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恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 14

目の前に座るユーリックが呆れたような視線を向けてきた。

うん、わかる。わかるがな、その目はやめろ。

俺もなんでこうなったか、内心頭を抱えているのだからな。


「それで、どうしてそういうこと(・・・・・・)になっているのか、説明していただけるんですよね」


え、笑顔が黒い・・・じゃなくて、怖いからやめてくれ。

俺の膝の上に座っているセレネがビクッとしたからな。

おい、マリベル、エゴン。肩を震わせて笑うな。

ほんとに後で覚えてろよ。


「わかってる。館に着いてからのことを話すから。簡単にいうと、フォンブルクについたら討伐隊を追い抜いてたんで、いろいろ手配をして、翌日に討伐隊が到着。一日休んだ後フォンブルクを出発したと」


と、冷気をまとった視線が俺に突き刺さる。


「そんなことを聞きたいわけではないと、リチャード様ならお判りですよね」


いや、だからさ、分かってるってば。だが、ここで言えと。

どんな拷問だよ。

ああ、セレネ。そんな不安そうに見上げないでくれ。

俺は理性を保てる自身が無いんだから。


「そこ!見つめ合って砂吐きたくなる世界を作らない。ご自分で話す気がないのなら、マリベルさんとエゴンさんからある事ない事聞きだしますよ」


チッ、仕方ないか。

俺はちょっと投げやりに言葉を言い放つ。


「だから、館についてセレネにプロポーズして、セレネも受けてくれたんだ」

「それで」

「そんだけ」

「そんなわけないでしょう。マリベルさんとエゴンさんを護衛に選んでいる時点で、何か考えがあるのですよね。まさか、私達に言えないような酷い計画なんですか」

「そんなわけあるか。・・・なあ、言わなきゃダメか」

「往生際が悪いですね。私はセレネ様の事情は分かっているつもりですが、2人にも知っておいてもらったほうがいいのではないですか」


確かにそうだよな。マリベルには話したけど、エゴンにはまだだ。

それじゃあ、フォンブルクを立つ日の朝からか?

いんや、違う。王都の両親との会話からか。


なので、まずは両親に話した事を言うと・・・。

セレネ、お前までそんな目で見ないでくれ。

俺、もう、言ったよな。先に言ったよな。

それで、協力してくれるって言ったよな。


俺の様子にセレネがニッコリ笑った。


「ご両親に話したなんて聞いてないんだけど」


あっ、そこですか。


それから、プロポーズの翌日の・・・。



昨日のように部屋を出ると、マリベル侍女長が待っていた。


「おはようございます、リチャード様」

「おはよう、マリベル。少し話があるから付き合ってくれ」


自室に戻りマリベルも部屋に入ると、結界を張る。


「マリベル、今日からセレネ付きの侍女になって、王都まで一緒に行ってもらう」

「はい。承知いたしました」

「あまり時間がないが引き継ぎは大丈夫か」

「ご心配には及びません。誰が侍女長になっても大丈夫なように鍛えておりますから。そうですね、取りあえずシェスに任せましょう。後日ご当主様から後任をお決めいただくでよろしいかと存じます」

「そうか、では、そのように頼む」

「それで、セレネ様のお立場は」

「もちろん俺の妻だ。だから、マリベルにはセレネの身の安全を一番に行動してもらいたい。俺たちに許可を求めなくていいから、必要なら何をしても構わない」


俺の言葉にマリベルがとても嬉しそうに笑った。


「それは・・・とても楽しそうなお役目ですこと」

「それから、一族に通達しろ。今4歳から来年生まれる子供の中から俺たちの子供付きを5人選ぶ。俺たちの子供が成人したらキュベリックに輿入れすることになる。それに付いて行かせるから、そのつもりで鍛えるようにと」

「まあ。ではセレネ様はタラウアカ王家の血を引く方ですのね」

「ああ。だから、セレネと子供の安全を最優先にするように。それからキュベリックにいる者にも計画を早めるように伝えろ。ついでにディンガー公爵家のことも調べて欲しいとも」

「わかりました。うふふふ。やっとお役に立てるのですね。ウィリアム様に救って頂いたこの命。フォングラム公爵家のために、いえ、リチャード様のためにいかようにもお使いください」

