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恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 2

村を出て少し離れたところで、馬を駆けさせた。

あまり早く走らせると馬になれていない彼女が怯えてしまうかもしれないと思ったからだ。

1時間ほど走らせたところで休憩をとった。

川が流れているそばにちょうどいい木陰を作っている木があった。


「乗りなれていないものに乗って疲れただろう」

「いえ。楽しかったです」


確かに馬に乗っている間、右に左に頭が動いていた。

そうか。飛ぶように過ぎる景色に目を奪われていたのか。

魔法でカップに水を出しそれを飲む。

彼女は水を飲みながら少し顔をしかめている。

ふむ。何も言わないがやはり尻が痛いか。

乗りなれてないとそうなるな。


「この後もう少し早く走らせることになるけどいいか」

「はい。大丈夫です」


彼女は顔を引きつらせながら答えた。

おいおい、大丈夫じゃないだろう。

馬に括り付けてある荷物から毛布を取り出す。

それを鞍の前側においた。


「そろそろいこうか」


そう言ってまた、彼女を抱き上げて毛布の上に乗せた。


「あの・・これ・・」

「悪いな。本当は馬車を用意したかったが、時間がかかるからな。気休めだけど少しは楽になると思うから。座りやすい位置を見つけてくれるか」


そう言ったら彼女はランスの首に手をおいたり鞍に手をついたりして座り直した。

彼女が動かなくなったところで後ろに乗る。


「じゃあ、行くぞ」


そう声を掛けてランスを駆けさせる。

走らせる寸前に彼女が小さな声でつぶやいた。


「ありがとう」


彼女は確かにそういった。


村を出たのはお昼前だった。

多分10時は過ぎたとおもう。

そろそろ昼飯を食べないと食いっぱぐれてしまう。

だが、位置が中途半端だ。

適当な町がないのだ。

もう少し行けば村があるが、飯が食えるようなところはなかったと思う。

俺は一食ぐらい食わなくても何とかなるが、彼女はそうはいかないだろう。

そんなことを考えながら馬を走らせていたら、彼女が腕に触れてきた。

何だろうと思い、ランスのスピードを落とす。

ゆっくりになったのをみた彼女はこちらを振り向いた。


「どこか止まれるところがあったら止まってください」


少し進むと小川が流れていて、ちょうどいい木陰があった。

そこに止まり彼女を降ろす。

彼女が荷物を取ってほしいと言うので外して渡してやる。

彼女は袋の中から布に包んだものを取り出した。

中には木の板を編んだ籠、それも蓋つきの物をだした。

蓋をとると、中にはパンに肉と菜っ葉を挟んだものが入っていた。


「あの、これ、お昼ご飯に食べませんか」


あの、短時間でこれも用意していたのか。


「わざわざ用意してくれたのか。ありがたくいただくよ」

「あ・・・いえ。家を空けるから、置いといたら傷んじゃうし、帰ってきた時にそんな怪しいものは触りたくないんで。それなら昼食に持っていけばいいかなと、思って・・・」


なんだ、その理由は。

照れながら言っているから、半分は本心だな。

もう半分は・・・。


一つ手に取り口に入れる。

これは、レモンの果汁を使っているのか。

レモンの酸味が心地いい。


「うまいな」

「本当ですか」

「ああ。レモンの果汁がさっぱりとして、本当にうまい」

「口に合ってよかったです」


そう言って彼女も食べ始めた。

見るとはなしに彼女を見ていたら目があった。

今まで、なんで気がつかなかったんだ。

そうか、それなら、彼らの言動も、必要以上な警戒も説明がつく。

だから、ベイグリッツ隊長は俺に迎えに行かせたんだ。


