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嘘の嘘 本当の本当  作者: カカオ
第4章 水晶
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伝説のカラス 2

閲覧ありがとうございます。

「滴っ! 戻ってきて!」


顔を見なくても、その声の持ち主が蒼白になっているのがわかる。


滴は1度大きく息をつく。

カラスの方を見ると、カラスと目があった。「警戒」という2つの文字がカラスの目の奥で光っている。滴から目を全く離そうとはしない警戒ぶりだ。

カラスが翼を大きく振ると、ひどく大きい黒い羽がハラリと滴の横を舞って落ちていった。

不気味、という言葉が一番この状況を表すぴったりな言葉だろう。


戻るべきか?

自分自身にといかける。


状況的には諦めるべきである。けれど、諦めるにはまだ早すぎる。


ねぇ、カラス。ちょっとそれ返してくれない?

なんて言っても相手は鳥。言葉を理解することはないだろう。


……あれ? でもスノーとアンバーは?

滴は思考を続ける。

あれはウサギ。哺乳類ではあっても、人の言葉を理解できるほどの脳は持っていないはずのウサギだ。

つまりはそういうことだ。

小説の世界なら現実世界ではあり得ないことも出来る。他の動物と会話をすることも。動物と冗談を言い合うことも。


滴はカラスに声をかける。出来るだけ大きな声で。


「か、カラスさん! 聞こえますか!?」


心なしかカラスがこちらの言葉に頷いたように見えた。滴の思い過ごしだろうか……?


「私は、人間の仲谷 滴です! その、巣にある宝石、スノーって言うウサギの大事なものなんです! 返してくださいませんか?」


滑りそうになる足に力を入れながら、声を張り上げると、カラスがこちらの顔を窺うように、じっと見つめてきた。

獲物を狙うときのような鋭い視線に、滴は冷や汗をかく。


「……カァ!!!」


空気が震えるような大音量と共に、カラスのくちばしが大きく開く。そして、翼をバサバサとはためかせながら、カラスが滴に向かって猛スピードで飛んでくるのが見えた。


「し、滴っ!」


五人の慌てたような声が滴の耳に入り、滴はこれから起こる出来事を予測して目をつむった。




読んでくださりありがとうございました。

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