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恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 6

ユーリックに言われて、それもそうだ、と思った。

それじゃあ・・・。


「まずは確認か」」


そう言って俺は魔封じの耳飾りを両耳とも外す。

周りからどよめきが起こる。

俺は目をつぶり魔力を開放した。

石を伝ってフォングラム公爵領に俺の魔力が行き渡っていく。


「見つけた」

「どこです」

「ここから5キロくらいの村に行商人の一団に化けてやがる」


目を開けて耳飾りを元通りにつける。

村の女性が、ホオ~と溜め息をつく。

何だ、とおもい目を向けると顔を赤くされた。


「それでどうしますか」

「もう一度連絡ってできるか」


隊長に訊いてみる。


「はい。出来ると思います」

「じゃあ、さっきの続きで、討伐から漏れた魔物がこの辺りに来るかもしれないということを、役人が伝えに来ていたと連絡するんだ。それで、いい機会だから今夜村を襲うと伝えてくれ。今なら魔物のせいにできるからと」

「わかりました」


俺は隊長の戒めを解くついでに、拘束されている全員も解いてやる。


「リチャード様、彼らを信用するんですか」

「おう。悪いか」

「まだ、騙している者がいるかもしれませんよ」

「大丈夫だ。さっき覗いたから」

「・・・見たんですか。非常事態とはいえ悪趣味な」

「いつもじゃないからいいだろう。それに手っ取り早い」

「ねえ、何のことか、訊いてもいい? それにさっきのも」


おれは真顔でセレネを見た。

好奇心・・・じゃないな。

事態をちゃんと把握するために知りたいって顔だ。

・・・幼いよな。まだ、12歳なんだ。

それなのに、セレネはちゃんとわかってるんだ。

国が無くなったとはいえ、彼らはセレネの国民。

王族であるセレネが守るべき者たち。

こんなに小さいのに覚悟を決めてる。


だから、あいつらもセレネを認めてついて行き、守ろうとしている。


「な、なによ。人の顔をジッと見て」


セレネがず~っと見ている俺に顔を赤くしながら言ってきた。


そういえば魔物の討伐に出る前、クロフォードが好きな人がいるだの、結婚するだの言っていたか。

たしか・・・リントナー伯爵の娘。

・・・・・・・


セレネは身分は平民だよな。ああ、違った。騎士爵の娘。

ベイグリッツ隊長のことは奴らにばれている。

だが、クリシュナ王女のことはばれてない。

じゃあ、もし、もしも・・・。


自然と口元が緩んでくる。


「ねえ、何を考えてる訳。気持ち悪い笑い方しちゃって」

「リチャード様、そろそろ思考の散歩からお戻りください」


2人の声がやっと耳から入ってきた。

しばらくシミュレーションに忙しかったようだ。


「ああ、悪い。それで、どこまで話したっけ」

「彼らの拘束を解いて信用するのですか、というところですね」

「あと、説明して」

「悪いが、説明はあとだ。時間を掛けられないから、さっさと用意をしないとな」

「では、具体的にどうするか、話してください」


俺は集会所にいる全員を見回した。


「まず、皆にはここを出たら身の回りの物をまとめて貰いたい。ただし、村を出て行ったと分からないように必要最小限にしてくれ。そうしたら、子供がいる家族、妊娠している女性がいる家族から移動を開始する。移動は家族単位でしてくれ」


言葉を切ると、皆頷いた。


「シナリオは大筋はさっき言った通りだ。夕方になったらここにいるフォングラム公爵の私兵は村を出て行く。襲撃者たちは暗くなるまで、村の外で待機だ。と、ユーリック、うちのに連絡はどうなっている」

