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恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 18

俺は呆れを込めてアルフォード陛下を見つめた。


「あれですよね。クロフォードの危機感を煽ろうとしたんですよね」

「やっぱりリチャードにはわかるか」

「あいつもバカじゃないと思いたいけど、今は頭の中がお花畑になっていたでしょう。今回のことを正しく理解できたとは思えませんけど」


俺の言葉に陛下は黙ってしまった。

そうか、相変わらずなんだな。


「それで、そのホルストのことはどうするんですか」

「もう、成人しているが臣下にはまだ下らせない。今はいろいろな勉強をさせている。様子をみて学園に入学させる」

「アリシアと同い年ですよね。娶せますか」

「それは、ホルストの方が断るだろう」

「何故です。強固な後ろ盾ができますよね」

「彼は自分の立場をよくわかっている。自分が火種になりかねないこともな。賢い子だよ。2人で話した時に自分の存在がリングスタットに害を成すようならいつでも処分してほしいと言われた。それならば、クロフォードを支える存在になって欲しいと言ったら、王子にそこまでの器量があるのでしょうかとな。確かに今のクロフォードでは難しいだろうな。だが、フォングラム公爵家嫡男のリチャードがいるから大丈夫だと伝えておいた。あとで会ってやってくれ」

「後ろ盾はどうします」

「いらないと言われた。ホルストは自分の身をおとりに使うつもりのようだ」


おいおい、まだ、15の子供が何を考えている。

久々にユーリック並みの奴に会えたのか。


「わかりました。あとで会ってみます。で、クロフォード他のお花畑集団はどうしてます」

「リチャード、お前な・・・。まあいい。学園を卒業してから彼らはそれぞれちゃんと仕事をしているそうだ。クロフォードも王子としての職務に励んでいる。リントナーの娘もお妃教育に音を上げることなく、励んでいるそうだ」

「ええ。もっと浮ついた娘かと思いましたが、意外と根性はあるようですわ」


王妃様も頷きながら話してくれた。


「それはよかったです。学園でのあいつらは見られたものではなかったですからね。本気で、殺ってやろうかと思いましたよ」

「・・・思いとどまってくれてうれしいよ、リチャード」

「それで、どうします。クロフォードにも会った方がいいですよね」

「まあ、そうして欲しいがな」

「わかりました。セレネ、クロフォードをからかってやろうぜ」


にこやかにセレネにそう宣言をしたら、セレネには溜め息を吐かれ、大人たちは顔を見合わせられて、妹達には呆れた視線を向けられた。


「おう、そうだ、リチャード。娘達も外に嫁がせるからな。よろしく頼むぞ」

「はっ?えっ?次はフェルセス公爵家に王女の誰かが嫁ぐんじゃないの」

「それだと、何かあった時にお前に王位を渡せないだろう」

「何言ってるのさ。クロフォードはちゃんと仕事してんだろ。大丈夫じゃないのか」

「・・・そう、思いたいが、だが今回のことを考えると、クロフォードにも何か仕掛けられているのかもしれん。あの娘も罠の一つかもしれないのだ」

「それなら、婚約を許可しなければ」

「許可しなければよかったと言いたいのだろう。だがな、気持ちはそう簡単に変えられないだろう。それにどういう訳か、お前たちに釣り合う歳の公、侯爵家令嬢がいないだろう。近くても8歳は離れている。お前たちより年が上の令嬢たちはもう婚姻を結ばれている。本当なら、ハンメール伯爵かデルフォート伯爵の令嬢と誼を結んでくれればよかったのだがな」

「伯父上・・・」

「今更言ってもしょうがないな。今の言葉は忘れてくれ。クロフォードにハッパを掛けるのはいいが、セレネのことを気付かせるなよ」

「はい。それはもちろん」


よし、許可が出たから、クロフォードで遊んでやるか。


そうして、話が終わると陛下方と父母妹達は部屋を出ていった。

セレネとソファーに座り、クロフォードたちをどうからかうか打ち合わせする。


まだ、セレネの顔色が悪い。大丈夫といっていたがかなりの強行軍だったし、国王と会うから緊張していたのだろう。

そっと頬に手を当てて、瞳を覗き込む。


「心配しなくても、私は大丈夫よ」

「そんなこと言わずに俺に心配する権利をくれ」

「変な事言うわね。もう、私はあなたのものなのに」

「本当かセレネ。俺はお前を生まれ育った村から連れ出したんだぞ」

「でも、そのおかげで私は生きていられるのよ」

「ともに生きてくれるか」

「あなたこそ私でいいの」

「セレネがいいんだ」

「リチャード様」


そうしてセレネに口づけをしようと顔を近づけた・・・。


バン!


