伝えるべき事
閲覧ありがとうございます。
そう、一緒にしたかったのに、滴は勝手に無理だと判断したのだ。愛は、滴の言葉の端々から、滴が自分と一緒に料理をしたくないのだろう、自分に料理をさせたくないのだろう、と思ったに違いない。だったら、それは違うと伝えるべきなのではないだろうか。確かに、させたくないというのは本当であった。けれど、一緒にしたくないというのは、頑固として違う。むしろ、滴は愛と、いや、皆で料理をしたかったのだ。
何故、出来ないなんて決めつけたの?
滴はあの時の自分を恨んだ。
「滴?」
唇を噛んで俯いていると、ふと紗季に名前を呼ばれた。
ビックリして顔をあげると、そこには困惑した様子の紗季がいる。チラリと紗季から目を外すと、他の3人も紗季と同じような顔をしていた。
「っわ! ごめん、どうしたの?」
慌てて表情を作り替えると、光が眉を寄せた。
「どうしたの? じゃ、ないだろ? さっきから一人で黙っといて」
そうきつい声で言われ、滴は苦笑いするしかない。
気付けば、話題も変わっていたようだ。どのぐらい黙ったままだったのだろう。結構な時間だったのは分かったが、話が変わっても気付かないなんて。
その時、ドアに何かが体当たりしているような音が聞こえた。
「?」
瞬時にハテナマークが頭に浮かぶが、波がスノーとアンバーではないか、と言ったことで疑問は解ける。
紗季の合図でプリちゃんがドアを開けると、予想通りスノーとアンバーが雪崩れ込んできた。
「ご飯受け取ってもらえないです!」
「愛、要らねぇーっつってんぞ?」
同時に言われて上手く聞き取れなかったが、スノーとアンバーはこんなことを滴達に伝えた。
「……え?」
紗季が体を硬直させた。そして、どういうこと? と言葉を紡ぐ。
紗季には、愛について何も言っていなかったのだ。
スノーとアンバーは、そんな事はお構いなしに息も絶え絶えで続ける。
「今は、食べたい気分じゃないそうです!」
「とにかく、今日は食べねぇーっつってんぞ!」
唯一話に付いていけていない紗季は、一人、戸惑ってオロオロしている。
「どういうこと!? 朝御飯、もうみんな食べたんじゃないの!?」
「……そ、その、ね……?」
困ってこちらを見上げてくる波。小柄な彼女がそうしてくると、つい滴も、可愛い、なんて思ってしまうのだが、今はそれどころではない。
他の3人も、困って周りを見渡している。
だから、私が言おう、と滴が決めたとき、プリちゃんが勢いよく叫んだ。
「……愛と、喧嘩しちゃったのっ!」
肩で息をして頬を紅潮させるプリちゃんに、紗季が驚きの目を向けて唖然とした。
読んでくださりありがとうございました。




