学園生活は忙しい ~セルジアスの非日常~
今日は我がファランクルス学園の入学式が行われる日だ。
そして、弟のアーマドが今日からこの学園に入学してくるのだ。
私は3学年にして生徒会に所属している。
なので、手伝いとして、さっきから、新入生の名前確認で忙しい。
それなのに、まだ、アーマドが来ない。
本当に何をしているのだ、あいつは。
アーマドが現れたのは、それからしばらくしてからだった。
それも一人じゃなくて何人かと一緒だった。
「あっ、兄者~」
お・ま・え・は!
兄者はやめろと家族から言われただろうが~。
だが、ここでそんなことが言えるわけがない。
とりあえず、アーマドを睨みながら、にこやかに応対することにした。
「新入生のみなさんですか。入学おめでとうございます。確認をしますのでお名前を教えていただけますか」
ああ、アーマドの顔が引きつった。
はいはい。お説教はあとで姉上がするから、今はまだそんなにビビらなくていいから。
一番前のお前が名乗らないと後ろのみんなが名乗れないだろう。
と、アーマドの後ろの少年が、何かをささやいた。
ハッとした、アーマドが名乗りをあげる。
「アーマド・エトワード・フォングラムです」
「はい、アーマド・エトワード・フォングラム、っと。ではこちらをお持ちください」
隣で、メラニー・クラインベック・エックハルトが名簿に印をつけて、席次表を渡している。
次に紺色の髪の少年が進み出た。
「エグモント・ヨードル・エアフルトです」
続いて、鮮やかな緑色の髪の双子。
「マーカス・ベルドルット・アルンストです」
「ソフィティア・クレメテル・アルンストですわ」
最後に濃い金髪に、少し吊り上がり気味の目をした女の子。
「ミリアリア・ロドリアス・ルートーガーですの。よろしくお願いいたします、フォングラム先輩」
軽く会釈をしながら挨拶をしてくれた。
さすが、ルートガー公爵家のご令嬢だ。
「セルジアスでいいよ、ミリアリア嬢。姉上と紛らわしいでしょ」
「わかりました。セルジアス先輩」
うん、うん。
女の子はいいね。
それに引き換え・・・。
「えっ、アーマドのお兄さん」
「そう。僕の自慢の兄上だよ」
紺色の髪の少年、エアフルト伯爵の子息にアーマドが答えている。
おい、こら。
・・・って、あれ。
エアフルト?
もしかして・・・。
「エグモント君、君はもしかして、6年のアロイス先輩と4年のダミアン先輩の弟なのかな」
「兄たちを知っているのですか」
「ああ、お世話になっているからね。そうか、アーマドの友人か」
「兄上。寮が、一緒なんです」
「・・・寮がね。弟のことをよろしく頼むよ。エグモント君」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
「ああ。君達、そろそろ講堂の方に行った方がいいよ」
「はい。では、失礼します」
「「「失礼します」」」
「兄上、またな~」
アーマド、姉上の教育的指導! 確定だな。
彼らが離れると、メラニーが話しかけてきた。
「あれがあなたの弟ねぇ~」
「・・・あれって言わないで」
「なんかねぇ~。で、ワザと?」
「・・・まあ、ご想像におまかせで」
「そう。ワザとなのね」
「メ~ラニ~さん?!」
「大丈夫よ。私は何も言わないわよ。そこまで馬鹿じゃないつもりよ。でも、あの瞳の色だもの無駄に警戒されないためにはその方がいいんじゃない」
「・・・」
「大変ね。公爵家って」
「君は? 上に行きたいって思わないの」
「だから、私はバカじゃないから。それに今の立場は気に入っているし」
「姉たちのおもちゃが?」
「おい」
「おっと、すまん」
「どちらにしろ、伯爵家の私じゃ何もできないから」
「どの口がいうのやら」
「あのねぇ・・・っと」
「新入生の方ですか。入学おめでとうございます。確認をしますのでお名前を教えていただけますか」
「あ、はい・・・・」
それからもう何人か新入生の確認作業が続いた。
人もまばらになりチェックの入っていない名前があるか見ていく。
「彼で、最後だったようよ」
「じゃあ、欠席なしの、遅刻もなしということだな」
「そうね」
「中に行くか」
「・・・あなたはどこまで知っているの」
「なにが」
「とぼけないで。でなけりゃ、あんな言い方・・・」
「・・・エックハルトの名の意味を知っていると言ったら。そういう君こそ、うちのことを知ってるようだよね」
「私はフォングラム公爵家がどういう家か知っているだけよ」
「・・・ほんとおしいね。君が男の子だったらっていう将軍の気持ちはよくわかるよ」
「あなたは、これからどうしたいの」
「なにが?」
「・・・ほんと、くえないんだから。で、このままでいくの」
「う~ん。どうしよっかな。アーマドも入学したし、姉上もいい顔してなかったし~」
