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嘘の嘘 本当の本当  作者: カカオ
第4章 水晶
32/100

穴だらけの橋 1

閲覧ありがとうございます。

少し進むと、長い木の橋が見えてきた。

けれど、その橋は木自体が古いらしく、全体的に黒ずんでいる。しかも、ところどころ穴が開いていた。足を少しかけると、ギシリと木の軋む音がする。

滴達はそんな橋を前に、一歩後ろに下がった。


「ねぇ、これって通れるの?」


顔をひきつらせて、紗季は橋を指差す。


「通ってもらわないと困ります!」


うさぎさんはツンと橋から目をそらすが、


「……あ、危ないよ……!」


そう一人がうさぎさんの言葉をに被せるように言った。

うさぎさんは、その言葉の主を軽く睨む。


「今日中って言ったじゃないですか!」


確かに言ったな……。

山小屋を出てから直ぐにそんな話をしたような気がした。

だから、滴達はうさぎさんの言葉に沈黙してしまう。だって、うさぎさんとの約束を守れないかもしれないのだから。守るには、この橋を渡るしかないだろう。遠回りをすれば、今日中という話は守れそうにない。


「……わかった。私、渡るよ!」


一瞬静まり返ってしまった山に凛とした声が響く。

プリちゃんだ。


どこからそんな勇気が湧いてくるのだろう。

滴はそう思った。

プリちゃんは狂ってしまったのかもしれない、とさえ思ってしまう。

橋を渡れば、落ちて死ぬかもしれない。それなのに、うさぎさんとの約束を優先させるなんて。


「だって、うさぎさんにとってあの水晶は大切な物なんでしょ? そうこうしている間にカラスが落として割っちゃうかもしれない。──それに私達、もう1日無駄に休んでるんだよ? うさぎさんが急いでるのに、そんなに呑気にしてちゃいけないと思う」


……プリちゃん。

うさぎさんの方を見ると、うさぎさんは何故か唖然としていた。

まさか、本当に橋を渡ろうとしてくれるなんて、思いもしなかったのだろう。


「……死んじゃあ、元も子もないよぉ」


愛が小さく唸っている。

滴も困ってしまっている。

確かに滴もうさぎさんとの約束は、破りたくない。しかし、死ぬのはもっと嫌だった。

それにしても、その水晶はうさぎさんにとってどれほど大切なものなのだろう。

ただそれが気になる。


「あの、一個聞きたいのだけど、いい?」


うさぎさんを見ていうと、うさぎさんはこくりと頷いた。

それを見届けて、滴は問う。


「あの水晶って、うさぎさんにとってどれくらい大切なものなの?」





読んでくださりありがとうございました。

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