「あの人」の秘密
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滴の頭の中に浮かんだのは、ツルピカであった。
けれど、スノーのものは滴達のものと違い、一回り小さい。そして、輝きも滴のものとは比べ物にならないほど美しかった。
「ねぇ!シャドーってなんなの!?」
さっきまでずっと黙り込んでいた紗季が、アンバーに近寄った。元気がなさそうだった顔は、いつの間にか元気そうに輝いている。シャドーみたいに。
「あぁ、シャドーっつーのはな、所謂スノーの首輪だ。スノーの行動全てがあの人に監視されてるっつってもいいぐらいの」
睨むスノーを怖がることもなく、アンバーは簡単に「首輪」と言ってのけた。
スノーが放つものが、殺気に変わったのは言うまでもない。
「……ア・ン・バー? いい加減にしましょうね……?」
滴は、それを見て、アンバーのこの後の運命に祈りを捧げる。
死にませんように、と。
しかし、アンバーの言葉を聞きたかった滴達は、アンバーの話を聞くことをやめない。スノーが教えてくれない以上、アンバーに聞くしかないからだ。
それにしても、またしても出てきた「あの人」。前に聞いたときは、スノーが口にした言葉だった。
いったい誰なのだろう。スノーの時とは違う人物なのだろうか。
聞いたところでわからないだろうが、名前を言わず、代名詞で言われると気になる。
「怒られてるところ悪いんだけどぉ、『あの人』ってだぁれぇ?」
まるで滴の心を読んだかのように、愛がくるりとた可愛らしい目をアンバーに向ける。
「……それは教えられん。あの人との契約だからな」
やっぱりな。
そう滴は思った。
あの人、と言うからには、やはり名前を教えられないのだろう。
だが、ウサギと契約って……。
滴はクスリと笑う。人となら未だしも、ウサギとだ。今までの世界ならそんな事はあり得ない。人と人が契約する中でウサギが関わっていることはあっても、人とウサギが直接契約して約束を守りあうなんて、本当にファンタジーの世界だ。
「ねぇ、聞くけど、スノーが前に言ってた『あの人』も、アンバーがさっき言った『あの人』と同じなの?」
滴が聞くと、スノーはヒッ、と息を飲んだ。
「そ、そんな訳ないでしょ! と、いうか、あの人なんていつ言いました? 言ってませんよね!?」
ああ、同一人物なんだな、と滴達はスノーの言葉を片付ける。
考えてみれば、スノーとアンバーはどこか知り合いのようだったではないか。そう考えれば、契約によって知り合ったのかもしれなかった。
それだけスノーの顔には不安と焦りが見られる。
滴達は、お互いを見つめて頷き合い、爽やかに笑って見せた。
「つまりだけど、シャドーとこれって同じやつだよね? スノーに『あの人』がシャドーを渡したんでしょ? だったら『あの人』のところに連れていってくれるかな?」
「え! いや、それは無理ですっ!」
「馬鹿言え! テメェーら何しにあの方に会いに行くんだ!?」
目に見えて慌てるスノー達に、滴はキョトリとする。
「……? 元の世界に返してもらう為、かな」
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