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恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 12

俺は礼拝堂を出るとセレネのいる客間に戻った。

部屋にはマリベル侍女長が待っていた。


「ご苦労さん。あとは俺が見るよ」

「リチャード様もお疲れではないですか」

「これくらいなんともないさ」

「ですが、今夜は私が見ても」

「泣かしといてそのままはないだろう」


マリベルが視線をそらして溜め息を吐いた。


「それでこちらで寝られるのですか」

「セレネは温かいぞ~」

「リチャード様!」

「おいおい、何もしないぞ」

「・・・わかりました。では、あとはよろしくお願いします。・・・あまりおからかいになりませんように」


そう言って礼をして出て行った。

なんでわかったんだろう。もちろん明日の朝のセレネの反応で遊ぶに決まってんだろ。


石を取り出してユーリックと連絡を取る。

ユーリックからは順調に事が運んだと返事がきた。

目撃者も無事に奴らに返せたそうだ。

まだ少しは疑っているようだったが、何もなくなった村を見れば納得するだろう。

村に残っていた家財道具は放置しておくわけにいかないそうで、処分するそうだ(という建前で新しい村に運ぶことになっている)。

あと、彼らの潜入も滞りなく進んでいるらしい。あいつ(・・・)がどう出るのかがカギだが、今のところ不審な動きはないらしい。監視につけたあやつが何とでも対処するだろうが・・・。

こちらはフォングラムの館に着いたことを伝えて通信を切った。


居間の灯りを消し寝室の方に行く。

セレネは俺のシャツを抱き込んで丸まるように寝ていた。

マリベルが綺麗にしたのか涙の跡はみえなかった。

そっと掛け布団をめくりセレネの隣に入り込む。

セレネと向かい合うように横になる。


しばらくじっと眠っているセレネを見つめる。

綺麗な顔してるよな。まつ毛長いし。唇なんて淡いピンクだぜ。・・・今は暗くて色まではわからないけど。寝てるときの方が幼く見えるよな。身長は・・・年の割に低いのか?多分145センチくらいだろう。おれが185センチだから40センチ差か。

・・・いかん。なんかいけないことしている気分になってきた。

俺はそのまま目を閉じると眠ったのだった。


顔に何かやわらかいものが触れている。俺はそれに頬ずりした。

腕の中の温もりを抱きしめる。

う~ん。温かいなぁ~。

その温もりが動いた。俺の腕の中から出て行こうとする。

出て行かせないようにもっと抱きしめた。


「ねえ、離して。ちょっと苦しいってば」


ん?誰かの声がする。俺は温もりを離したくなくて抱きしめて頬ずりをした。


「もう、リチャード。いい加減にして」


俺は目を開けた。目の前にはセレネの顔。俺は向かいあったままセレネを抱きしめていた。

・・・うん。見なかったふりをしよう。


「ちょっと、寝ないで。起きてよ」


目をつぶったら焦ったようなセレネの声がした。


「もう少し~このままで~」

「なによ。起きてるじゃない。なら、いい加減離してってば」

「チッ」


仕方がないから舌打ちをして離してやる。

起き上がったセレネは自分が抱えていたものと、上半身裸の俺を見て、顔を真っ赤にして口をパクパク開けた。俺は右手を頭の下にやり横になった姿で、ニヤニヤとセレネを見上げてやる。