「さっき、フォンブルクに早馬を出しました。表向きはね」

「で」

「ゲーリーにオオカミたちを連れてくるように伝えました」

「間に合うか?」

「ランスのファミリーに協力してもらうから大丈夫でしょう」

「・・・おまえ」

「許可は取りましたよ。事態を説明したら協力していただけるとね」

「あー。そうだったな。全く・・・誰の馬だよ」

「?・・・」


セレネが目線できいてくるが、あとにしてくれと合図する。

わかったのか、セレネは肩をすくめた。


「ところで死体はどうするんだ。何も無しじゃあ奴らが見に来たらばれるぞ」

「ええ、ですから、村人の何人かは死体役で残ってもらいます。彼らには仮死状態になる薬を飲んでもらいます」

「あれか。ん~、じゃあ、死体を見てもらうためにも、村長は残ってもらって、他には・・・」

「私もその役で」


フルーレが手を挙げた。


「信用してなんて言えないけど、手引き役の私がいないとおかしいと思うの」

「わかってんのか。下手すりゃ奴らに殺されるかもしれないんだぞ」

「わかってるわよ」

「じゃあ、俺も残るよ」

「あなた」

「フルーレが残るのに夫の俺がいないのはおかしいだろう」

「なら、私も残らないとね。夫と息子とかわいいお嫁さんが残るのですもの」

「お義母さま」

「私も残るよ。バカ息子がやらかしたことの責任は親の私がとらんとね」

「おふくろ」


それからも、協力者の家族が次々に声をあげた。

さすがに妊婦の女性は先に脱出してもらうことになったが、夫は彼女に鬼の形相で怒られていた。

最後には泣かれていたのだが・・・。


「なあ、ユーリック。グリフォンを使っちゃ駄目かな」

「それは・・・。事態の収拾がつかなくなりますからやめてください」


ふと、思いついて言ってみる。が、すかさず却下された。


「ランスがいるから抑えられるだろう」

「ああ、忘れてました。こちらの準備が済んだらリチャード様は出発してください」

「はあ~。なんでだよ。俺もことがすむまでここにいるから」

「駄目です。あなたの役目はなんですか。ベイグリッツ隊長の家族を王都にお連れすることですよね」

「だけど、状況が」

「いいえ、違いません。魔物の群れのことは私達に任せてください。もし、あなた方が居ないことによって態度を変えるものがいたとしても、後れをとる私達じゃありませんから」


