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嘘の嘘 本当の本当  作者: カカオ
第8章 あの方
100/100

さよならじゃないよ

閲覧ありがとうございます。

そうして、再びキッと友理は滴を睨み付ける。

その時だった。


「待ってください……!」


なにやら黒と白のボールが、3人の間に転がり込んできたのだ。よく見ると、それは、行方不明になっていたスノーとアンバーであった。

スノーとアンバーは立ち止まると耳をピンと立て、友理の方に向き直る。


「……な、何故です……!? あなた達は、わたしの……」


仲間でしょ、と友理は小さく呟く。


「ええ、先ほどまではです。私とアンバーを騙しておいて、仲間なんてよく言えますね?」

「大量の人参に釣られる訳ねーだろ?」

「……いや、釣られてましたよね……」

「……つ、釣られてなんかない」


そんなやり取りをした後、アンバーが滴たちに叫んだ。


「おい、テメェーら、今のうちに逃げちまえ! そこに元の世界に戻るための穴を用意しておいた。今なら帰れるっからな!」


滴は、突然現れたアンバーの言葉に一瞬呆然とする。

戻れるということは、ここの世界から出られると言うことだ。

アンバーが指差す方向には、確かに黒い穴があった。光を一切感じられない黒い穴だ。それが、空中に浮かんでいる。


「皆、行こう!」


滴はそう言ってから5人をみて、目を見開いた。まだ寝ていたのだ。急いで起こそうとするが、何故か5人は、目を覚ます気配がない。


「お、起きて!」


滴が慌てて叫ぶと、五人はうっすらと目を覚ました。


「あ、滴……。どうしたの……?」


未だに寝ぼけている5人に、滴は黒い穴を指差し、説明した。つまり、あそこから帰ることができるのだと。

五人は、状況に頭がついていけず、しばらく唖然としていたが、少し経って、ようやく状況を理解したようだ。


「あれに入れば、帰れるってことなのっ!? じゃあ、早く戻ろうよ、私たちの本当の世界にさっ」


紗季は、嬉しそうに黒い穴に向かって駆け出していく。他の4人もそうだった。

だが、入る直前、波がふっと口を開いたのだった。


「……こ、これって、元の世界に戻ったら、私たち、もう会えないんだよね……」

「……」

「そっか……。そんなの、愛、嫌だよ……」


そうなのだ。皆住んでいる場所はバラバラである。会える確率は限りなく低いだろう。愛は、語尾伸ばしを忘れて悲壮な声を漏らした。


「だ、大丈夫だよ、きっと。だって、会えなくたって住んでる世界は一緒でしょ? 私たち、もう心友でしょ? だったら、同じ世界にいるって思うだけで、十分だよ。皆の事、大好きだもん!」


プリちゃんが、くしゃりと顔を歪ませて笑う。


「そうだな……、同じ世界に住んでるんだからな」

「……うん! 愛も大好き!」


そうして、滴たちは手を繋ぎ、笑顔で黒い穴へと向ったのだった。


























目を覚ますと、そこはベットの中だった。

窓を見ると、外は雪が降っていて真っ白である。

自分の部屋から出て、滴は母の元へと行った。


「あら、滴、おはよう」


母の手には、原稿用紙の束がある。どうやら、年末の片付けの途中のようだ。題名は「嘘の嘘 本当の本当」

母の膝の上のアルバムの表紙には「胡桃 ~高校~」


よく見ると、母の高校時代の写真の中に、あの5人にそっくりな少女がいる。

「お母さんね、謝りたい人がいるの」
















読んで下さりありがとうございました。少し謎を残してですが、ここで最終回とさせて頂きます。もう一話と思っていましたが、今回でそうさせてもらいました。

今まで応援して下さった方々、本当にありがとうございました!

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