「マリベルにはセレネのそばにいてもらわなくてはならないからな。お前に命を投げ出されても困るから」

「うふふ。わかっておりますわ。我が一族をお救いくださったリチャード様の御命令ですもの。どんなことをしてもセレネ様はお守りしますわ」

「一応15歳になったらセレネには学園に入学してもらうつもりだ。学園に行ったら俺の目が届かない。それも覚えといてくれ」

「学園には何人連れて行けるのですか」

「本当なら騎士爵の娘であるセレネには侍女は連れて行けない。だが、俺の命の恩人で救国の英雄の娘だ。フォングラム公爵家が後見につくのだから、2人は連れて行けるようにするさ」

「では、学園で働く者も用意しておきましょう」


俺は楽しそうに笑っているマリベルの顔をみる。


「お前もそこまで思ってくれなくてもいいんだがな」

「あら、心外ですわ。分かっておりますでしょう。私がどれ程感謝しているのか。あのままなら裏の世界でいいように使われて、最後にはぼろ雑巾のように捨てられるしかなかった私達に、希望をくださったのですのよ。それだけでなく、普通の幸せを与えてくださったのですわ。私は只の女として妻になる喜びを、子供を産む喜びも感じることが出来ましたわ」

「だが、先に逝かれる悲しみを与えてしまったぞ」

「それこそ、今更ですのに。あのまま隷属が解けなければ、親、兄弟の死に目には会えませんでしたもの」

「そうなんだろうがな」

「ウィリアム様。私は幸せですのよ。あなたにまたお仕えできることも、あなたに命令をしていただけることも。私のせいでウィリアム様がお亡くなりになってしまわれたのですもの。助けて頂いたお返しもできないうちにお別れしなければならなくて、それも私のせいなのに死ぬことも許してくれなくて。あなたがまた生まれてくると聞かされていなければ、ウィリアム様の命令でも死を選んでおりましたもの」

「マリベル、それを誰にも話してないよな」

「もちろんですわ。私とウィリアム様の秘密ですもの」

「リチャードだぞ。マリベル」

「わかっております。リチャード様」

「じゃあ、頼んだぞ」


マリベルはお辞儀をして出て行った。

俺は溜め息を吐き出した。ほんと、何やってたんだよ、俺。

いくらあの時マリベルを助けて怪我をして死にそうになって後追いしかねないからって、俺が死んですぐに生まれる子が俺の生まれ変わりなんて言うかなー。

おかげで物心ついたころに引っかけでウィリアムの名前を言ってバレちまって。

まあ、おかげでセレネのことを安心して任せられるんだが・・・。


ここからはセレネは馬車で移動することになる。御者と馬車の護衛を用意しないとな。

護衛の隊長はエゴンに任せることにしよう。



ということを、ウィリアムうんぬんを抜かして話した。

エゴンは「セレネがタラウアカ王家の血を引く」と聞いて頬を引きつらせた。

あれ。やっぱり先に話しとかないと駄目だったか。


それから、討伐軍の移動はなんの異常も変化もなく進んだ。

3日経った今日、ユーリック達が合流するまでは。


ユーリック達が追いついたのは午後の休憩の時だった。後方からくる騎馬の一団に、討伐軍に一時期緊張が走ったが、フォングラム公爵家の者だとわかり、すぐに俺のもとに連れてこられた。

各軍の隊長が集まってきて報告が行われた。


あの討伐で狩り残しがないか捜索していたフォングラム公爵軍が、20頭程の魔物の群れを発見した。近くの街や村に警告をしたが、討ち果たす前にある村が壊滅したこと。魔物はフォングラム公爵軍とたまたま村に立ち寄っていた傭兵たちに討ち取られたが、傭兵達は半数が死に半数は酷い怪我を負ったこと。村人はほとんどが魔物に殺されてしまい、村として機能しないから生き残りはフォンブルクに怪我が治るまで送られたこと。などだ。


隊長たちの顔色はとても悪かった。

もちろんセレネのいた村ということもあり、彼女も話を一緒に聞いた。

青い顔をしている彼女に痛ましい視線が向けられ、彼女はマリベルに連れられ馬車に戻った。

それから少しして出発となったのだった。


そして、宿泊予定の街に着き、宿屋に入り部屋に落ち着き・・・今に至ると。


「いくつか言いたいことはありますが、事情はわかりました。わかりましたが、何故お二人が一緒の部屋を使うのかの説明がまだですが」


その言葉にセレネが不安そうに俺を見てくる。

そうなんだ。フォンブルクを出て2日共、俺はセレネと一緒の部屋で寝ているのだ。


1日目の宿屋で最初セレネはマリベルと一緒の部屋で寝たんだ。

だけど、夜中にセレネが悲鳴を上げて飛び起きた。俺たちもセレネの悲鳴に駆け付けたが、彼女は泣くだけで何があったか言おうとしなかった。

結局俺が抱きしめていたら、やっと落ち着いて寝てくれて、また俺のシャツをギュッと掴んで離してくれなくて、なので、俺の部屋に連れていって一緒に寝たんだ。

昨日の夜は、やはりマリベルと一緒の部屋にしたのだが、眠れないらしく俺の部屋にやってきたんだ。

涙をたたえた目で見上げられて、俺にどうしろと?

