料理下手だけど……
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その翌朝、滴が目を覚ましキッチンへと向かうと、キッチンからなにやら物音が聞こえた。
波だろうか、そう思ってプリちゃんとキッチンを覗く。ちなみにプリちゃんとは前日と同じように廊下で会った。
「おは……っよ!?」
「あ、愛っ!?」
そう、キッチンにいたのは愛であった。
「オッハァー」
フフフと鼻歌をしながら機嫌良さげに料理をしている。愛の前には、予想通り丸々焦げた野菜、ぎゅうぎゅう詰めでてんこ盛りにしたご飯、ドロドロのお味噌汁らしきものが並んでいた。
「あ、愛。あの、……ありがとう!」
カミカミになりながらも、とりあえず愛にお礼。だが、このままこのご飯を食卓に出すわけにもいかないので、滴達は場所を代わるように愛へお願いした。
「その、ね。あの、……後は私達がやるから大丈夫だよ! 愛は休んでて?」
プリちゃんも言いづらそうに伝える。
すると、
「あ、愛がやるもん! 休まないよ! 一緒にやろ? ねぇ?」
愛は意外にも引きたがらなかった。想定外だったので、滴達は言葉に困る。なんと言えば良いのだろうか。そうしている間にも鍋は黒い煙をあげかけている。
プリちゃんがフライパンに関しては火を止めにいってくれたので大丈夫だったが、愛の手は血だらけで痛々しい。
滴達が無言で固まっていると、光がやって来た。
「……な、何で愛が……っ!?」
おはようもすっ飛ばして、光も滴たちと同様に固まる。
それを見て、愛の瞳には透明なものが溜まっていった。
「な、んでぇ? 愛だってぇ、やりたいよぉ……!」
途端に走り出した愛は、自分の部屋へと閉じ籠ってしまう。滴達はそんな愛に咄嗟に出来ることもなく、ただ突っ立ったままだった。
「……愛?」
滴がやっと口を開いたのは、それから20秒も後の事。
既にその場には愛は居ず、突っ立ったままの3人だけが残されていた。
「……どうすれば良かったのかな?」
おもむろに、プリちゃんは愛の部屋の方を振り返った。
「……ど、どうしたの……?」
その時、波がやって来た。いつもより遅く現れた彼女は、恐らく二日連続の寝坊だったのだろう。髪がきちんとセットされていない。
「愛を怒らせちゃったみたいで……」
すがるように波を見つめ、それから床に目を移す。
どうしようもなく、いや、どうしたらいいのか分からず、滴達は波に助けを求める。
波は、まだしっかりと状況が把握できていないのか、なんで、と声を溢した。
「……い、今の状況を教えてくれるかな……?」
「……うん」
滴達は、ゆっくりと、深く波に頷いた。
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