「・・・本気だすの。今まで手を抜いてたんでしょ」
「やっぱり君にはわかってたか。でも、手を抜いていたなんて、心外だな。全力でやってなかっただけなんだけどね」
「それが・・・って、私が言わなくてもわかっているのよね」
「まあね。今年は少し本気でやることにするから。」
「いいの。一応王子に遠慮してたんじゃないの」
「いやー、この間陛下から、あいつにもう少し危機感を持たせてくれって言われちゃったから」
「そう、陛下から」
「まあ~、あいつとバカやるのは楽しいんだけどね」
「嫌ってないのよね」
「? なんで嫌うの。ちょっと単純でおバカだけど、愛すべき性格してるじゃん」
「ほんと、あなたって・・・」
「なにかな?」
「いえ、いいわ。ついでにもう一ついいかしら」
「俺に答えられることなら」
「・・・あなたは本当にその色なの?」
「・・・はぁ~?」
「いえ、いいわ。今のは無しで」」
「ねぇ、なんで、そんなこと思ったの?」
「他意はないのよ。カテリア様とアーマド君に比べてあなたの色が薄すぎる気がしただけだから」
「面白いこと言うね。俺の髪の色は父上と一緒なのにね」
「でも、王家の血が他の公爵家より濃いじゃない。だったら王家の青をあなたが持っていてもおかしくないはずだわ」
「いやいや。確かにリングスタット王家には、濃いブロンドに王家の青と呼ばれるラピスラズリ色の瞳が産まれやすいけど。でも、それなら、あいつだって王家の青じゃないじゃないか」
「だけど」
私はメラニーに左手を出し言葉を止める。
「やめよう。これ以上は不敬罪になるよ」
「・・・そうね」
気落ちしたように片付ける彼女を見ながら、私は思いついたことを言ってみる。
「ねえ、メラニー。君って婚約者っているの」
「はぁ~? 突然何をいうのよ」
「で、いるの」
「・・・いないけど」
「じゃあ、私と婚約しない」
「い・や・よ」
「即答ですか」
「もちろん。私は温かい家庭を作りたいんだから」
「やっぱ、だめか」
「・・・なんで私なの」
「面白そうだから」
「・・・はぁ~。そんな理由じゃ駄目でしょう。特に、あなたは」
「え~、ダメかな」
「ダメに決まってるでしょう。少なくともあなたは侯爵家以上と婚姻を結ばなければならないのだから」
「それって上の押し付けじゃん」
「でも、待って。なんであなたに婚約者がいないの」
「それは、あいつにいないから」
「えっ、カテリア様と婚約してないの」
「ああ。あいつが駄々こねてな」
「そんな、まさか。今、発表しないと、大変なことになるじゃない」
「?・・・なんかまずいの?」
「あ・・・いえ・・・」
メラニーは視線をそらして名簿を持つと歩き出した。
気になったけど隣に並んで歩いていく。
ふと、さっき会った彼女のことを思い出す。
ミリアリア・ロドリアス・ルートーガー。
濃いめの金髪に、エメラルド色の瞳をした、女の子。
そして、2年にいるあいつの婚約者。
見た目に反しておとなしそうに見えた。
礼儀正しかったし。
そうだな。
あいつは素行が悪いから、もしかしたら彼女との婚約は無くなるかもしれないな。
うん。それなら、彼女・・・。
いいかもしれないな。
じゃあ、彼女も観察対象に入れておくかな。
アーマドと一緒に居たくらいだから、また会う機会はあるだろうし。
さ~てと、陛下の許可はもらったことだし、覚悟しやがれ、レイフォード。
お待たせしました。
第3弾です。
・・・・・・・・・・・
ごめんなさい。
いや、確かに セルジアスとミリアリアの出会い編 なんだけど。
甘くない。
全然、甘くない。
というか、誰、あなたは? メラニーさん!
そして、セル。
あのね、違うでしょ。
君がミリアリアのことをどう思ったのかが、メインであって本編に絡むあれこれをなんで、言ってんの!
止めようよ。
というか、魔術師長~。 ヴィクトール。
お前はどこに行った。
えっ、レイフォードと共に、カテリアとべアトリクス王女に捕まってたって。
もう、ダメじゃん。
さて、補足・・・ではなくて、ネタ・・・いえ、設定ばらしを!
本編でも重要な「王家の青」
そうなんです。
リングスタット王家の特徴は、濃いブロンドと王家の青と呼ばれるラピスラズリ色の瞳 なのです。
で、本編ではおじい様であるリチャード様だけなんですね。
王家の青を持っているのは。
アーマドも濃い瞳の色をしているけど違います。
王家の青にはもう一つ特徴があるからです。
これだけだと、学園生活がわからないので、また続きを書きます。
書くなら・・・書ければ・・・書きたい。
です。
では、次はじい様とばあ様の話になります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。