しばらく話をしながら抱きしめていたら、眠りだしたから部屋に運んで寝かせて、俺が離れようとしたら目を覚まして泣くんだぜ。そうしたら、抱きしめて寝るしかないじゃないか。

だから、もう、今日は最初から一緒の部屋に入ったんだ。


と言ったらユーリックの奴、深々と溜め息を吐きやがった。


「自業自得ですね」

「分かっているから言うなよ」

「いいえ、分かってませんよね。せっかくの計画がパアになりかねないのですよ。それをあなたは!」

「こうなるとは思わなかったんだ」

「確かにそうですが、一言私に相談してから行動に移していればこうはならなかったと思いますね」


そばにいなかった奴に何を言えというんだ。


「そばにいなかったのにと、思いましたよね。リチャード様。ですが、連絡は出来たのですから相談しない時点でこうなることは目に見えていたと思います」


おまえなぁ~、心を読むな。

相談しても同じだったとおもうぞ。実行するのは俺なんだから。


「まあ、今更言ってもしようがないので、ここまでにしておきますか。それで、フォングラム公爵家に於いてセレネ様はリチャード様の未来の妻でよろしいですね」


おまえ、選りにも選って「しょうがない」じゃなくて「しようがない」と言ったか?

俺、お前の主だよな(泣)。


「未来の妻じゃなくて、れっきとした妻なんだけど」

「リチャード様。それは今は公にはできないでしょう。本当に分かっておりますよね」


チッ 

判って言ってるに決まってるだろう。

最後の悪あがきでそう言ったんだ・・・。

ゲッ。

やべー。ユーリックの目が半眼になってやがる。

そろそろ真面目にしないと本気で怒りだす。


「セレネ様の心の拠り所を折られたのですから、ちゃんと代わりになって責任はお取りください。ですが、王都に着くまでは手出ししないようにお願いします」

「もう、今更だと思うけど」

「周りのことをお考えください。あなたがロリコンと噂されようがかまいませんが、軍紀を乱さないでください。それから、マリベルさんは隣の部屋を使って、そこにセレネ様といてください。エゴンさんは他の部隊にさりげなく、セレネ様が父親を亡くしたことに胸を痛めていたところに住んでいた村に起こったことにすごくショックを受けていたと、伝わるようにしてください」

「おい。さっきの話を聞いていただろう」

「聞いていましたよ。だから駄目押しです。今夜もセレネ様が悲鳴をあげて泣き出されれば、リチャード様と一緒にいても何も言われなくなりますから」

「おまえな~」


セレネが俺の服をギュッと掴んできた。もう、涙がこぼれそうだ。


「この状態のセレネと離れろというのか」

「ああ、それなら、すぐ一緒の部屋になれますね」


こいつは~!!!


「セレネ様。これもリチャード様と一緒にいるためですので、少し我慢してくださいね」


にっこり笑ったユーリックに何も言えない俺たちだった。



14話目です。


今話はお笑い要素が多めでしたね。

あと、リチャードと初代ミルフォードの間の転生した人物の名前が出てきました。

それから、マリベルの重い過去も。

新しい人物もでてきました。エゴン。彼も一癖あります。

・・・リチャードが絡んだ人は何かしら抱えてる人が多いからなぁ~。


えー、今話は番外編にしましたが、「恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~」を番外編から独立させることを考えています。

理由はこれが予想以上に長くなったことと、この話の決着が本編に絡みそうで絡まないことがわかりましたので。プロットを書き足していて・・・。あれ、女神事情はセリアちゃんが知らなくてよくない?というか、それが入ると、本編が変な方向にいくよね!

と、いうことになりました。

この続きと王都編(そんなに長くはしないつもりです。あのバカップルと楽しいご両親との会話)を書き上げて、過去の話が終わったら独立させようかな。まだ、書き上げるにはしばらくかかるけど・・・。


それでは、楽しんでいただけたのなら、幸いです。

また、次話で、会いましょう。



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