穴だらけの橋 1
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少し進むと、長い木の橋が見えてきた。
けれど、その橋は木自体が古いらしく、全体的に黒ずんでいる。しかも、ところどころ穴が開いていた。足を少しかけると、ギシリと木の軋む音がする。
滴達はそんな橋を前に、一歩後ろに下がった。
「ねぇ、これって通れるの?」
顔をひきつらせて、紗季は橋を指差す。
「通ってもらわないと困ります!」
うさぎさんはツンと橋から目をそらすが、
「……あ、危ないよ……!」
そう一人がうさぎさんの言葉をに被せるように言った。
うさぎさんは、その言葉の主を軽く睨む。
「今日中って言ったじゃないですか!」
確かに言ったな……。
山小屋を出てから直ぐにそんな話をしたような気がした。
だから、滴達はうさぎさんの言葉に沈黙してしまう。だって、うさぎさんとの約束を守れないかもしれないのだから。守るには、この橋を渡るしかないだろう。遠回りをすれば、今日中という話は守れそうにない。
「……わかった。私、渡るよ!」
一瞬静まり返ってしまった山に凛とした声が響く。
プリちゃんだ。
どこからそんな勇気が湧いてくるのだろう。
滴はそう思った。
プリちゃんは狂ってしまったのかもしれない、とさえ思ってしまう。
橋を渡れば、落ちて死ぬかもしれない。それなのに、うさぎさんとの約束を優先させるなんて。
「だって、うさぎさんにとってあの水晶は大切な物なんでしょ? そうこうしている間にカラスが落として割っちゃうかもしれない。──それに私達、もう1日無駄に休んでるんだよ? うさぎさんが急いでるのに、そんなに呑気にしてちゃいけないと思う」
……プリちゃん。
うさぎさんの方を見ると、うさぎさんは何故か唖然としていた。
まさか、本当に橋を渡ろうとしてくれるなんて、思いもしなかったのだろう。
「……死んじゃあ、元も子もないよぉ」
愛が小さく唸っている。
滴も困ってしまっている。
確かに滴もうさぎさんとの約束は、破りたくない。しかし、死ぬのはもっと嫌だった。
それにしても、その水晶はうさぎさんにとってどれほど大切なものなのだろう。
ただそれが気になる。
「あの、一個聞きたいのだけど、いい?」
うさぎさんを見ていうと、うさぎさんはこくりと頷いた。
それを見届けて、滴は問う。
「あの水晶って、うさぎさんにとってどれくらい大切なものなの?」
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