回復
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波はリュックサックを漁ると、中から薬を取り出した。
「……か、風邪薬、風邪って決まった訳じゃないけど大丈夫だよね……」
不安げに波が手を止める。
「大丈夫だと思う。症状からして風邪だと思うから」
光の言葉にホッとしたのか、波は眠いのかうつらうつらしている紗季に風邪薬を手渡した。薬は粒のタイプである。
紗季が薬を飲み込んだのを確認して、滴達は静かに息をついた。
まだ紗季が大丈夫なのかは怪しいが、今よりは良くなるはずだ。
滴達は雨が止んで、紗季の熱が下がるまで待つことにした。もちろん熱が完全に下がるまで、というのは、食料が足らなくなる可能性があるので出来ないが、今より良くなるのを待つ。
滴達は冷えた体を温めるために、くっついて座った。
ウサギ2匹もぴったりとくっついて落ち着いている。
何故だか2匹は知り合いだったようで、結構仲が良かった。近況報告や昔の話で盛り上がっている。
「黒! 足踏まないでください!」
「はぁ!? 踏んでねーし」
ちょっと喧嘩しそうな雰囲気もあるが、まぁ、喧嘩するほど仲が良いともいうので、やはり仲は良いのだろう。大きさもほぼ同じなので、色は違えど兄弟姉妹のように見えた。
話を聞いていると、どうやらお互いを「黒」、「白」と呼んでいるようだ。
滴は、安易だなぁ、と思う。
滴達が眠りにつき、朝日と共に目を覚ますと、地平線の方には太陽がくっきりと見えた。つまり、雨が止んでいた、ということだ。
あとは、紗季の具合が問題だ。
見た目は良くなったように見えるが、どうなのだろう。当の本人はまだ起きていないので、滴達はそれを待ってから決めることにする。
しばらくして、紗季は起きた。
顔色は良い。
「具合はどう?」
「随分良いみたい!」
そう言って、紗季は滴達の前で歩いて見せた。確かにしっかりとした足取りだ。
それを見て、滴達はハイタッチを交わした。
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