行ってきます
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「あーあ、うさぎさんに頼まれなければ、今頃楽しくバーベキューしてたのになー」
紗季が息を漏らす。
あれから一晩過ぎ、滴達は山へと向かっていた。山までまだ4キロもある。
山に上る前に疲れていそうな感じだ。
「……こっちが頭を下げてお願いしてるのに、その言い方はなんです?」
透き通るような声が、光の後ろから聞こえる。
実は、うさぎさんが連れてけ、とうるさいので仕方がなく連れてきたのだ。
皆うさぎさんをリュックサックに入れるほど体力はないと思うのだが、うさぎさんは引くことを知らなかったから、本当に仕方がなくなのだ。
今は、一番体力があると思われる光にうさぎさんを預けている。
「お前はお願いしてる立場だろ?」
光はうさぎさんのあまりの身勝手さに嫌気がさしているようだ。
滴も、うさぎさんはかなりうるさいと思う。
うさぎさんは、光の言葉に言葉を詰まらせて咳払いをした。
「とにかく、水晶を早く取り返しましょう!」
無駄に元気そうなうさぎさんを見て、滴達はお互いの様子を見る。
どう考えても、取り返したいのはうさぎさんだけであって、滴達ではない。滴達が手伝ってあげているのはただの優しさからである。
だが、うさぎさんにそれを言っても分かってもらえないことはわかりきっていたので、滴達は黙っていることにした。
「ねぇ、カラスっていってたけど、そのカラスってどんな鳥なの?」
伝説と言うからには、日本のカラスとは違うはずだ。
そう思って、滴はうさぎさんに確認する。
「えー、黒い翼に黒いくちばしですね。なんだかちょっと怖いやつです」
うさぎさんはブルッと体を震わせる。
滴達はうさぎさんと正反対な色なんだなぁ、と思いながら聞いていたが、途中で気づく。
これって日本のカラスと何ら変わんなくない?
拍子抜けとは、まさにこの事である。
けれど、それで良かったのかもしれない。もし、本当に怖すぎて近づけない鳥だったら、滴達は恐らくうさぎさんの手伝いを止めていただろうから。
山から約1キロメートル地点についたころだ。
滴達は呆然と目の前に広がる光景を見つめる。
そこにあるのは大きな川だった。しかもこの間降った雨のせいか増水している。
橋に雷が落ちたようで、橋は焼けてしまっていた。
うさぎさんがいうには、近くの橋まであと20キロメートルあるらしい。
滴達は、近くの橋まで歩くしかない。
そう思って、また歩き始めた。
意外すぎるアクシデントに滴達は何も言えなかった。
どうやら、滴達は運に見放されているらしい。
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