洞窟
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次の日、ようやく町に一番近い洞窟に辿り着いた滴達は、ワイワイと騒いでいた。
洞窟は、今日も続いているヘザーの祭りのためか、どこにも観光客らしき姿はない。ただ、洞窟を管理する人が何人かいるだけだ。
早速チケットを買い、洞窟のなかに案内される。灯りが所々にあるためか、懐中電灯なしでも結構大丈夫なほどの暗さだった。しかし、気を抜くと、どこかで躓いたりしそうな暗さでもあったため、しっかりと足下や前方に注意しながら歩みを進めていく。
洞窟の中は、思ったよりもひんやりしていて、寒いぐらい。中に入ったら真っ暗ということもなかったので、滴達はホッと胸を撫で下ろす。
管理している人に貰ったパンフレットの地図を見ながら、通るように促されているルートを辿っていると、滴達はたくさんの鍾乳石を見た。上から氷柱のように垂れ下がっているものや、下から筍のように出ているものもある。それらは、観光地であるからか、しっかりと色のついたライトを当てられており、幻想的に見えさえした。
滴達は、湖のように水が涌き出ている場所も見た。そこも色のついたライトをしっかりと当てられており、時折色を変えては、滴達を楽しませてくれた。
「なぁ。……何か忘れてないか?」
滴達が感嘆の声をあげていると、ふと光が低めの声で5人をみやった。
「……ん?………………あ!」
忘れていたわけではない。忘れていたわけではないのだ。ただ、少しだけ観光したい気分だったのだ。
滴は心の中で、そう誤魔化す。
「……ヘザー、どこにいるんだろうね……」
それから少しして、プリちゃんが、辺りを見渡して小さな溜め息をついた。
「本当」
滴もパンフレットに目を落としながら、小さな溜め息をつく。
どこにヘザーはいるのだろうか。ここの洞窟にはいるのだろうか。それともこれは無駄足で、他のところにヘザーは閉じ籠っているのだろうか。
そんなことも分からない。分からないから、今探しているのだ。けれど、このルートは他の人も通っているわけで、そこを何度も通っていても、ヘザーが見つかるとは到底思えなかった。
だから、いけないと分かっていても、やらないわけにはいかないのだ。周りにお客さんは全くいない。滴達はヘザーを探すため、ニヤリとお互いの目を交わらせた。
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