水族館
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あの日から何日か過ぎた頃のことだ。
滴達は地図を持って町を観光していた。
「ねぇねぇ、次どこ行くぅ?」
「うーん、……こことかどうかな……あ、でも……」
地図を持った波が小さく唸っている。
要するに、観光と言っても行けるところがないのだ。徒歩で観光するのだから、大変なのは当たり前である。とにかく観光地から観光地までの距離が長い。
「あ! ねえここは? 遠いと思うけど、面白そう」
紗季の目がキラキラと輝く。
紗季が指差しているのは、水族館だった。
「はぁ? 水族館ならここじゃなくても良いだろ?」
光は反対のようだ。
「いいや、水族館には女のロマンがつまってる!」
「え? 女のロマン?」
プリちゃんを含めた紗季以外の子は、不思議そうな顔をする。
それにしても紗季は結構な水族館押しのようだ。水族館の魅力はどうだとか、長々しく説明している。
「……じ、じゃあ、水族館にしよっか?」
あまりの長い説明に飽きてきた私達は、紗季のいう通り水族館に行くことにした。
「ね、ねぇ紗季? これに女のロマンあるの?」
滴は水槽を指差している。
「あ、ある、よ? ……多分」
滴達が行った水族館は、普通ではなかった。
そう、水槽の中にいたのは、有り得ないほど気持ち悪い魚達(?)だったのだ。人ようにニタニタ笑うヤツやさばいた状態のようなヤツ、何故か出っ歯なヤツ……。
女のロマン?
どこにあるんだよ、そんなの!
「き、きっとかわいい魚もいるよ!」
プリちゃん、そんな震えた声で言っても説得力ないよ?
「あれ? 光は?」
そう言えば光が居ない。
滴はキョロキョロと辺りを見回した。
「いたよ……?」
波に言われた方を見ると、以外にも光は水槽に見入っていた。
なに見てるの?、と声をかけようかと思ったが、滴は止めた。
愛がこっそりと光に近づく。
「なぁに、してるのぉ?」
愛が声をかけると、光は小さく跳び跳ねた。
「……いきなり話しかけるなよ」
うわぁ、機嫌悪そー。
「ちょっ、なに見てるのぉ!?」
愛が指差したのは、体が透明で骨と目だけが白く見える魚だった。光がさっきから熱心に見ていた水槽である。
「うるさいな。別に良いだろ!」
光はさっさと歩いていってしまった。
滴達はまだ呆然としている。
まさか、光の好みがああいうのだったとは……。
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