すごい勢いで扉が開いた。


「何をしてるんだ、リチャード!」


扉の方を見るとクロフォードが立っていた。肩で息をしている。その後ろにはリントナー伯爵令嬢が目を丸くしているのが見えた。

セレネが怯えたように俺にしがみついてきた。そのセレネを抱きしめてセレネの髪に顔を埋めてニヤリと笑う。

笑いをおさめて真顔に戻ると、クロフォードの方を向いた。


「何って、セレネを口説いてたんだけど」

「く、口説くって。まだ、こども・・・」

「だからなんだ。お前だって彼女を口説いてたじゃないか。散々俺に愛する人がいるのはいいことだと言ってたじゃないか」

「だからってこども・・・」

「あら、素敵な事じゃない。今まで女性に見向きもしなかったリチャード様が、やっとお相手を見つけたのよ。祝福してあげなくっちゃ」


おい、笑いをこらえるのが大変だぞ、お前ら。セレネ、俺の陰で笑うんじゃない。肩が震えてるのがバレるぞ。


そばに来たリントナー伯爵令嬢がセレネに向かって話しかけた。


「初めまして、私はレイチェル・ダステン・リントナーというの。仲良くしてくれるとうれしいわ」

「は、はじめまして。セレネ・ベイグリッツといいます」


セレネが俺の陰から顔をのぞかせて挨拶をした。


そして、ソファーに向かい合わせに座る。もちろん、クロフォードとレイチェル嬢が隣り合って座っている。セレネを気遣う振りをしながら、2人に見せつけるように甘い雰囲気をだしていく。

それを見て、クロフォードは顔をしかめている。レイチェル嬢はニコニコと微笑ましいものでも見るように俺たちを見ていた。


ふう~ん。本当に学園にいた頃と違うようだな。少しは周りが見えるようになったか。

だけど、あれのことをユーリックが何か言ってたよな。乙女ゲームがどうのって。確か、ヒロインが攻略対象者と恋愛をするとか何とか。で、学園でのレイチェル嬢の状態が逆ハーとかいってたっけ。えーと、攻略対象者を全員もしくは複数侍らすことだっけかぁ~。

