずくまっていると、三人の男が階段を下りてきた。
「彰子お嬢様、私たち以外にも誰かいらしたのですかな? 何やらすごい叫び声が聞こえてきたのですが」
階段からやってきた三人の男のうち一人が、そう彰子に声をかけた。
「いるにはいたわ。もう二度と顔も見たくないと思ってたくそ野郎だったけどね」
「さっきから私のことは完全スルーなんですね、彰子さん……」
俺の隣でぼそりと涼森が呟く。そういえば、登場してから一度も涼森に話しかけてないな、彰子さん。
それはそうと、俺はうずくまった状態のまま、新しくこのホールに現れた三人の男に視線を向けた。
今彰子に話しかけた人物は、物腰が何となく高圧的な、小柄で頭頂部がやや薄くなりかけている、おそらく五十代くらいと思われるおじさんだ。
その後ろにいる男性のうち一人は、百八十センチを優に超えるであろう高身長に、整った顔立ち、見るからにセンスのいい服を着たザ・好青年といった様子の人物。もう一人の男は、ザ・好青年と同じくらい背が高く、目はやや吊り上がった細目に、肩まである長髪がトレードの、猜疑心が強そうな人物だ。
俺が彼らを観察している間に、彰子は俺と涼森のことを(どうやら涼森を忘れていたわけではないらしい)簡単に、悪口を交えながら説明していた。
彰子の説明を聞き終えると、三人の男たちは俺らに対して自己紹介をし始めた。
最初に挨拶を始めたのはザ・好青年だ。
「初めまして、荒瀬蔵馬と申します。彰子様のお父様の会社で働かせてもらっているものです。彰子様のご友人同士、これからよろしくお願いします」
荒瀬ははきはきとした聞き取りやすい声と、さわやかな笑顔を振りまきながら頭を下げる。
「ちょっと蔵馬、私とこいつらは友達じゃないって言ったでしょ。ただの知人よ知人。しかも仲良くないほうの」
荒瀬はそう言い募る彰子をほほえまし気に見つめながら、慣れたしぐさで彰子をなだめる。
彰子の機嫌が直ったのを見届けてから、今度は小柄なおじさんが口を開いた。
「私は藤林道成という。荒瀬君同様、彰子お嬢様のお父上の会社で働かせてもらっている。もちろん荒瀬君より立場は上だがな」
藤林はそういうと、大儀そうにため息をついた。
藤林のあからさまに人を見下したような態度に感嘆しつつ、俺は横目で涼森の様子を窺う。涼森は相変わらずの無表情で、藤林に対してどんな感情を持っているのかは見て取れなかった。
俺が涼森を盗み見ていることなどに当然気づかず、細目の男が話し出した。
「志島司という。できればこんな自己紹介などをする前に、今の事態について聞いておきたいのだが。君たちは今、俺たちの身に何が起こっているのか知っているのか?」
志島は挨拶もそこそこに、今の状況を聞いてきた。