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恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 1

俺は今、ある家の前にやってきた。

今から、話さなければならないことを思うと、動悸がしてくる。

おかしい。

俺は、もっと豪胆なはずだったのに。

よし、こんな時は深呼吸を!


大きく息を吸って


ス~~~~~~


で、息を吐き出すと


ハア~~~~~~


もう一度、


ス~~~~~~


ハア~~~~~~


念のために、もう一回


ス~~~~~~


「あの~」


ハア~~~~~~


「もしもし~」


まだ、落ち着かないからもう一度


ス~~~~~~


「聞こえてませんか~」


ハア~~~~~~


ん? さっきからうるさいな。

って。


「わあ!」

「あっ、やっと気づいてくれた」


ビックリした。

いつの間にこんなそばに来てたんだ。

全然、気がつかなかった。

いかん、いかん。


「あの~、また、聞いてない」

「失礼な。ちゃんと聞いてるぞ」

「あ、なら、何か御用でしょうか」

「はっ?」

「うちの前に立っていたので」

「うち?」

「はい。うちです」

「えっ!」


ちょっと待て。

じゃあ、今目の前にいるこの娘が隊長の?

えっ、うそだろ。

隊長は12歳の娘がいるっていってたよな。

どうみても、10歳より下だろう。


衝撃の事実に固まった俺に、彼女は顔をしかめた。


「あの~、うちに用でなかったらどいてくれませんか。扉の前に立たれたら邪魔なんですけど」

「ああ、すまん」


俺は呆然としたまま横に退き、彼女を通した。

扉が閉まる寸前に要件を思い出し、扉に足先を入れる。


「何するんですか」

「待ってくれ。君はベイグリッツ隊長の娘さんか」


俺の言葉に彼女は驚いたように、俺の顔を見た。


「お父さんの部下?」

「部下じゃなくて弟子だ」

「弟子?」

「話があるんだ。家に入れてくれないか」


しばらく俺の顔を見ていたが、俺が無理に家の中に入ろうとしないのを見て、扉を開けてくれた。


「どうぞ」


中に入るとすぐの所にテーブルと椅子が4つある。

そうか、ここは庶民の家だったな。

玄関ホールなんてないのだった。


「どうぞ、座ってください」


俺が椅子に座ると彼女は奥の方に行った。

すぐにカップを持って戻ってきた。


「お水ですけど、どうぞ」

「ありがとう」


俺は喉が渇いていたので、一息に飲み干してしまった。

彼女は驚いたように目を丸くすると、もう一度奥にいった。

戻ってきた時には、水差しを持っていた。

俺のカップに水を注いでくれた。

俺はもう一度口をつけると、今度は一口だけにしておいた。


「俺の名前は、リチャード・ヴェンデル・フォングラムという。君の父上に槍術を習っていた・・・いました」

「私はセレネ・ベイグリッツです」


それきり、彼女は黙ってしまった。

まあ、そうだよな。

話しがあるのは、俺であって彼女じゃない。

中々言い出さない俺に焦れたのか、彼女が聞いてきた。


「それで、お話しとはなんでしょうか」

「その・・」

「そうですか。父は死にましたか」


言いにくそうにした俺に、彼女はズバリと聞いてきた。


「やはり、そうなんですね。わかりました」


彼女は淡々とそう言った。

って、おい。

なんだその態度は。


「わざわざ知らせに来てくれてありがとうございました」


彼女は頭を下げた。

けど・・・なんだよ。

自分の父親が死んだってのに悲しくないのかよ。

なんで泣かないんだよ。


「お話しは伺いましたのでどうぞお引き取りください」

「ちょっと待て。俺はまだ何も話してないぞ」

「でも、父の訃報は訊きましたから」

「いや、そうじゃなくて・・・」


なんだ? この違和感は。

まてよ。隊長に訊いた話を思い出せ。

彼女の家族は隊長だけだった。

母親は2年前に亡くなり兄弟はいない。

