いざ町へ
閲覧ありがとうございます。
そして、二日後。
昨日は1日中お菓子作りをしてヘトヘトになっていたが、この日は、やっと紗季が外に出られる日だ。まだ早いような気もするが、無理をしなければ大丈夫であろう。熱も引いてから、もう2日経っている。
「よっしゃっ! どこ行く!?」
嬉しさからか子犬のようにピョンピョンと跳び跳ねる紗季に、滴達はクスリと笑った。どれだけ外に出たかったのだろうか。そりゃあ、アウトドア派の紗季にとっては、数日家にいることでさえ耐えがたいことだったのかもしれないが。
「取り合えず、町の方に行こう? 今日は1日中遊ぶんだったよね?」
ここは森の奥深く。だから、他人に会うには結構な距離を歩かなければならなかった。初めの頃は、地図と方位磁針を持っていても町に辿り着けず迷子になっていたが、今は何度かの経験を繰り返したからか、迷子になることはなくなっていた。
何をして遊ぶのかは、歩いている途中で決めれば良い。
「そぉ」
今日は1日中遊んで、明日から「あの方」についての情報収集をする予定である。
「あの方」についてどのように知れば良いのか、そんなこともまだわからない。けれど、がむしゃらにでも調べてみれば、何か分かるのではないだろうか。少なくとも「あの方」は、滴達の「ゲーム」に関わる重要人物だろう。スノーとアンバーが、口を割らないのであれば、自分達で調べて、「あの方」の正体を突き止めるしかあるまい。もとの世界に戻りたいなら、このことについて調べることは必要なはずだ。
取り合えず町に行こう、と言って歩き始め、滴達はやっとの思いで町に着くことが出来た。
「着いたー! やっぱり疲れるね」
プリちゃんが、水筒を勢いよく飲む。
「本当だな」
光も同意見なようで、プリちゃんに続く。
滴も疲れて、近くにあった椅子に座り込んでしまった。
「ちょっと待って! 遊ぶ前に、そんな疲れたとか言わないの! これから遊ぶんだよ!?」
紗季は、そんな滴たちに口を尖らせて焦ったように怒っている。
滴は紗季に、疲れたもんは疲れたよ、と言いかけて止めた。そんなことを言えば、せっかくの楽しい雰囲気が台無しになってしまう。楽しむためにここまで来たのに、着いたら座り込むなんてどうかしてた、と滴は一人反省する。
「ごめんね。 早く遊ぼっか」
滴は、疲れたと座り込んでしまいそうになっている4人を、どうにか遊ぶ気にさせるために、こう言った。
「……う、うん……!」
滴達は、こうして、山から帰って来て以来初めての町を楽しむことにしたのだった。
読んでくださりありがとうございました。




