愛ちゃん
閲覧ありがとうございます。
今度は愛視点での滴を書いてみました。考えてみると、滴だけ見た目とか書いてなかったんですよね。
食卓に着くと、波が言った通り、愛と光が席に着いていた。
食卓には6つの椅子がある。どこに誰が座るとかは決まっていないようなので、滴達は好きな場所に座った。滴は端の席で、プリちゃんと隣だ。昨日の夜の話で仲良くなったのだ。
「遅いよぉ」
愛が頬を膨らませている。
「なら、手伝えば良かっただろ?」
光は少し苛だたしげに愛を見る。
「光が手伝えばぁ、もぉっと早く出来たじゃん?」
「は? そう言うのは自分が手伝ってから言えよ」
「愛わぁ、この後のお料理のためにぃ力を温存しているのぉ」
「はいはい、わかったからその喋り方止めたら?」
「ひっどぉーい。可愛いのにぃー」
「……ふ、どこがだよ」
愛と光は仲が悪いようだ。というより、光が愛を嫌っているのかもしれない。
滴はプリちゃんと顔を見合わせ、苦笑する。
まぁ、滴も愛の喋り方は好きではないが。
「とりあえずさ、食べようよ!」
紗季が空気を変えるようにいう。
「……う、うん、そうしよ……?」
波も紗季に合わせる。
二人のお陰か、滴達はやっと朝ごはんを食べ始められたのだった。
そして、食べてから部屋に着くと、9時だった。
9時かぁ、あとの1時間どうしよう?
滴は小さなため息をする。
お菓子作りをするためにキッチンへ集合するまで、あと1時間もある。朝ごはんを食べる前に、やるべき事はもう終わらせてしまっている。歯磨きはついさっきやってしまった。
「……誰か終わってない人いるだろうから、手伝いに行こっかな」
確か、小説では愛だけが終わっていなかったはずだ。小説の中の主人公は片っ端から部屋をノックしていた。
「じゃあ、いきますか……」
滴はドアを開けて、愛の部屋へと向かった。
コンコン。
誰かがドアを叩く音がする。
「入ってぇ」
自慢の語尾伸ばしで相手を部屋に入れる。
けれど、はっきりいうと語尾のばしは愛自身好きではないのだ。高校入学時に友達を作るとき、何か個性がほしいと思ってするようになった。結果、友達はたくさんできた。ただし、愛にとっては性格があまり合わないタイプの子が。しかし、友達がたくさんできたのが嬉しく、今はこの喋り方が自分の中で一番になっている。
部屋に入ってきたのは滴だった。
高い位置で結んだポニーテールを、ゆっくりと揺らしながら歩いてくる。艶のある長い髪は、仄かにシャンプーの香りがした。
「愛、掃除とか終わってないでしょ? 手伝いに来たの」
そう言って滴は微笑む。
なぜ終わってないのを知っているんだ?
愛は滴をじっと見つめる。
しかし、滴は愛を答えを待つように見ているだけだ。そのままお互いに見つめ合ってしまったので、やがて堪えきれないように滴は笑いだした。
「どうしたの?」
クフフ、と声を溢しながら、ちょっと困ったように首をかしげている。
まぁ、なぜ知っているかはもうどうでもいいや、と愛も思い直し、いつの間にか固くなっていた表情を和らげ、滴にこたえた。
「手伝いに、来てくれたんだよねぇ。ありがとぉ!」
「どういたしまして。なにしたらいい?」
「ええっとぉ、掃除とかぁ?」
「わかった!」
愛はこの6人の中で一番滴がしっかりしていると思う。2番目は紗季だろう。紗季はおちゃらけキャラだが、何気に5人をまとめてくれている。
「掃除終わったよ」
少しして、滴が洗濯物を干している愛に伝えてきた。
早っ。愛はついそう思ってしまった。
実は、愛は家事的なものは得意でないのだ。それも、桁外れに……。お菓子作りも本当は得意でない。
「ありがとうぉ! あとは愛が自分でやるからぁ、大丈夫だよぉ?」
「そっか、わかった。じゃあ、戻るね」
滴は愛に背を向けて帰っていった。
また部屋に静寂が戻る。
寂しいな、と愛は小さく呟いた。
読んで下さってありがとうございます。
次はお菓子作りについて書きたいと思います。
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