向けられる殺意
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しばらく前へ前へと進んでいくと、当然のことながらヘザーと会うことが出来た。
「ヘザー……!」
滴が声を掛けると、ヘザーが驚いたように目を見開き、それから嬉しそうに目を細め、ふんわりと微笑んだ。隣には、あのお爺さんもいて、お爺さんもヘザーと一緒にいられる喜びからか、幸せなのが見てとれた。
「こんにちは。わたしに会いに来てくれたのですね?」
「はい。お話があって……」
ヘザーは滴たちの間に少しだけ影が落ちたのを見、首をかしげる。
「えっと……、お話はしばらくしてからでも宜しいですか? 今はちょっと時間とれないので……」
申し訳なさそうにうなだれるヘザーに、滴たちは顔を見合わせ、頷く。元々滴たちは、ヘザーと話すのが後になると分かっていたのだから、特に拒否する理由もないのだ。
お爺さんが、滴たちに向けて小さく頭を下げたのが見えた。ヘザーと一緒にいる喜びが押さえられない様子で、滴たちは、その光景に、思わずにっこりとしてしまう。
「なら、ヘザーが一段落するまで待ってるか。なにして待つか?」
「う、うん、そうだよね……! ど、どこで待つ……?」
「うーん、とりあえずいつ終わるかも分からないし、人が少ないところで様子見計らってようか」
そうして、プリちゃんの提案で滴たちは人の少ない路地裏を探し、そこでヘザーのやることが終わるのを待つことにしたのだった。路地裏は、祭りの賑わいが少しだけ薄らいでいて、不思議と落ち着いた。座っていると、段々と眠くなってくるほどに。だから、滴たちは、うつらうつらとしながら、ヘザーのやることが終わるのをただ座って待っていたのだった。
だが、それからしばらくして、滴は思わぬ展開によって起こされる。
「……」
滴は、不意に不穏な雰囲気を感じとり、目を覚ました。
目を開けると、そこには、ヘザーがいる。……と思った。実際は、よくみると、それはヘザーによく似た例の少女。真っ赤な深紅の瞳に、闇を思わせる真っ黒な髪。ウェーブを描く髪からは穏やかな印象を受けるが、その印象は、その瞳の放つ尋常でないほどの殺気によって、殺されている。
「……」
その人は、相変わらず、滴をその瞳で射ぬくようにみるばかりで、何も言葉を発さない。
滴も滴で、怖さのあまり口を開くことすら出来なかった。口は、わなわなと震えるばかりで、喉はヒューっと小さな音をたてる。
他の5人の方を向くが、誰も起きておらず、ここで意志疎通出来るのは、目の前にいるこの人しかいなかった。
そうして、ようやくその人はその口を開く。
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