まあ、今はクロフォードの婚約者になったことだし、他の奴らは周りにいないよな。

うん。大丈夫だろう。


と、思ったのは甘かったな。俺もまだまだだぜ。


「クロフォード、そちらのリントナー伯爵令嬢と婚約が決まったんだってな。おめでとう。先を越されたよ」

「リチャード。お前、祝ってくれるのか」

「もちろんじゃないか」

「だってお前、学園にいた頃は俺たちのことを冷たい目で見ていたじゃないか」


そりゃそうだろう。時と場所を考えずに、そちらのお嬢さんに愛を囁きまくる集団なんて、邪魔者以外の何ものでもないだろう。


「それは、実は羨ましかったんだよ。お前は愛する人を見つけたけど、俺にはそんな人は見つけられなかったからな」

「まあ~、そうだったんですの。クロフォード様、私の言ったとおりでしょ。リチャード様はクロフォード様を嫌ってなどいないと」

「ああ、そうだな。レイチェル。君の言ったとおりだ。リチャード、お前のことを冷たい奴だと思っていたなんてな」

「それにリチャード様は愛を見つけてらしたのよ。祝福して差し上げなくては」

「おお、そうだよ。セレネ嬢とのことを詳しく教えてくれないか。どうやって知り合ったんだ」


・・・やっぱり、駄目か。おい、クロフォード。今回の功労者であるベイグリッツ隊長を国葬するから、セレネは王都にきたんだろうが。


俺は俯いたセレネを気遣うように肩を抱く。そして、静かな目でクロフォードを見つめた。


「クロフォード、俺たちが会ったのは、俺が彼女の家を訪ねたからだ。理由は・・・わかるだろう」

「あっ・・・」


俺の言葉に2人は顔をこわばらせた。


「すまない。その、お前が愛する人を見つけたと思ってうれしくて」

「ごめんなさい。無神経なことをいったわ。許していただけないかしら」


二人とも本気ですまないと思っているようだ。

それなら・・・。


「ふたりに頼みたいことがあるんだが」

「何でも言ってくれ」

「私で力になれることなら何でもするわ」

「じゃあ、俺たちの味方になってほしい。俺たちは愛し合っているが、セレネは騎士爵の娘だ。俺たちが結婚するためには、その身分差をついてくる奴らがいるだろう。それにセレネはまだ12歳。もうすぐ13歳になるとはいえ年齢差も格好の攻撃対象になるだろう」

「攻撃って?」

「レイチェル。リチャードはフォングラム公爵家の嫡男だよ。その夫人に納まりたい輩はいっぱいいるさ。そんな輩にとってはセレネ嬢は邪魔者でしかないだろう」

「まあ。愛する二人を引き裂こうというの」

「そういうやつも出てくるだろうってことさ」

「もちろん、私達はおふたりの味方ですわ」

「そうだぞ。安心しろ。セレネ嬢の後ろ盾になってやる」

「ありがとう、クロフォード、レイチェル嬢。とても心強いよ」


その後は少し他愛ない話をして、2人は部屋から出て行った。


しばらくして、ホルストが部屋にやってきた。

伯父が言う通り、本当に勿体ない奴だ。今日は軽い挨拶程度で終わったが、また話をする約束をした。

そうして、母と妹達が部屋に戻ったところで王宮を辞した。


5日後討伐隊が王都に戻ってきた。

翌日に今回の討伐で亡くなった者達の葬儀が行われた。約束通りベイグリッツ隊長の遺体は二ナモリ村に送られることになった。王都に埋葬はしないが慰霊碑が作られることが決まっている。

3日後、俺たちはまた隊長の遺体と共に二ナモリ村に向かった。

13日後に村に着き隊長の遺体をクリシュナ王女の墓の横に埋葬した。

そして、俺たちは王都に戻ったのだった。



それから、6年後の1月。この日は晴天に恵まれた。

今日は俺とセレネの結婚式だ。

他国に嫁いだ妹達も今日の日のために夫と共にリングスタットに帰って来ていた。


あれから今日まで様々なことがあった。

まず、クロフォードとレイチェル嬢。あの日から約1年後に2人は結婚した。レイチェル嬢は王子妃として及第点をもらえたからだ。まあ、伯爵家令嬢だったし礼儀作法については文句はでなかったようだし。足りなかったのは王子妃として外交するための知識や、王家のしきたりだったから。


次にホルスト。彼は学園を卒業してエルセルム公爵になった。野心ある貴族たちに妻の座を狙われているが、どこ吹く風と受け流し、一生独身を通すつもりのようだ。そして、何故か俺は彼に慕われてしまった。俺の姿を見かけるとしっぽを振って付いてくる。・・・は、言い過ぎか。でも、兄のように慕われるのはまんざらでもないな。おかげで、クロフォードの奴が、ホルストと張り合うんでいい迷惑だ。まあ、それも、クロフォードの方が出来る奴なんだよな、とか、おだてて仕事をさせるようにしたから、効率が上がってクロフォード付きの奴らに感謝されたけど。


妹達はそれぞれグレスエッジとヴァルミンコスの公爵家に嫁いだ。俺が外交で各国を回っていた時に意気投合したやつらだ。

まず、グレスエッジのシュトロメル公爵家のニコラウス。彼はグレスエッジでの俺の外交が終わったら、俺に付いてリングスタットに来たんだ。家に着いて出迎えたアリシアに一目惚れして、その場でプロポーズしやがった。アリシアは目を白黒させていたが、学園を卒業するまで待って欲しいと言って、それを受け入れたニコラウスと楽しそうに文通していた。卒業式の後に開かれたパーティーで改めてプロポーズされて嬉しそうに頷いていた。

