酷い状況
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決めた道を滴達は急ぎ足で進んでいった。
その道は結構荒れていて、倒れた大木などもあった。他にも大きな岩やスズメバチの巣などが、滴達の行く手を阻む。
「こっちにしたのぉ、失敗だったかなぁ?」
すっかり土で汚くなった手を愛は見つめる。
手を使わなければ通れない場所もあったのだ。
「かもね……」
プリちゃんも足元に目を落とす。
プリちゃんの足元には、大きな蜘蛛の死骸があった。
波がそれを見て、サササッと滴の後ろに隠れる。
「し、失敗どころじゃないよ……!」
波は虫がかなり苦手らしい。
そういえば前に、飛んできた蝶からも逃げていた。
そんな事を話していると、滴達が恐れていたものが本格的に降ってきてしまった。
「う、うわ……! ど、どうしよう……!」
「……最悪だね。取り合えずそのまま進む?」
進まない、という選択肢もあるが、なにしろうさぎさんの水晶が心配である。雨が降ったからといって簡単に休むわけにはいかないのだ。
「……進もっか」
すっかり濡れてしまった髪をぎゅっと手で絞りながら、プリちゃんが滴の意見に賛同する。
愛もこくりと頷いた。
波もそれを見て力強く頷く。
「が、頑張ろ……!」
「うん、勿論だよ!」
「早く頂上行かなきゃあ、だもんねぇ!」
「うさぎさんの水晶、早く取り返そう!」
4人は、火の灯った瞳をお互いにぶつけ合い、雨ですっかり冷たくなってしまったお互いの手同士をつなぐ。こうすることによって、4人はお互いの意思の強さをより一層感じた。
また、一人じゃないということも感じられた。一人では到底頂上までは辿り着けないだろう。こんなに過酷な状況なのだから。諦めたくなっても仲間が居るから頑張れる、そういう経験が誰にでもあるのではないだろうか。
「歩いてればすぐ着くよ、きっと。気を付けていこう」
プリちゃんが注意を促す。
それに応えるように、滴達はまた大きく頷いた。
しかし、滴達が思っていたほど山は優しくなかったようだ。
更に雨は強くなり、滴達を刺すように降ってくる。おまけに気温も下がり、それが滴達の体温を低下させた。遠くで雷までもが鳴っている。
「ついてなーいっ!!」
プリちゃんが、痛いくらいの雨を受けて絶叫した。
雨で靴もビショショである。靴の中に侵入してきた雨水により、とにかく足が気持ち悪い。
「なんでこんなに荒れちゃったんだろう……」
自然現象だから仕方がないのは分かるが、もう少し穏やかでも良いのではないだろうか。
滴はリュックサックの中身を確認した。
やはり、中はビショビショだった。メモ帳や地図までもが濡れてしまっている。読めないくらいに……。
「……わ、私達、ちゃんと頂上まで行けるのかな……? う、ううん、行けるかな、じゃなくて行くんだよね……!」
「行けなくてもぉ、気合いでぇ行くんだよぉ?」
お互いを励まし、少しずつ頂上へ近づいて行く滴達であった。
その頃、紗季と光は木の陰で座り込んでいた。
だが、それは決して休んでいるわけではない。
「紗季? 生きてるか?」
「どうにかー……」
紗季の顔は真っ赤である。
「……」
とにかく雨の当たらない場所を探さなければ。
光は紗季の額に手を当てながら、そう思った。
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