食事が終わると彼女はさっさと片づけをしてランスのそばに行った。

俺は彼女を抱き上げて、馬には乗せずにそばの切り株に座り、彼女を向かい合わせるように膝に乗せた。

突然のことに驚いたセレネは膝の上から降りようとした。

俺は彼女を抱きしめると耳元で囁いた。


「さすがに3度目じゃ誤魔化せないよ、セレネ」

「な、なにを言ってるんですか」

「俺が何も気がついてないとは思ってないよね」

「なんの、ことですか。ちょっと。離してください」


腕の中で暴れるセレネに女を口説くときのように甘くささやく。


「ねえ、セレネ。これだけ密着してると、擬態してる意味がないとおもわないか」

「!」


声にならない声をあげて、セレネは俺の胸に手を当てて離れようとした。

俺はセレネをしっかりと抱きしめてもっと甘く囁いた。


「なあ、意地なんて張らずに素直になれよ」


セレネの頭に顔を寄せて口づけを落とす。


「俺はユーゲリックから聞いてるんだぜ」


セレネの耳たぶを触り・・・耳飾りを外した。


と、同時に土の槍が俺に向かってきた。


「おっと」


俺はすぐに風魔法で盾を作る。

魔法を使うために腕の力が緩んだのを見逃さずにセレネが俺から離れた。


「おいおい。いきなりこれはないだろう」

「あんたが悪いんでしょ。このセクハラ野郎!」

「セクハラ野郎とは心外な。素直じゃないお嬢さんに手っ取り早くと思って取った行動なんだけどな」


会話中にも土の槍がいくつも襲ってくる。

擬態が解けた彼女は光輝く赤銅色の髪をしていた。

さっきまでのラセットブラウンの髪色も似合っていたけどな。

アンバーの瞳には赤い星が散っている。

タラウアカ王家に伝わる色。


俺はつい見惚れそうになるが、土の槍が次々と襲ってくるから気が抜けない。

魔封じの耳飾りを取ってしまったせいか、本当容赦ねえな。

これじゃあ話ができない。

仕方がない、こちらも擬態を解くか。


「なあ。なんで俺が擬態に気がついたとおもう」

「知らないわよ。あんたは私に勝てないんだから、さっさと降参したら」

「勝てないねぇ。セレネはフォングラム公爵家のこと知らないのか」

「何のことよ」

「君と俺は同じ先祖を持っているのにな」

「えっ?」


彼女の攻撃が止まる。

警戒は緩めずに、だが瞳には困惑の色が浮かぶ。

たぶん、親から聞かされたことを思い出しているのだろう。


「私は・・・知らない。そんなの聞いてない」

「まあ、そうだろうな。逃げ出すのに必死でうちのことなんて忘れてたんだろう」

「・・・あんたはどこまで知ってるの」

「何にも」

「うそ!うそよ」

「ほんとだ。ただ、村人の態度や隊長の言葉から推測しただけだ」

「それを信じろと」

「ああ。信じられないだろうから、こっちも見せてやるよ」


俺はそう言って右耳の飾りを外した。

擬態が解けた俺にセレネは驚いた顔をしている。


「なんで・・・それは、タラウアカ国の、あの国の秘された技術で・・・」

「だから言ったろ。同じ先祖を持っているって。アデリーナ姫の嫁入り道具だよ」

「アデリーナって、戦争に負けて人質として連れてかれた、あの姫」

「そう。うちの初代様の奥さんだよ」

「まだ3歳なのに連れてかれた悲劇の姫」

「なんかずいぶんな言われようだな」

「だって、そう聞いたもの。・・・・・違うの?」


最後に小さくつぶやくように聞いてきた。


「初代様はそれはそれはアデリーナ姫を可愛がってな。戦争を続けるのに邪魔だと刺客を送り付けてくる奴らを、楽しそうに返り討ちにしていたそうだぞ。アデリーナ姫がちゃんと成人してから結婚し、3人の子供を成したし、アデリーナ姫が25歳の若さで亡くなると、後を追って死のうとしたって逸話が残っていたくらいなんだぜ」


