ケーキ作り
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「──と、言うわけで、これからケーキ作りしよ!」
満面の笑みを浮かべながら、紗季が提案した。
紗季も熱は引いたことだし、参加することも可能だ。
だけれど、
「取り合えず、朝御飯ね」
忘れてたようだけど、と滴は付け加える。
あ、と紗季は固まった。
完璧に忘れていたらしい。
「愛ー! これ混ぜといて!」
「まかせといてぇ! だけど、愛だけで大丈夫ぅ?」
「……だ、だめ! 光、付いといて!」
「は? ……仕方ないな」
滴達は、前回のクッキー作りと同様、二つの班に分かれてケーキ作りをしていた。
実は、今日は波の誕生日だったらしい。波も一緒に作っているためサプライズにはならないが、作るものは満場一致でケーキに決まった。
「愛、それ、箸で混ぜるんじゃない」
「えぇ? 違うのぉ?」
傍目から見ると、漫才のボケでもしているようにも見えるが、少なくとも愛はわざとではなく、本気である。
そんな愛に苦笑を隠せないが、これもこれで楽しかった。やっぱり皆でやると違うらしい。なにが、とは言えないが。
「ねぇ、今なに作ってるの?」
今、滴は向こうの班の会話に耳を傾けている。
「え? スポンジだよ」
「スポンジ? スポンジって……」
「ん?」
突然言葉を止めた紗季に、プリちゃんと波が首をかしげている。
「スポンジって食べれたんだっ!」
何やら結論を出した紗季。
プリちゃんと波は、しばらくポカンと口を開けて、それからハッと意識をもどした。
「……な、なんか勘違いしてない……!?」
「絶対してるよね」
二人は、何かに気付く。そして、確信した。
「……ま、まさかとは思うけど……、……スポンジって、掃除とかに使うのじゃないからね……?」
恐る恐る紗季を見るプリちゃんと波。二人の前には、再び驚きの表情をしている紗季が。
「じゃあ、そのスポンジって何!?」
無言で紗季を見つめる二人は、紗季の常識のなさに飽きれを通り越して悲しみを覚えていた。
「……ケーキ、食べたことあるよね?」
「うん! もちろん!」
紗季は元気よく頬をあげる。
「スポンジって言うのは、ケーキの生地だよ。基本的に、薄い黄色のやつ」
プリちゃんが、ざっとイメージにあるスポンジを紗季に説明する。
「あ、あれがスポンジ……!」
それがスポンジだよ、と滴達は溜め息をついて、楽しげに笑った。
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