穴だらけの橋 3
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「な、波ぃ!」
愛の悲痛な叫びが響く。
「……た、助けて……!」
すると、それに応えるように、波の声が橋の方から聞こえた。
「今行くよ!」
滴は迷いもせず、橋に足をかけた。
「……まって!」
一歩遅れてプリちゃんが滴に手を伸ばす。
滴はそんなプリちゃんにそっと微笑んだ。
プリちゃんはそれを見て、ハッとした表情を浮かべた。愛も目に涙を浮かべる。
もしもの時の死ぬ覚悟は出来ていた。
だから、最期に友達に向ける表情は最高の笑顔に決めた。そう、誰もが甘いキャンディーの味を思い浮かべるような。
もしも何かあったら、その時はごめんね。
滴は他の4人に、そっとそんな言葉を呟いた。誰一人としてその言葉を聞き取った人はいないだろうが。
滴が波に近寄っていくと、波が落ちそうになりながらも橋の床に必死に掴まっているのが分かった。手は橋の床を掴んでいるが、足は橋の下をブラブラとさ迷っている。
波は滴の姿を確認すると、硬くなっていた頬を少し緩めた。
「波、私に掴まって!」
腕を伸ばすと、波は滴の腕に掴まった。
波の掴む手の力は半端でなく強かったので、滴はその痛みを唇を噛んで耐えた。
口を開けば、その瞬間に力が緩んで波が落ちていってしまう気がしたから。
滴はそのまま全身に力を入れ、橋へと波を引っ張る。
「……ん!」
もうすこしだ。
波がもう少し力を入れれば橋の上までたどり着けそうである。
「えいっ……!」
波が力を入れ、その勢いで波は橋の上に転がった。幸いそこに穴はない。
滴もちょっと落ちそうになりながらも、しっかり自分の力で立ち上がる。
「波!」
「滴……! ありがとう……!」
滴と波はお互いの手を取り合う。
どちらの手も手汗によってベタベタだったが、そんなのはお構いなしである。
ふたりが手を取り合ったのを見て、他の4人は足元から崩れてしまった。
緊張が一気にほどけたためであろう。
滴と波は、プリちゃん達の待つ方にゆっくり歩いていった。
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