うんうんと、頷きながらいうと、セレネに胡乱な目を向けられた。


「やっぱりロリコン」

「おいおい。初代様の純愛をロリコン扱いするなよ」

「って、なんであんたがロリコンって言葉を知ってる訳」

「だから、あれだろ。前の記憶持ちが伝えた言葉だろう」

「どうして知って・・・あっ!」

「そう、うちにも居たんだぜ。アラクラーダの神子にならなかった奴がな」


彼女は困ったように俺を見ている。

内心の混乱ぶりが手に取るようにわかるな。


「座って話さないか。腹の探り合いをするよりお互いの事情を話しあったほうが、建設的なことだと思わないか」

「・・・そうね。ここで魔法を使っても倒せないんじゃ意味ないわよね」


そういうと彼女は切り株に座った。

俺は横に腰かけると、呪文をとなえた。

これで、他の奴らには俺たちが見えないだろう。

続けてもう、2つ。

会話を聞かれないための結界と近づいてきたやつがわかる呪文。


「ねえ、それを返してくれない。落ち着かないわ」


セレネは魔封じの耳飾りを指さして言った。

俺は彼女に耳飾りを返すと、自分の耳飾りを耳につけた。


「一つ聞いていい。あなたはなんで擬態してるわけ。それに、それ、魔力封じでもあるのよね」

「ああ、そうだ。理由を話すにはこの国の王家のことが関わってくるが、その前に先にそちらの事情を確認したい」

「いいけど・・・教えてくれるのよね」

「もちろん。それで、セレネの母親がタラウアカ国の第3王女でいいのか」

「・・・そうよ」

「やっぱりか。18年前、タラウアカ国の王宮に逆賊が侵入し、国王一家を惨殺した。その逆賊並びに黒幕を捕らえ国の危機を救ったのが、現国王アラカタル・クエンサー・キュベリック。即位と同時に国名をキュベリックに変えてたよな」

「ええ、そうよ」

「確か、第1王女がバレンクルス国に嫁いでいたが、この惨事をきき、急ぎ帰国の途につき、国境を越えたところで盗賊に襲われて亡くなったんだったな」

「ええ」

「第3王女は当時10歳であの村にいた者たちが守ってタラウアカ国を脱出し、あの村にたどり着いた」

「そう、聞いてるわ」

「ユーゲリック・ベイグリッツっていうのは偽名だろう。あと、武功を挙げたっていう盗賊団の討伐。村の人数の少なさ。追手による村民虐殺でもあったのか」

「それは・・・わからない。いえ、知らされてないわ」


確かにそうだろう。

幼い彼女に知らせるのはまだ早すぎる。

あと3年。

何事もなければ成人してから知らせるつもりだったのだろう。


「そうだな。それは知っている人間に訊いた方が早いな。じゃあ、セレネはタラウアカ王家の事をどこまで知ってるんだ」

「どこまでって・・・」

「この世界は女神が作ったことは知ってるか」

「ええ。ミュスカリーデ様が御創りになられたのよね」

「そうだ。じゃあ聖王家の事は」

「ミュスカリーデ様から加護をいただいた7王家のことでしょう」


ヒュ~

思わず、口笛を吹いてしまった。

さすが、隊長。

そこは伝えてたんだ。


「この世界の国はその聖7家の血を引いている者が、起こしたものだ。加護を持つ者が王となり国を守る。いうなれば、女神の力をいきわたらせるための媒体だ。だが、ここ最近加護を持たない者が王位に就くことが増えてきた」

「えっ」

「まるで、女神の力を削ぎ、この世界を好き勝手しようとしている者がいるみたいだ」

「はっ?」

「タラウアカ王家はその聖7家の一つ。タラウアカという名も女神より与えられた名。それを人間ごときが伺いもたてずに勝手に改名するなどあってはならないことだ。まして、アラカタル・クエンサー・キュベリックは公爵位であったが、王家の血を引いていなかった」

「うそ。そんな・・・」

「だから、彼が王位に就いてから彼の国は荒れてきている」


セレネは俺の言葉に絶句した。

公爵家と云えば、どこの国でも王族が臣下に下ってつく爵位だということは、誰でも知っていることだからだ。


「そんな。ありえない。・・・いえ、ありえるから・・・」

「悪いがそのことは後にしてくれ。で、続きだが、女神の加護を与えられたものにはある特徴がある。知っているか」

「・・・たしか瞳に星のように赤い模様が入ると」

「そうだ。それもどこの血筋か分かるように1個から7個の星がな。で、女神の加護がある聖王家が害されるってことはよっぽどのことだってわかるな」


セレネはしっかりと頷きながらも困惑の色が隠せていなかったのだった。



恋とはなんぞや? の第2話です。


リチャードとセレネの恋模様?

・・・本当に恋模様はどこに行った。


甘いささやきが出たから期待したのに・・・。

なんで、いきなりバトるのよ!

ロリコン・・・でも、いいかなって思ったのに。


それどころか、おい、リチャード。

お前、セレネの秘密をバラすのはいいけど、なんで女神様のことまで話すのさ。

それに・・・聖王家のことまで!


あーもう、親(作者)泣かせだよ。

あんたは。


グスン。

このせいで、話が長くなったんです。


次話でも・・・。

いえ、次話の後書きで会いましょう。


読んでいただきありがとうございました。



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