大事なお金
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結論をいうと、足音の正体は管理人だった。滴たちが洞窟から出てこないのを不審に思って探していたらしい。滴たちが管理人の前に姿を表したとき、管理人は安心したように肩を下ろした。
「君たち……。良かった、見つかって。今、他の人にも連絡を取るから、ちょっと待っててね。話はそれからだ」
「……はい」
足音の正体が管理人であったことに、滴達は安心し、その人の後に続いて洞窟の外へと出た。
まぁ、その後、覚悟していた通り質問攻めをされ、こっぴどく叱られたわけだが。
「……次ぃ、どこ行くぅ?」
これだけ探しているのに見つからなかったのだから、恐らくあの洞窟にヘザーはいないだろう。いないと断言していいものか悩むところだが、断言しなければ、他の洞窟を探し始めることも出来ない。
「そ、それより、今から家に戻るの、ちょっと危なくないかな……?」
空は真っ暗になっており、森の中へ入るのは、確かに危なかった。いつもに増して危なくなった森に、滴達はわざわざ入ろうとは思えない。
「どこかに泊まる? あ、お金、足りないかな……」
プリちゃんが町を見回したあと、困ったように顔をしかめた。滴も最低限の予備のお金しか持ってきておらず、他の4人がどうであるか。
「私、持ってるよ」
その時、一番持ってなさそうだった紗季が、財布を手に、ニッと笑った。
「いくら入ってるの?」
念のため、いくら入っているのか聞いておく。紗季のことだから、少ししか入っていないのに、入っているとか言い出しそうだったからだ。
けれど、滴の嫌な想像は、外れた。その財布には、7万円という多額なものが入っていたからだ。
「そんなに入ってたんだな……」
呆れたように光はいう。
それはそうだ。普通、7万円などという福沢諭吉7枚を持ち歩く人はそういない。何かあったとき、失う金額が大きいからだ。というより、滴としては、紗季が貯金できる子だと思っていなかったから、驚いた。
しかし、今、そんな紗季のずぼらさに救われたのは本当のことである。
滴達は、安心して出来るだけ安い宿を探し、そこで休むことができたのだった。
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