願い合う幸せ
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「……あなたが、ヘザーが外に出たいなら、そうすればいいじゃない」
気付くと、滴はヘザーに向けてそう言っていた。
「……でも、わたしが外に出るなんて……」
「許されないと思ってるのぉ?」
「……」
愛の問いに、今度はヘザーが絶句する。
ヘザーは紫の瞳を見開き、滴達の言葉を待っているようだった。
「……確かにあなたは自分の寿命と共に世界の寿命を短くしたかもしれない。それをした理由が、ヘザー自身の勝手でもあったのかもしれない。けど、そんなの、自分の幸せを放棄する理由にはならないよ。間違っていたと思うなら、今度はしないように気を付けて生きていけば良いでしょ? それに、あなたが出てくるのを皆待ちわびているのよ。一生をここで過ごすなんて、止めてよ。ここはあなたが作った世界なんだから。 その世界の人々を喜ばせてあげようよ、そこから出て来て」
滴は一息でそう言いきると、再びヘザーへと手を差し伸ばす。
「だから、一緒にここから出よう?」
自分の作った世界を長生きさせてあげたい。そんなヘザーの気持ちは痛いほど分かった。けれど、その世界を作ったヘザーが、自分の幸せを投げ捨ててまでこの世界の悲しみを遅らせる必要はないと思う。あくまでここはヘザーが作った場所なんだから、ヘザーが好きなように未来を変えれば良いのだ。
ヘザーは迷ったように右手をあげかけ、下ろし、と繰り返し、ようやく滴の手を掴んだ。
「……本当に、わたしなんかが外に出ても良いのでしょうか?」
「もう、掴んでからそんな事言わないでよ。良いに決まってるでしょ? ここの世界の人は、あなたの幸せを願っているんだから」
滴たちは困ったように微笑み、ヘザーは泣き笑いのような顔で滴たちを見つめる。
「ありがとう。やっと、あなた達のお陰で、出ようと思えました。こんなに一生懸命に連れ出そうとしてくれるなんて、わたしは幸せ者ですね」
「連れ出そうとするのは当たり前でしょ? この世界の人は、あなたが出てくるのを願い続けているんだから」
ヘザーは紫の空を一瞬だけ光らせ、にっこりと微笑んだ。
そうして、滴たちはヘザーを連れて洞窟の外へと出ていったのだった。
読んでくださりありがとうございました。
これにて新章に入りたいと思います。