「な、なんで」


やっとそう言ったが続きの言葉が出てこない。


「いやー、夕べは激しかったよな(泣き方が)」

「うそ。わたし・・・」

「うん。離してくれなくてね」

「・・・なにかしたの」

「えっ、だから~(動くために)脱ぐしかなくて~」

「いや~!」


いや~、かわいい反応してくれちゃって。シャツを脱いで寝ただけのことはあるな。

やばい涙目になってきた。これ以上やるとマリベルがうるさい。

俺は身体を起こすとセレネの頭に手を置いた。


「わ~るかった」

「ひどい。からかったのね」


睨む顔もかわいらしい。昨日までの表情を忘れてきたような顔と大違いだ。

これならもう大丈夫だな。


俺はベッドから出るとセレネに手を出した。

セレネがシャツを渡してくれたが、俺のほうを見ないようにしている。

もう一つも成功かな。俺のことを男として意識してくれたようだ。

俺はシャツを着ながらセレネに話しかけた。


「セレネ、今日は移動は無しだ」

「えっ?移動しないの」

「今日討伐隊がこの町に戻って来るからいろいろやることがあるんだよ」

「そうなんだ」

「それでな、セレネにはつらいかもしれないけど、隊長と対面してもらう」


セレネはハッとして顔をこわばらせた。


「わかったわ」

「じゃあ、すぐに誰か寄越すから」

「あっ、待って。ねえ、まさかドレスを着ろなんて言わないわよね」


あー、昨日のドレスね。


「大丈夫。あれは張り切った侍女たちが夕食用に着せただけだから。今日はもう少し普通の服にするように言っておくよ」

「あれって、誰かの服でしょ。勝手に着て良かったの」

「まあ、もうちいさくなって着れない服だったから大丈夫だよ」


そう言って寝室をでた。ソファーに置いておいたシャツを手に持って部屋を出て行く。

部屋をでたところにマリベルがやってくるのが見えた。

笑いかけるとヤレヤレという風に肩をすくめられた。


「おはようございます、リチャード様」

「おはよう。セレネがもう少し貴族らしくない服がいいといってたぞ」

「・・・まあ。奥ゆかしいのですね」

「分相応を知ってるだけだと思うぞ」

「そうですね」

「だが、これからはこういう生活に慣れてもらわないとならないから、おとなしめの服で見繕ってくれ」

「はい。わかりました」

「じゃあ、よろしく頼む」


俺は自室に寄って服を着替えると執務室に行った。すぐにエルンストがやってきた。

エルンストに廃村の家の修理を頼む。

朝食を食べ終わると俺は街に出て行った。

あれこれしているうちに討伐隊が戻ってきた。

皆をそれぞれの宿舎に案内させ、死者を神殿に運び込んだ。

あの討伐で亡くなった者は氷漬けにされて運ばれているのだ。


屋敷に人をやりセレネを呼んだ。やってきたセレネと隊長を対面させる。

セレネは隊長の顔を見て縋りついて泣いた。

しばらく泣いた後、屋敷に送って行かせた。


夕方まで手配に奔走してやっと屋敷に戻った。

夕食の時にセレネと会ったがやはり気落ちしてしているようだ。

食事がすむと、部屋に戻ってしまった。


俺は温室にいくとバラを1本とってきた。

それから母の部屋に行き、宝物庫から目的の品を取り出す。

それを持ってセレネの部屋を訪ねた。

扉を叩き声を掛ける。


「セレネ、リチャードだ。入ってもいいか」

「ええ、どうぞ」


部屋の中に入るとセレネは窓のそばにいた。外を見ていたようだ。

俺の方を向くと首をかしげる。その姿もかわいらしい。

俺は彼女のそばに行くと片膝をついた。

後ろに隠していたバラをセレネに差し出した。


「セレネフィア・フィーネ・タラウアカ王女。私と結婚していただけませんか」


バラに手を伸ばしかけていたセレネの動きが止まる。

突然のことに驚いたのか小さく口が開いている。


「な、なにを、言っているの」


唇を震わせながらセレネは言った。


「私と結婚してほしい」


もう一度言うと、セレネは頬を赤く染めた。

だけど、視線が定まらない。俺のことをチラリとみては右に左に動いていく。

ゴクリと唾を飲み込むときいてきた。


「冗談じゃないのよね」

「もちろん、本気だ。一生セレネを守らせてくれ」


セレネは戸惑いながらもバラに手を伸ばして触れた。


「いいの。私で」

「セレネがいいんだ。返事は」


セレネがバラを掴んだ。


「はい」

「ありがとう」


俺は立ち上がるとセレネを抱きしめた。


2人でソファーに移動する。2人で並んで座った。セレネは俺に身体を預けるように座っている。

少し胸が痛む。これから俺が彼女に告げる言葉は甘くないものだから。


「セレネ、聞いて欲しいことがあるんだ」

「なにかしら」


セレネが俺を見つめてくる。信頼しきった眼差しに目を伏せたくなった。

俺はやさしく見えるように微笑んだ。


「今から話すのはセレネには酷い話だと思う。だけどこれが一番いい手だと思うんだ」

「何が言いたいのかしら」


セレネは不安そうに俺のことを見ている。

たった一晩で表情が豊かになったものだ。


「今までセレネにいろいろ話してきただろう。数年前から、いや、数百年前から起こっていることを」

「ええ、覚えているわ」

「タラウアカ国に起こったことについてもそうだが、守られているはずの聖王家におこってはならないことが起こっているよな。それでな、今回の二ナモリ村の襲撃事件を見ていて気がついたことがあったんだが、奴はベイグリッツ隊長がパドロフ公爵子息だということは知っていたが、セレネのお母さんがクリシュナ王女だということは知らないんじゃないかということだ」


