第一章:再会
俺の名前は日暮冬という。目の下に大きなクマがある以外は何の変哲もないただの大学生である。
そんな平凡な大学生の俺だが、つい数か月前、とある殺人(未遂)事件に巻き込まれた。
その事件に関して詳しい内容を語ろうとすると少々長くなるので省略するが、その際、俺の適当な死体検分がために、いろいろとややこしい事態に陥ってしまったのだった。
これまた細部は省略するが、なんとかのその事件は警察にばれることなく解決した。が、ある厄介な人物(名前を金光権蔵という)との付き合いはそれ以降も続くこととなってしまった。
そして今日(?)、その事件から数か月が過ぎ、大学がゴールデンウイークに突入した俺は、その人物と待ち合わせをしていたのだ。だが、待ち合わせ場所についた俺は、そこで何者かの襲撃に会い、意識を失った。
リンリンリンリンリンリン
俺は耳元で鳴り続ける目覚ましの音で目を覚ました。
やや頭がふらふらするも、意識を取り戻した俺は、とりあえず今もなり続けている目覚ましのあらアラーム音を消し、周りを見回してみた。
部屋の中には小型の冷蔵庫らしき箱や、真新しい電子レンジ、食器棚、現在俺が座っているフカフカのベッド、その他机などもろもろが存在した。
「風呂までついてるのか」
部屋の隅のカーテンで仕切られていた場所を覗くと、そこにはバスタブやシャワー、そしてトイレが設置されていた。
「至れり尽くせりだな。ここで十分生活ができそうだが……」
当然いつまでもこんな場所にいるわけにはいかない。俺は部屋にある唯一の扉を開け、部屋の外に出た。
部屋の外に出た俺の目に最初に飛び込んできたのは、赤と黒で彩られた変わった紋様の壁・床と、上下ともに真っ白な服を身にまとった、見知った女だった。
真っ白い服の女――涼森夏音は、以前出会った時と変わらず、少し白色がかった長髪に青白い顔で、いかにも不健康そうな姿のまま、無表情で上を見上げていた。
ふと涼森は俺の方を向く。涼森は一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにその表情を笑顔に変え、さも親し気な様子を装いながら朗らかに話しかけてきた。
「お久しぶりですね日暮さん。私たちはまたしても監禁されてしまったようですよ」
俺は表面上精いっぱいの笑顔を保ちつつも、心の中で盛大にため息をついた。