他に頼れる親戚はいないと言ってなかったか。

今回の魔物の討伐がすんだら、王都でゆったりと暮らせるって言ってなかったか。


そうか、だから彼女は・・・。


「悪かった。君に先に言わせてしまって。きいて気持ちいい話じゃないけど、隊長の最後をきいてほしい。聞きたくないのなら言ってくれ。話さないから」

「・・・やはり死んだのですか」

「ああ。隊長のおかげで、俺は今ここにいる」

「・・・・・」

「やめるか」

「いえ。話してください」


俺は今回の魔物の討伐がどういうものだったのか、彼女に語った。

最初は小さな群れだと思ったこと。

そのうちに、魔物の数が増えて、魔物の種類も増えて、これが魔物の大量発生だと思われるようになったこと。

王国軍だけでなく諸侯も軍を派遣したこと。

幸いにも大量発生のなかでも、小規模ですんだこと。

だが、大きな被害を出さずにすんだことに安堵した時に、別動隊だったのか50頭ほどの魔物の群れが襲ってきた。

どの隊も疲労困憊しており、動けるものはいなかった。

襲われた諸侯の軍は分断され瓦解しかかっていた。

次期領主が魔物の牙に掛かりそうになったときに、単身助けに来たのがベイグリッツ隊長だった。

彼の後を追って王国軍が駆け付け、次期領主は助かった。

だが、ベイグリッツ隊長は致命傷を負ってしまった。

できたのは、痛みを取り除く魔法を使うぐらいだった。


彼女は黙って聞いてくれた。

顔はこわばったままだった。


彼は隊のことを副官に任せること、まだ、魔物がいるかもしれないから警戒をしながら後退すること、などを細かく指示を出すと、俺を呼んだ。

俺に君のことを話し、後のことを託していったこと。


それから、隊長は王都で国葬されること。

隊長は先に王都に送られたこと。

俺は君を迎えに来たことを話した。


彼女は青い顔をして俺が語る言葉を聞いてくれた。


「これから君を王都に連れて行く。支度をしてほしい」

「・・・わかりました。少しお待ちください」


そう言って彼女は家から出て行こうとした。


「ちょっと待った。どこに行くんだ?」

「えっ?しばらく家を空けるから隣の人に話してくるんだけど」

「わかった。俺も行こう」


そう言って立ち上がった。


チッ


俺が立ち上がる椅子の音に紛れて舌打ちの音が聞こえた気がした。


「ん?」

「はい?なにか?」

「あ~、いや?」


気のせいだったかと彼女の後について、歩いていく。

彼女は家を出ると隣の家へと向かった。

隣の住人は俺に胡散臭そうな視線を向けたが、ベイグリッツ隊長が魔物の討伐で亡くなったことを聞くと、顔をゆがませた。そして、王都で国葬をされるため家を空けるから戻ってくるまで家を頼むと告げられると、頷いて彼女のことを抱きしめた。


そして、彼女は家に戻ると支度をすると俺をおいて奥の部屋にいった。

椅子に座り待っていると扉を叩く音がした。

彼女はまだ出てくる気配もない。


「はい。どちらさまですか」

「失礼するよ」


そう言って入ってきたのは40代後半くらいの男性と他3人の男に隣の家の女性の計5人。

俺は椅子から立ち上がった。


「私はこの村の長をしているオラクル・スタンリーといいます」

「俺はリチャード・ヴェンデル・フォングラムです」

「話はカリッサから聞きました。ユーゲリックが亡くなったと。惜しい人物を亡くしました」

「はい。師匠にはもっといろいろ教えてもらいたかったです」

「師匠?ですか」

「あー、はい。槍術を教わってました」

「そうか。・・・あいつも立派になったんだな」

「人に教えることができるようになっていたなんて・・・」

「成長したものねぇ」


なんか・・・その・・俺の知るベイグリッツ隊長と違うような?

いったい隊長はどんな人だったんだろう。


村長と名乗ったスタンリーが俺の顔を見てこんなことを言いだした。


「セレネを王都に連れて行くと聞いたのですが、彼女一人を王都にやるのは心配なので、このハウアー・クラッシェを一緒に行かせたいと思うのですが」


・・・申し出としてはおかしくはない。

おかしくはないが・・・なんだ?

