伝説のカラス 1
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お喋りをしながらも、滴達は着々と山を登り、頂上へと着いた。
標高が高いからか、地上よりは気温が低い。
「では、宜しく頼みます!」
スノーは緊張したような面持ちである。
他の5人もごくりと唾を飲み込んだのがみえた。
「うん。頑張るね!」
スノー達に小さく手をあげ、崖に向き合う。
しかし、いざ崖の端の方にたつと、滴の足元をすぅッと風が通る。
滴は決して高所恐怖症ではない。けれど、崖を見下ろした景色に膝が笑いだした。ひぃ、と小さな叫びが喉から出てくるのを止められない。そんな喉はカラカラと渇き、水を欲していた。口の端がひきつったように曲がっているのがわかる。
だってうっかりしたら死ぬわけでしょ?
「……滴?」
プルプルと震える滴の背中にプリちゃんの声が届く。だが、その声も震えているように聞こえた。
他の子にもこんなに心配かけて……。何やってるんだろ、私。
さっさといかなきゃ。
あの時覚悟したのは、他でもない私なんだから。
「行くよ。大丈夫、一人でも」
そう宣言して、滴は今度こそ崖を下る。
後ろからゆっくり足をかけて、滑らないのを確認してからもう一方の足をかける。
実は水晶は見えていた。
水晶があるのはカラスの巣の中である。他の白い卵と同じように並んでいる。1つだけキラリと光っているので、とても分かりやすかった。現在巣にカラスは居ない。
「は、早くっ!」
「急かすなよ。落ちたらどうするんだ……!」
「でもぉ!」
「お願い……! ど、どうか無事で……!」
「ぶ、無事に決まってるよね!」
上からは5人が言い争う声が降ってくる。
それを聞いて、滴は絶対に無事に帰ると改めて思った。こんなに心配してくれるなんて……、予想外だった。
その時、滴を大きな影が覆った。
そっと上を見ると、空が真っ暗になっている。5人からは悲鳴。
また雨でも降るのか……!?
そう思った。だが、すぐにその考えは違うと気付く。
クジラ並みの大きさのカラスが目に入ってきたからだ。
通り過ぎたカラスに滴は身をすくめる。
スノーったら一番重要な特徴を滴に隠していたのだ。そう、あんなに大きいなんて言えなくて。
さて、どうやって巣に近づくべきか。
親鳥は滴を警戒して旋回し続けている。
こんなのに襲われたらひとたまりもないので、滴は簡単に巣へ近づけない。
滴はカラスの大きなくちばしと翼を見て身震いした。
くちばしでついばまれたら大怪我間違いなし。翼で煽られただけでも崖から転がり落ちてしまうのは決まったことである。
カラスのくちばしは艶々と光り、今にも襲いかかってきそうであった。
「……こんなんじゃ取り返せないよ!」
滴は手の力を無意識に強める。
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