裏切りと約束
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しばらく探しても紗季達がいないのを悟ると、滴達はそれぞれ座り込んだ。
「紗季達、まだかなぁ」
プリちゃんがせっかく着いたのに、と呟く。
その時だった。
うさぎさんのみが頂上まで転がってきたのは。
「…………ふぅ、やっと着きました!」
全速力で来たのか、うさぎさんは息を切らしていた。今まで光の背中にいたからか、体力を温存できていたようだ。
「それでは、滴! 取り返してください!!」
「えっ? 紗季達は?」
「二人はぁ?」
滴達は不審そうにうさぎさんを見る。
けれど、うさぎさんは真剣な目そのもので滴を見るだけだ。期待を込めた目で。
「……紗季達と合流するって話だったよね。それからカラスに挑戦するって」
滴の全身から静かな怒りが生まれる。直に触れたら燃えてしまいそうなほどの。
何故って、うさぎさんが紗季達を置いて来たのだから。そして、予定を狂わせて勝手なことを言い出したから。
それを見ていたプリちゃん達もうさぎさんを睨む。滴に負けないくらいの威力で。
「何で二人の居場所を真っ先に教えてくれないの? まずはそこからだよね? 水晶はその後でしょ?」
諭すようにプリちゃんが言う。
うさぎさんは、そんなプリちゃんから怯えたように目をそらした。
「そ、その方が効率的ではないですか」
滴達は言葉に詰まる。
確かに効率を考えると、その方が良いに違いない。けれど、紗季達がいない状態で滴が水晶を取り返そうとしても、紗季達への不安から注意力散漫になり、どこかしらでミスをするに違いなかった。いや、確かにそうきまったわけではないが、失敗する確率は格段に高くなるだろう。
「私は、紗季達がいない状態で取りには行かない。うさぎさんがなんと言っても」
滴の宣言に対し、うさぎさんはムッとしたようだ。
「じゃあ、二人が居さえすれば良いんですね……?」
不貞腐れたようにひげを動かす。
滴達はうさぎさんの案内で光達の元へと向かった。
うさぎさんが立ち止まった場所に行くと、そこにはぐったりとした二人がいた。
光が立ち上がり、滴達に近寄る。
「……紗季が熱を出した。助けてやってくれ」
「……ね、熱…………?」
小さく波は声をあげる。そして続けた。
「わ、私、風邪薬だったら持ってるよ……!」
「本当か?」
そう言った光は、これまでにないくらい嬉しそうな顔だった。
この際何故持っているかは聞かない。
「……うん!」
波が元気よく光に頷く。
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