作戦会議
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「あー、それで愛が拗ねたんだね」
滴が昨日からの話を紗季に伝えると、紗季はコロコロと笑いだした。
真剣に話しているのに笑われたので、滴は少しムッとする。
「もう、紗季にも話したんだから、紗季も謝る方法考えてよね?」
そう滴は感情的に言ってしまった後、ふと気付いて自らの口を両手で塞いだ。
さっきの自分の言葉は、愛と喧嘩したことの八つ当たりであるようにも感じたからだ。紗季に八つ当たりするのは、人間としていけないことだ。
けれど、紗季は滴の言葉を聞きながらも、笑みを顔から消すことはなかった。
「あったり前じゃんっ! 拗ねた愛を元通りにしなきゃね!」
楽しそうにもみえる紗季に、本当に困っていた滴達は、そっとため息をついた。
「……そ、そんなに紗季が考えてるほど上手くはいかないよ……?」
あまりに楽観的に事を捉えている紗季に、波はつとそんな事を言うのだった。
「え~!?」
紗季がそんな波に文句を言ったのは、もちろんのことだった。
幼い子供のような反応に、滴達は顔を見合わせてクスクスと笑いあった。
「んで、どうする?」
ふざけてお喋りをしている間に、既に15分が経過していた。
だまり込んでいた光が、痺れを切らして話題を進めようとしたのは、それこそ当たり前であった。話をしている滴でさえ、そろそろ、と思っていたのだから。
再び考え始めて、部屋に静寂がやって来る。
つまり、ふざけているだけで、話しが大して進んでいなかったということだ。光が仕切り直してくれなければ、30分はふざけていただろう。話もろくに進まず。
滴達がそれぞれ考え込んでいると、突然誰かがピンと手を挙げた。
「これ、結論ね!」
紗季であった。
よく考えてみると、手を挙げて発表するなんて、紗季以外誰もしようともしないだろう。
「そのまま謝れば良いじゃん! 部屋にズッカズッカ入っていってさ! 面倒じゃん? 入れるかどうかとか考えるの」
滴達は呆然として紗季を見つめる。
いや、勝手に部屋に入っちゃ駄目でしょ。
めんどくさいのは分かるけどさ。確かに早く仲直りしたいけどさ。
「それは、さすがに駄目だろ……」
右手を額に当てる光に、滴達もこくこくと同意する。
紗季は良いのかもしれないけれど、愛は嫌がるに違いない。まして、今は喧嘩中の相手だ。
「やっぱり部屋の前で謝るしかないんじゃない? 入れなかった場合は」
プリちゃんが、結局それしかない、と諦めたように主張する。
滴もそれが一番だと思ったので、プリちゃんに一票を投じた。
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