ユーリックの目を見て・・・。

俺は溜め息をついた。

まあ、こいつに任せておけば大丈夫だろう。


「あ、そうだ。お前たちは誰が生き残る役か決めたか」

「はい。私とこちらの9人です」

「副官は死人でいいのか」

「はい。私は国に家族はいませんし、知り合いも少ないですから」

「顔、知られてないのか」

「ここに送られてくる少し前に副官に任ぜられましたが、王都に知り合いと呼べるのはこの隊の者たちだけです。もともと、私の親は店を持てない流しの商人でしたので」

「じゃあ、キュベリックに戻ったとしても、見つかる心配はないのか」

「はい。大丈夫だとおもいます」


おんや~。やっぱりこいつ面白いやつじゃん。


「あれ、君も死人なの」


彼らの中で一番若い男も死体役の方にいた。


「自分は演技が苦手ですので、たぶん戻ったら口を割る心配が・・・」


うん。たしかにそれは一番心配だな。


「他は~」

「そうですね。あとは細かく決めないで大体の流れが決まっていればいいかと」

「それじゃあ、暗くなったら彼らが村にやってきて村長を連れ出そうとして、騒ぎになったところにオオカミの群れが突っ込んできて」

「オオカミではなくて魔物です」

「魔物の群れが突っ込んできて、村人のほとんどが死んでしまう、と」

「襲撃者もとい傭兵たちも奮戦したが半数を失い、半数も酷い怪我を負ってしまう。そこに見回りにきたフォングラム公爵の私兵に助けられる。で、いいですね」

「そうだな。これ以上細かくきめると動けなくなる場合があるからな」


ユーリックと頷きあったらセレネが訊いてきた。


「5キロ先の怪しい集団がきた場合どうするの」

「おっと、忘れるところだった」

「それは私にお任せください。魔物の群れをぶつけて混乱させますので」

「それはいい手だ。よし、あとは任せた」

「はい。任されました」


皆を解散し家に帰すと俺とユーリックはフォングラム公爵軍をどう使うか話し合った。

その間にも、連絡を受けた他の部隊が村に来る。

彼らに他の村にも魔物の群れがこの近辺に現れたことを触れまわりに行かせたリ、抜け道の出口で待機する物たちの手配を済ませていく。

先行して抜け道を出て周辺を調べた者たちから報告を受け、そちらに馬車を回すことなどを言い合っていたら、ユーリック他一同に村を追い出されてしまった。

もちろんセレネも一緒に。


「いいですか、ノルンまでいくのですよ。それよりもこちらに近い村や町に泊まらないでください」

「おい、今からノルンまでだと日が落ちちまうだろう」

「知りませんよ。さっさと私達に任せて出発すればいいものを。いつまでもグズグズしているのですから」

「だから~」

「心配だからと言ったら殴りますよ。私たちを信用してないと云うことと同義です」


黙った俺に、セレネが言った。


「はい。あんたの負け。邪魔にならないようにさっさと行きましょう」


そう言いおいてセレネはランスのそばに行った。

俺は溜め息を吐くとユーリックの肩を叩いた。


「じゃあ、行くわ。あとは頼むぞ」

「さっき、任されたはずなのですけどね」


セレネのそばにいき、ランスに乗せてやる。

そして俺も彼女の後ろに跨った。


「じゃあな」

「はい。お気をつけて。フォンブルクで待ってますから」


俺はランスを駆けさせた。

いつの間にか、セレネは身体を浮かす魔法を使っていた。

大分遅くなったので、本気でランスを駆けさせた。


ノルンの街には完全に暗くなる前に着いた。

いつもの常宿に向かった。

厩にランスを預けると中に入る。


「あら、リチャード様。お泊りですか」

「ああ。部屋はあるか」

「それがねぇ、あいにくひと部屋しか空いて無くてねぇ。それも、一人用なんだけどねぇ」

「そうか。他の宿も一杯か」

「ええ。昼間魔物の群れがサンフェリス国寄りのところに現れたとふれがきたのさ。それをきいた旅人が早めに宿を取ったんでね」

「じゃあ、その部屋でいい」

「わかりましたわ。では、こちらにどうぞ」


案内された部屋はベッドが一つとサイドテーブルが一つ、椅子が一脚だった。


「夕飯を食べるのなら、食堂の方にきておくれね。ああ、あとで水差しを持ってくるわね」

「ああ、頼む」


女将が出て行くと、セレネが所在なげにしている。


「どうした」

「ユーリックさんが言ったことはこういうことだったんだと思って」

「ああ、悪いな。もう少し早けりゃ別々のベッドで寝れたんだけどな」


セレネがギョッとしたように俺の顔を見た。


「一緒に寝るの?」

「他に寝るところがないんだから仕方ないだろう」

「それは・・・」


言いたいことはわかるが、それよりも。


「先に夕飯を食わないか」

「そうね」


俺たちは宿の食堂に行った。食堂も満席だった。

俺たちが食堂に入ると視線が飛んできた。


「おーい、あんたたち。良かったら相席してかんか」


商人風の男が声を掛けてくれた。


「よろしいのですか」

「ああ、かまへん、かまへん」


お言葉に甘えて相席させてもらう。

席には30代後半くらいの商人風の男と女性が座っていた。


「おじゃまします」


セレネが一言言って座った。


「まあ、かわいいわね。いくつ」

「12歳です」

「娘より2つ上ね」

「娘さんがいらっしゃるのですか」

「ええ」


食事を注文し話をしてみたら、二人は夫婦で見た目どおり村で商店をやっていること。ここから二つほど離れた村に奥さんの実家があり、たまに旦那の仕入れについていき、ついでに実家に顔を出すそうだ。

本当はもう、自分たちの村についているはずだったが、魔物の群れの話をきいてこの村に泊まることにしたと言っていた。


俺たちのことも聞かれたが、セレネの親が亡くなり王都に親戚がいるから、送り届ける途中だといったら、食堂の中に安堵の雰囲気が流れた。


おい。じゃあ何か。

俺がセレネを攫ってきたように・・・だまして連れ出したように見えたのか。


それを聞いた商人の妻がセレネに慰めの言葉をかけている。

セレネは淡々と答えていた。


食事が終わると俺たちは部屋に戻った。



恋とはなんぞや? 6話です。


えーと、今回のリチャードの「覗いた」とか「ランスのファミリー」のこととかセレネに全部説明してくれますから、質問はちょっとまってくださいね。


うふふ。

ユーリックとリチャードの会話は楽しいです。

本来ならこんな言葉遣いじゃいけないんですけどね。


あっ、言葉遣い!

え~、アーマドの言葉遣いはパパからでした。


あと、書いていて思ったけど、なんで結婚できたのこの2人。

全然 恋 のこの字も出てこないじゃない。

周りに決められた結婚じゃなくて、自分たちが決めたはずなのに!


いや、分かってたけど、ちょっと愚痴りたくなりました。

まだ、今の時点で完結まで書き上げていないのですが、プロポーズまでいけるかな?

なんか、そこでも、ひと騒動おきそうで・・・いやです。


では、次回で。


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