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嘘の嘘 本当の本当  作者: カカオ
第3章 崩れる友情
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無くならない友情

閲覧ありがとうございます。

プリちゃん……。

滴はその子の名前を心のなかで呼ぶ。

やっぱり持つべきものは友人なのかもしれない。プリちゃん以外の子が滴を信用してくれなかったのは、かなり寂しいが。


「ねぇ、プリちゃんも滴と組んでるのぉ? そうやってぇ、すぅぐ愛達を悪者にぃしないで欲しいなぁー」


愛がプリちゃんに向けているのは、間違いなく嫌悪だ。

どうしてこうなってしまったのだろうか。


「……こればっかりは愛に味方したくなる。波も怪しいが、滴とプリちゃんの方がもっと怪しいからな」


光が睨み付けるようにいう。いや、心の中を見透かそうとしているかのような目だった。

滴も今、そんな目をしているのかもしれなかった。


「わ、私、コンピュータなんかじゃないよ! 失礼だよ、そういうの。 しっかりした理由もなく疑うなんて!」


あわわ、プリちゃんはそう思うのか。おばさんの話の時もそう思ってたのかな……。

一瞬罪悪感でいっぱいになるが、あの時はおばさんが危険だということは合っていたので、失礼とは言わないかもしれないと思った。


「……しっかりした理由がなくても疑いたくなるのかもしれないね……」


見ると、波が下を向きながら呟いていた。波のまつげが、その目の下に濃い影を作っている。

窓の外では雨が降り始めていた。


「……だ、だって、…………私も、死にたくないもん……!」


波はそう言って走りだし、自分の部屋に篭ってしまった。

滴達は顔を見合わせ、そっとお互いから視線をそらす。


「……この話は明日にしよう。今日はもう寝よう」


光は背を向けて、自分の部屋へと行ってしまった。

それを合図に、滴達もそれぞれの部屋へと戻る。




部屋へ戻った滴は、そのままベッドに身を委ねていた。


どうしてこうなったのか、その事だけが頭の中をぐるぐると回っている。当分他のことについては考えられないだろう。

それだけ滴はこの事態に参ってしまっていた。


おかしいんだ、何かが。ピンと来ない。

この事件は小説のなかにもあった。けれど、主人公は疑われなかったし、おばさんの占いの話は無かったのだ。

まるで、誰かが話を無理やり変えているような感じである。

小説の中の主人公と同じように滴が動けば、こうはならなかったのだろうか。いや、そうしたらおばさんの話で波が死んでしまっていた。それは回避したかったので、あの行動は自分でも間違ってはいないと思う。しかし、それで話が変わってきているなら困る。今後は小説の内容を使えなくなるからだ。


滴は雨の音を聴きながら、そっと目を閉じる。

誰か、滴達の仲を戻してください。そう願うのだった。


コンコン、初めてここで夜を過ごしたときのようにドアが鳴った。


「入っていいよ」


滴は顔だけをあげていう。

カチャリとドアを開けたのは、予想通りプリちゃんだった。


「ごめんね、なかなか寝れなくて」


あの日のようにプリちゃんは控えめに笑う。

滴はプリちゃんのその表情にちょっぴり安心感を覚える。


「今日は庇ってくれてありがとう」

「ううん、当たり前だよ。滴がそうだとは全く思えないし」


滴が言うと、プリちゃんは強めの口調でそう言った。


「……ねぇ、滴は私がコンピュータだと思う?」


滴はそれを聞いて少しドキリとしたが、なんでもない風に答える。


「な、どうして? そんなこと思うはずないじゃない?」


本当にそうは思えないのだ。

実はプリちゃん以外の皆も疑えない。疑おうと思っても普通の人間にしか思えないからだ。一人一人、人間らしさを持っている。個性がある。暖かさ、温もりがある。


「さっきも言ったけど、私も滴は違うと思う。……実はね、他の子もコンピュータだと思えないんだ……」


プリちゃんがそう言ったので、滴は勢いよく顔をあげた。

まさか、プリちゃんもそう思っていたとは。


つい、本当はコンピュータの子なんていないんじゃない? と、甘い考えが頭をよぎってしまう。

いないわけがないのに。




読んで下さり、ありがとうございました。


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