冷たい灰色と美しい紫色の空
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滴たちは、ヘザーを見つけることができたことへの喜びと安堵、そして、意外にも早く見つけることができたことへの驚きで、しばし立ち尽くしていた。だが、それだけが理由ではない。それは、壁の一部が突如まばゆく光り始めたからであった。
光はゆっくりと強くなり、やがて滴たちが目を開けていられないほどの光となる。
「ちょ、ちょっと、どういう……!?」
プリちゃんが、咄嗟に、光る壁から顔を背け、声をあげる。
滴もあまりに強い光に耐えられず、少しでも壁から離れようと、一歩後ろへと下がった。
しかし、その時だ。照明が一気に消えたかのように、壁が光を失ったのだ。いや、それは違う。目を開けてよく見てみれば、滴達の前には壁がなくなっていた。その代わりに、灰色の格子が、滴達の目の前いっぱいに広がり、辺り一面は、真っ昼間のように明るくなっている。
そして、その奥では……。
紫色の空を瞳に宿した少女が、こちらを見て微笑んでいた。
「……あ、あなたが……?」
滴は、少女の放つ美しさを前に、言葉が出ない。
少女の髪は、純白そのものだった。その、腰まである髪は、緩やかなウェーブを描き、彼女が少し動く度にふわりと宙を泳ぐ。
「そうよ、わたしがヘザー。お迎えありがとう」
少女は柔らかな声でそう言うと、紫色の空を揺らした。
滴は、ヘザーの瞳が揺れるのと同時に、ようやく我に返る。
「え……は、初めまして! 私は滴と申します」
滴は、どこか遠く、夢の世界へと行ってしまいそうな意識をどうにか留め、懸命にヘザーに挨拶した。
たったの二言だったが、ついさっきまで声を出すことすら出来ていなかった滴にしては、かなり頑張った方である。まるで、自己紹介を終えただけで、今日1日の体力を使ってしまったようだ。
「ふふふ。知ってましたよ? 滴さん。改めて宜しくお願いしますね」
ヘザーは、そんな滴をみて首をかしげた。
また、それを聞いて、同じく滴たちも首をかしげたのだった。
滴とヘザーが会うのは、初めてではなかったのだろうか。
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