謎の足音
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「あぁ、もう、どうしよう……」
滴は頭を抱え、ちらと他の5人を盗み見る。他の5人も、滴と同じように困り果て、それこそため息による合唱をしていた。本当に洞窟の外まで出られるのだろうか。
「……も、もし、このまま何日も出られなかったらどうする……?」
「どうするって言われてもな……。どうしようもないんじゃないか?」
「どうしようもないって……駄目じゃんっ!」
こんなに危ない状況に置かれながらも、いつも元気な少女の様子は変わらない。滴たちは苦笑いするが、その彼女の突っ込みにホッとさせられたのは言うまでもなかった。
「ねえぇ、誰かに連絡する手段ってぇ、なんかないのぉ?」
不意に向けられた期待の眼差しに、滴は少し驚く。
何もないと思っていたが、何かあるだろうか。
滴は頭を高速で回転させる。けれど、特に他の方法も見つからず、黙々と動かす足だけが進む。
その時、滴は自分達のものではない、何かの足音を聞いたのだった。
それは、数時間前に聞いて、懸命に離したはずの足音によく似ている。もしかして、また近づいて来たのだろうか。
「ねぇ、また、あの足音聞こえない?」
「え? う、うん……」
滴が思いきってきくと、プリちゃんがおもむろに頷いた。
ということは、やはり前回と同じだとは限らないが、何かがまた滴たちに近づいてきていると言うことだった。コースから外れているため、滴たちにとっては見つかると良くない何かだ。それは、管理の人かもしれないし、動物かもしれない。
「に、逃げる……?」
波は今にも駆け出したいと言わんばかりに両足をしきりに動かしていた。
確かに滴も波と同じ気持ちではあったが、逃げても良いのだろうか。もし、相手が管理人であるならば、素直にみつかったほうが良いのではないだろうか。怒られるのは覚悟しなければならないが、その場合は向こうもこちらを心配しているであろうし、しかも滴達は今、迷子になっている。このまま見つからずに、自分達だけの力で洞窟から出られればよいが、もしなかなか出られないような状況になれば、あの時見つかっておけば良かった、と後悔するのではないだろうか。
「……どうする?」
切羽詰まったこの状況。即急に結論を出す必要がある。
いつの間か滴たちの足は止まっており、向こう側の足音が洞窟に鳴り響いていた。向こう側の灯りは見えないが、相当近くまで来ているのは確かだ。
「……自分は、戻るべきだと思うがな」
どうすると聞いてからしばらく間が空き、時間に押し出されるように光が初めに意見を出した。
そうして、光は早くしろと言うように、滴たち5人に目を向ける。
それからまたしばらくして、話し合いの結果、向こうの様子を見て、相手が管理人であるならば、こちらから出ていこうということに決まったのだった。
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