ヘザーに似ている人
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紗季はああ言っていたが、結局翌日の夜になってもスノー達は帰ってこなかった。
滴たちは心配になり、明日は探しに行くということにする。
「スノー! アンバー!」
声を出して周辺を探したが、見つからない。その時、滴たちは森の中に人影を見た。
「あの、すみません! 喋る黒と白のウサギを見ませんでしたか?」
滴たちがその人影に声をかけると、その人はこっちを振り向いた。滴たちはその人の容姿に唖然とする。ヘザーにそっくりだったのだ。
「あら、初めましてと言いましょうか。滴さん?」
その人と目があったとき、滴はその殺気の隠った目に固まり、後ずさった。
本能が、この人に近づいてはいけないと警報を鳴らしている。目の前が赤くなったかのような激しい警報が、脳内を支配しているのだ。
容姿は、ヘザーにそっくりだが、その殺気の隠った目は深紅であり、ゆるいウェーブのかかった髪はアンバーと同じような闇色であった。
──怖い。いけない、この人に近づいては。
「……み、皆……」
滴は言いかけて言葉を飲み込み、アイコンタクトを5人に送った。けれど、それに気付いてはいるようだが、アイコンタクトを送っている意味を理解してもらえていないようである。
5人は小首を傾げて滴を見やる。
「ヘザーにぃ、そっくりだねぇ」
「そうだな。見事な程に」
「ふ、双子……?」
「まさか」
5人は滴から目を離すと、そのヘザーに似ている人について感想を言い出す。
滴はそれに付いていけず、あたふたと周りを見回した。
確実に危ない人物なのだろう。それは、その目の殺気から読み取れる。今にも飛びかかってきて殺されてしまうのではないかと思うほどの殺気だ。並大抵のものではない。
滴が答えないのを見て、その人はクスクスと笑う。
「ずっと待っていたのですよ。さっさと死んでしまえば良かったですのに、今の今まで生き残っているなんて、貴方も幸運な人なのですね」
どうしたら良いのか。
明らかにこちらを殺そうとしているその人に、滴は後ずさることしかできない。少しでも後ろを見れば直ぐ様殺されてしまいそうで、迂闊に後ろを向くことも許されなかった。
「滴……?」
不思議そうな顔でプリちゃんが滴を見る。
プリちゃんには、その人の危なさが分からないのだろうか。こんなにも殺気だっていて、今言った台詞も危ないものだったのに。
「し、滴……!?」
今度は波の声が聞こえる。
──今、なんて……?
滴の意識はそこで途切れていた。
最後に聞こえたのは、ヘザーに似ているあの人の声。
──後でまた会いましょう。その時はきっと**ますから
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