伝説のカラス 3
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だが、いつまで経ってもその訪れるはずの痛みを感じず、滴はうっすらと片目を開く。その片目に映し出されたのは、闇のような真っ黒だった。滴は目をしばたかせる。しかし、その光景が変わることはなかった。
つまりはそういうことだ。カラスは滴を襲おうとしたわけではなかったと言うことだ。その証拠に、カラスは今、滴の前で翼を畳んで降り立っている。
「ど、どういうこと?」
今度は滴がカラスの様子を窺う番だ。
よく見ると優しげな目が、滴になにか言いたげな視線を送っていた。
「……た、多分、背中に乗れってことじゃないかな……?」
波の驚くべき発言に、光が慌てているようだ。
「ちょ、ちょっと待て! もし違かったら今度こそ滴の命はないんだぞ!?」
「……わ、わかってる……! で、でも、そう言いたいんだと思うの……!」
上から降ってくる声を参考にしながら、滴はもう一度カラスを見る。
近すぎてよくわからないのだが、恐らくカラスは横を向いている。
カラスは何もせずに、ただ滴をじっと見ていた。
カァ!!
突然カラスが鳴いた。
至近距離でその声を聞いた滴は、危うく崖から落ちそうになった。足が少し動いたことで、崖の小石が下へと転がっていく。
滴はそれに青ざめながら、今度は睨むようにカラスを見上げた。
すると、カラスの翼が滴の方へと差し出される。
登れってこと?
背中に乗れってこと?
波の推測は正しかったってこと?
滴は迷いながらも、カラスの翼に手をおき、そっとよじ登る。隠れるようにカラスの目を覗くと、カラスは首を縦に動かした。
それは滴に翼に登って欲しかったのだということを表す。
滴は見事正解を引いたのだった。
滴が背中まで上りきると、カラスはおもむろに飛び立った。もちろん滴を乗せて、だ。
「わぁっ!」
カラスの背中の上は揺れが大きく安定していない。その為、カラスが翼を動かす度に、滴は落ちそうになってカラスの背中にしがみついた。
行き先は近かった。カラスの巣である。
カラスはグッと巣に背中を近寄らせ、滴に水晶を取るよう促した。卵を取ったらどうなるのだろう、と一瞬だけ恐ろしい想像する。
腕を伸ばすとすぐ水晶に届く距離までカラスが背中を近寄らせてくれたので、簡単に水晶を取ることが出来た。
ありがとうという感謝を伝えるため、滴は水晶を持っていない方の手でカラスの背中を撫でる。
少しだけカラスが気持ち良さそうにしたのは気のせいではないだろう。カラスの目は嬉しそうな光を讃えていた。
「滴!」
カラスが頂上まで滴を運んでくれ、滴は楽に地上へ降り立った。
プリちゃん達が滴を取り囲む。
「良かった!」
「私、滴がもし駄目だったらって怖かったよ……」
揉みくちゃにされ、滴は目を細める。
安心したからか、いつの間にか止まっていた足の震えが再始動を始めた。
良かった、と手を取り合う滴達の後ろで、スノーとアンバーは、お互いを見あい、頷いた。
読んでくださりありがとうございました。
テレビを見ていたらすっかり時間が過ぎてしまい、昨日は投稿できませんでした。
すみませんでした!