カンが告げている。

これは気をつけろと。

さっきも隣の女性・・・カリッサといったか。

俺のことを胡散臭そうに見るのはいいが、警戒してるのが感じられたな。

ならば・・・。


「そう思う気持ちはわかりますが、私も王命で来ておりまして、時間がないのです。彼女の支度がすんだら、急ぎ王都に向かわなくてはいけません。失礼ですが、そちらの方は馬になれていらっしゃいますか。あと、こちらの馬は最上の軍馬です。馬になれていても、私の馬についてこれるとは思えません」

「確かにそうかもしれませんが・・・」

「村長。私なら大丈夫です」


セレネが奥から姿をみせるとそう言った。


「だがな、セレネ。私達は心配なんだよ。幼いお前を一人王都にやるなんてな。戻ってこれるかわからないだろう」

「大丈夫よ。ちゃんと帰ってくるから」

「用が済みましたら、ちゃんと送り届けますから」

「だが、やはり心配だ。そうだな、では、こうしてはどうだろうか。セレネはフォングラム騎士と先に行きクラッシェが後を追いかけるということで。そうすれば、帰りはフォングラム騎士の手をわずらわせることもないでしょう」

「そうね。それがいいと思うわ」

「おお、そうだ。それならセレネも安心だろう」

「申し訳ないが王都に着いたらどちらに行けばいいか教えていただけませんか」


ふ~ん、そうきたか。

そんなに彼女が・・・ねぇ。

まあ、妥当っちゃ妥当か。


「それならば王都に着いたらフォングラム公爵家まで来ていただけますか。家の者には伝えておくんで」

「えっ、フォングラム公爵家?」

「はい。私は現フォングラム公爵家当主、フィリップ・アルフォンス・フォングラムの嫡男リチャードです。フォングラム公爵家の名に懸けて、セレネ嬢の道中の安全は保証しますよ」

「フォングラム公爵家嫡男・・・」


あ~ららら。

皆して顔色変えたらまずいことがあるって言ってるようなもんだろう。


「フォングラム公爵家の方だったんですね。すみません。無礼な態度をとってしまって」


おんや~。一番最初に立ち直ったのはセレネちゃんか~。

詮索したいけど、またにして、っと。


「いや、気にしないでくれ。俺は師匠の弟子としてここに来たのだから。支度は出来た」

「はい」

「じゃあ、急がせて悪いけど行こうか。では、王都に来るのならフォングラム公爵家に来てくださいね」


彼女は大人たちに頷いている。

大人たちは「気をつけてな」とありきたりな事しか言わない。

俺は指笛を吹いた。

俺の愛馬であるランスがすぐに駆け寄ってきた。

皆ランスを見て驚いている。

それはそうだろう。

ランスは他の馬より一回りは大きい体躯をしている。

これで、さっき俺が言ったことの意味がわかっただろう。


「大きい」


セレネがランスを見上げている。

鞍の後ろに彼女の荷物を括り付けると、彼女を抱き上げて鞍にのせた。

・・・?

また、違和感を感じたがすぐに彼女の後ろに飛び乗った。

手綱を掴む時にやわらかいものに触れた気がした。


「それじゃあ、いってきます」


セレネは見送りの人たちに挨拶をした。

村を出るまではランスをゆっくり歩かせた。

この村は20軒ほどしか家はない。

ベイグリッツ家は村の一番奥の家だった。

村を出るまで数々の視線を感じた。

この村はせいぜい100人いればいいほうだろう。

いや、視線の感じだと50人もいないかもしれない。

どちらにしろ、()は調べようがないしな。

チラリと家々を見ながらそんなことを考えた。



お爺様と、お婆様の結婚話です。

・・・おかしい。

恋愛要素が出てません。


大体タイトルからしておかしいです。

「恋とはなんぞや?」ってなに?


書いていて予定より長くなってしまいました。

まず、どこで切っていいのか分からない。

おかげで5000字近くいっちゃいました。

それが、今の時点で7話まで続きます。

・・・まだ書き終わってないし・・・。


えっと、なんか補足あったかな?

う~ん。

あっ、これはリチャード目線のみです。

セレネは・・・ややこしくなるからいらないね。


では、次話で会いましょう?


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