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嘘の嘘 本当の本当  作者: カカオ
第4章 水晶
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酷い状況

閲覧ありがとうございます。

決めた道を滴達は急ぎ足で進んでいった。

その道は結構荒れていて、倒れた大木などもあった。他にも大きな岩やスズメバチの巣などが、滴達の行く手を阻む。


「こっちにしたのぉ、失敗だったかなぁ?」


すっかり土で汚くなった手を愛は見つめる。

手を使わなければ通れない場所もあったのだ。


「かもね……」


プリちゃんも足元に目を落とす。

プリちゃんの足元には、大きな蜘蛛の死骸があった。

波がそれを見て、サササッと滴の後ろに隠れる。


「し、失敗どころじゃないよ……!」


波は虫がかなり苦手らしい。

そういえば前に、飛んできた蝶からも逃げていた。


そんな事を話していると、滴達が恐れていたものが本格的に降ってきてしまった。


「う、うわ……! ど、どうしよう……!」

「……最悪だね。取り合えずそのまま進む?」


進まない、という選択肢もあるが、なにしろうさぎさんの水晶が心配である。雨が降ったからといって簡単に休むわけにはいかないのだ。


「……進もっか」


すっかり濡れてしまった髪をぎゅっと手で絞りながら、プリちゃんが滴の意見に賛同する。

愛もこくりと頷いた。


波もそれを見て力強く頷く。


「が、頑張ろ……!」

「うん、勿論だよ!」

「早く頂上行かなきゃあ、だもんねぇ!」

「うさぎさんの水晶、早く取り返そう!」


4人は、火の灯った瞳をお互いにぶつけ合い、雨ですっかり冷たくなってしまったお互いの手同士をつなぐ。こうすることによって、4人はお互いの意思の強さをより一層感じた。

また、一人じゃないということも感じられた。一人では到底頂上までは辿り着けないだろう。こんなに過酷な状況なのだから。諦めたくなっても仲間が居るから頑張れる、そういう経験が誰にでもあるのではないだろうか。


「歩いてればすぐ着くよ、きっと。気を付けていこう」


プリちゃんが注意を促す。

それに応えるように、滴達はまた大きく頷いた。


しかし、滴達が思っていたほど山は優しくなかったようだ。

更に雨は強くなり、滴達を刺すように降ってくる。おまけに気温も下がり、それが滴達の体温を低下させた。遠くで雷までもが鳴っている。


「ついてなーいっ!!」


プリちゃんが、痛いくらいの雨を受けて絶叫した。

雨で靴もビショショである。靴の中に侵入してきた雨水により、とにかく足が気持ち悪い。


「なんでこんなに荒れちゃったんだろう……」


自然現象だから仕方がないのは分かるが、もう少し穏やかでも良いのではないだろうか。

滴はリュックサックの中身を確認した。

やはり、中はビショビショだった。メモ帳や地図までもが濡れてしまっている。読めないくらいに……。


「……わ、私達、ちゃんと頂上まで行けるのかな……? う、ううん、行けるかな、じゃなくて行くんだよね……!」

「行けなくてもぉ、気合いでぇ行くんだよぉ?」


お互いを励まし、少しずつ頂上へ近づいて行く滴達であった。










その頃、紗季と光は木の陰で座り込んでいた。

だが、それは決して休んでいるわけではない。


「紗季? 生きてるか?」

「どうにかー……」


紗季の顔は真っ赤である。


「……」


とにかく雨の当たらない場所を探さなければ。

光は紗季の額に手を当てながら、そう思った。






閲覧ありがとうございました。

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