ロデリアの方はもっと楽だった。いや、こっちの方がめんどくさかったが。やはり、ヴァルミンコスのミッタ―マイヤー公爵家のヨーゼフも、外交を終えて帰る俺についてリングスタットに来た。この時ロデリアは学園を卒業して2年が経とうとしていたときだ。その間にロデリアにはひっきりなしに見合いの話が舞い込んでいたそうだ。いい加減嫌になっていた時に現れたのがヨーゼフだ。ヨーゼフに一目ぼれしたロデリアが猛アタックしたんだよな。だけど、ヨーゼフの方が引き気味で、これは無理かなと思ったのだが。結果は上手く云ったんだけど、一度国に戻ったヨーゼフがフォングラム公爵家に来るまでに、ロデリアの妊娠が発覚。父親の名前を言わないから、身分差がある相手との子だと噂になり、バカ野郎どもが子供の父親になってやると何人も言ってきた。そこに戻ってきたヨーゼフがアルフォード陛下の前で、ロデリアにプロポーズしたから、その後の騒ぎは思い出したくないほどになったよな。まあ、陛下が両国の友好の懸け橋になるように。と言ったから収まったけど。


それからキュベリック。あそこの国は3年前に国王が代替わりした。いや、代替わりじゃないな。王太子と国王が相次いで亡くなり、王位を継ぐ者がいなくなった。話し合った結果、王妃の甥が王位に就くことになったんだ。そう、ディンガー公爵家だ。やはり副官の主はディンガー公爵だった。先の政変の時にアラカタルに疑いの目を向けていたが、証拠を掴めなかったそうだ。あの後、2ヶ月後に彼と会談をしてこちらのカードをすべて見せたら、協力を申し出られた。国王たちを排除するために動いてることを話したら、その後は自分ではなくて息子を王位に就けたいと言った。自分はあの時に何も出来なかったから、自分が就くべきではないと言って。セレネのことはこのまま秘密にすることになった。彼は最初渋ったが女神様からの言葉と長年にわたる陰謀の話に最後には頷いてくれた。そしてこの時、彼の3歳になる孫と、俺たちの(まだ生まれていない)娘の婚約が決まった。


今、俺はリングスタットの主神殿にいる。もうすぐアルフォード陛下がセレネを連れてくる。

花嫁のエスコート役を父もやりたがったが、花婿の父親なんだからと陛下に押し切られていた。

まあ、陛下がやりたがるのも仕方がないんだよな。4人の王女様方は全員他国に嫁がれる。いや、末姫のチュリア様以外もう嫁がれている。チュリア様も来年には嫁がれることが決まっているが、陛下は姫様方の婚姻の儀に出るわけにはいかないから。代わりにうちの両親が付き添っていたからな。


神殿にパイプオルガンの演奏が流れ始めた。これもユーリックが前の世界の物だといっていたっけ。

扉が開いた音が響いた。俺は扉の方を振り返った。セレネが陛下の腕に手を預けて歩いてくる。

白いドレスに白いベールを被っている。長いベールの裾を持つのは今年5歳になる俺の妹(・・・)だ。

もう1人レグルス公爵家の令嬢と共に一生懸命に歩いている。

セレネが俺の隣に来て、陛下から俺の腕に手を移した。

俺はセレネの手を引いて一歩祭壇に近づいた。


今日ここに来る前にフォングラム公爵家の礼拝堂で、家族とホルスト、ユーゲリック、マリベルが立ち会う中、本当の姿と本当の名で誓いの言葉を交わしている。


そう、これからも偽りの日々は続いていく。

俺の、いや、俺たちの戦いはまだ続く。

だが、だからこそ、この幸せは守り抜くと誓おう。


偽りの姿と偽りの名で、俺たちは皆の前で永遠の愛を誓ったのだった。



18話です。


終わりました。

本当に終わりましたからね。

今話は、最後にフラグ回収のために詰め込んだので、いつもより長くなりました。

それでも、言葉をとばしてるんですよ。


ただ、なんだろう。

結婚式で終わったのに、おめでとう~。お幸せに~。 になってない。


仕方ないんだけど。リチャードの戦いは続くし・・・。

でも、孤独だった初代ミルフォードに比べたら、理解者や協力者は多数いるんで、それほど苦しい戦いにはならない・・・のかな。


そこら辺は、前にも書きましたが、外伝に移行して書いていきたいと思います。


ここまで、お付き合いいただきましてありがとうございました。


恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ は、これにておしまいです。


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