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嘘の嘘 本当の本当  作者: カカオ
第4章 水晶
50/100

新たな決断

閲覧ありがとうございます。

「元の世界に戻るって……」


スノー達が絶句する。

そう、私達が目指すのは元の世界への帰還だ。スノーを助けるためにこの世界へ来たわけでもないし。


「そんなこと、赦しません」

「簡単にはな」


2匹の目が、一瞬だけ濁った魚の目のように滴達には映った。

機械的に発せられた声に、滴達は目を見張る。

キラキラと輝いていた宝石のような瞳は、存在していない。あるのは、ただこちらを見つめる無機質な瞳だ。そこにはなんの感情も見られない。


「……スノー?」

「……ア、アンバー……?」


口から漏れでた言葉が、波のそれと重なる。

滴達が時が止まったかような錯覚を覚え始めたのとほぼ同時に、またスノー達の口が開く。


「けれど、自力で会いに行くのであれば勝手にどうぞ。私達は知りませんが、あなた達がどうなっても」

「俺らにはゼッテェー聞くなよ?」


警戒が溶けたかのように、スノー達の目に輝きが戻ってきた。

滴達もホッとする。あんな目をされたら怖いではないか。


「だったら、自分達で何とかするよ! スノー達には最低限のことしか聞かない!」


滴達が苦笑する中、紗季が声を張り上げる。宣言のようにも聞こえた台詞は、滴達のやる気を上げるには十分すぎる言葉だった。


「最低限、ね……」


小さく笑ったスノーは、最低限であれば許してくれるのであろう。アンバーもなにも言わないところを見ると、スノーと同じ意見なのに違いない。

最低限であれば許されるという事実に、滴達はこっそり息をついた。


「とりあえず、下まで降りて家に戻るぞ」


脱力したように互いを見あってばかりの滴達に、光が声をかける。

忘れていたが、ここは頂上。

つまり、下まで自分の力で降りなければならない、ということだ。

忘れていないようで忘れていた。

滴達は露骨に嫌そうな顔をしながらも、山の下を目指して歩き出した。

帰りの方が楽だとは思うが、散々歩いてまだ歩くの!? と思ってしまう。


「ねぇねぇ、見てみてぇ!」

不意に呼び掛けられて後ろを見ると、嬉しそうにロングヘアを揺らす愛がいた。


「どうしたの?」


疲れからか息が漏れるような声しかでないが、返事を返さないわけにもいかないので、滴は聞いた。

すると、愛がぐいっと片手を滴に突き出した。

他の四人も不思議そうに愛の片手を眺める。

愛の片手は、グーの形に握られている。何かを持っていて、それを滴に見てもらいたいに違いない。


「エヘヘ……」


若干だが、少し愛の笑顔が黒かったのは気のせいだろうか。

滴達が思わず身構えるのとほぼ同時にその手が開かれる。


「みてぇ! カエルちゃんっ!」

「うわぁ! 可愛い!」


予想外のものに滴はホッとする。

虫じゃなくて良かった、と。

しかし、カエルは以外と多くの人に嫌われているのだ。滴が思っているよりも。


悲鳴をあげる波とプリちゃんの背中が遠ざかっていくのが見える。

滴達は何故かこうやって皆で遊んでいる時間が楽しくて、スッと笑みを頬に現した。



読んでくださりありがとうございました。

今回のお話で50話到達です!


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