迷わせウサギ
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夏に近づいてきましたね。我が家では、夕食に冷やし中華とスイカが登場しました。
紗季の額は手が焼けそうなほど熱い。
光は周りを見渡すが、近くに建物などはやはりなかった。草木が生い茂っているばかりだ。
「大丈夫。歩けるよ!」
紗季は歯を見せて笑っているが、その顔はもう無理、と言っていて、泣きそうな感じだった。
「歩きましょう」
背後の声を聞き取って、光は激しく苛立つ。
紗季が歩けるわけないだろ!
「お前、紗季を見て言っていてんのか?」
光は、後ろに強く鋭い視線を送った。
しかし、うさぎさんは動じない。
返ってくるのは、ただ平坦な感じのする声だった。
「はい」
それを聞いた瞬間、光は鳥肌がたった。
そして気づく。
うさぎさんは水晶さえ帰ってくれば、仲間の事なんて気にもとめないのだ。たとえ、紗季の具合が悪化しても。
光は決めた。
うさぎさんは頼れない。だったら、自分がしっかり紗季を看ると。
どうするのが今の紗季にとってベストなのかはわからない。けれど、出来るだけのことをやると決めたのだ。
「光? いいこと教えてあげましょうか」
は?
いいこと?
突然のうさぎさんの言葉にそう思ったが、光は敢えてうさぎさんには問い掛けない。うさぎさんとは今話したくないのだ。
それより、一時的にここを離れて、建物を探すべきか。それとも、滴達に助けを求めるため、頂上へ行くか。ここにずっといて、紗季を見ているべきか。
雨は強くなるばかりで止みそうにない。
「……聞きたくないの?」
うるさい。
良いことならさっさと言えよ。
「光達は『追放ゲーム』やってるんでしょ?」
「!」
何故知っている?
誰かがうさぎさんに教えたのか?
うさぎさんは光が驚いたように固まると、得意気に目を細めた。
「私、コンピュータが誰か知ってるよ。…………それはね……」
「……やめろ。聞きたくなんかない」
にやりとするうさぎさんとは反対に、光は耳を塞いだ。
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