セレネは小首をかしげた。


「どういうこと?」

「そう考えたのは、今回のことがタラウアカ国の事件から18年も経っていたことだ。もし気付いていたのなら、もっと早くに襲ってきていただろう。それと、今回襲撃しようとした彼らのこともだ。村に来た彼らはタラウアカ王家派で、キュベリック派ではない。彼らの背景を探らないとわからないが、隊長が神官、ひいては神殿に近い関係で、この世界のことを知っていた。そういう何かしらキュベリックにとって都合の悪いことを知っている奴らが選ばれたんだと思う。彼らが知らなくても知ることのできる立場とか、家族にそういうものがいるとか」

「えっと、待って。じゃあ、彼らは襲撃に成功しても失敗しても消されるの」

「筋書きじゃそうだろうな。だが、村を魔物に襲われて襲撃者の半数は死んだが残りはフォングラム公爵家に連れてかれてしまった。ここで、下手に手を出してうちに不信感を抱かせる訳にはいかない。それに多分奴らはこの任務の失敗を理由に彼らの家族を殺すつもりだったと思う」

「それは大変じゃない。こうしてはいられないわ」


セレネが勢いよく立ち上がった。俺はセレネの手を引っ張り座らせた。


「だから、大丈夫だって。もう、彼らの家族の元には助けが向かってるから」

「でも、どうやって」

「ユーリックが言ってたろ。ランスのファミリーを使うって。ランスの一族に協力してもらって死人になった奴らは一足先にキュベリックに向かってる。もちろん彼らと分からないように擬態させてな。もともとあの国に送り込んでいた、うちの間諜にも協力させるから大丈夫だ」

「それをユーリックさんはあの場で・・・」

「な、奴はすごいだろ」


セレネに茶目っ気たっぷりにいいながらウィンクをした。

はぁ~、こっからが本題だよな。


「それでな、セレネ。俺はアラカタル・クエンサー・キュベリックが許せない。奴やその子供が王位にいるのがどうにも我慢できないんだ。だから奴らを排除することにした」

「何をするの」

「まず、アラカタルには死んでもらう」

「暗殺するの」

「そんなことはしないさ。だが、自主的に退場してもらう」

「それで?」

「奴らには不摂生な生活をしてもらって、寿命を縮めている」

「不摂生な生活?寿命を縮めるって」

「ユーリックが知る知識の中に、自堕落な生活をおくっていると命を縮めることになることがあるときいてな。奴のそばに甘い言葉で誘惑する奴を送り込んである。ついでに国の中枢を掌握してもらって、奴らに替わる国王も選ばせているし」

「・・・あなた、本当に何をするつもりなの」

「いや、だからさ、健康を害した奴らにいなくなってもらって、まっとうな奴を国王に据えて、その男の子供に俺たちの子供を嫁がせるつもりなんだけど・・・」

「はぃ?はっ?はあ~。待って、なんでそうなるわけ。私達の子供?何を言ってるの」

「いろいろ考えた結果それが一番確実に出し抜けるんだ」

「出し抜くって」

「ひどいことを言ってるのはわかってる。本当はお前をタラウアカ王家の姫としてあの国に帰してやりたかった。だけどそれじゃ駄目なんだ。今回のことを仕掛けた奴の裏を掻くには、奴に気付かせずにタラウアカ王家の血を返すしかないんだ。それにはお前に早く子供を産んでもらって、俺たちの子供ではない状態で嫁入りさせるのが一番なんだ」

「それって・・・。もし最初の子が女の子じゃなかったらとか考えないの」

「それは大丈夫だろう。タラウアカ王家は女の方が産まれやすいからな」


セレネは唖然とした顔をしている。

まあ、怒りだされるよりいいか。


12話です。


プ、プロポーズ!!

良かった!

普通にプロポーズしてくれました♡


って、信用してなかったのか、わたし(作者)。


えーと、前話がセレネに酷かった(?)かな、ということでフォロー・・・じゃないだろう!リチャード!

遊ぶな。

頼むから、女の子にはもう少しやさしくしてしてあげてください。

でないと、あとで逆襲されるぞ。


さて、恒例の補足。は、なんかあったかな?

あっ、あれをした方がいいのでしょうかね。

アラカタルとその子供を王位から落とす方法。

ぶっちゃければ、高カロリーで運動なんかしない生活をさせて、成人病にしちゃおうって話です。

この世界では食事事情によりあまり太った人はいません。

だからね、成人病に関する知識ってないのよね。

病気や怪我はある程度魔法で治せるけど、太って脂肪がついたからってそれが身体に悪いと認識してなければ・・・いえ、太るのは体質だと思っているから、魔法で治すようなものとは思ってないからね。


なんで、この方法を選んだかというと、もしまた反乱を起こして王権が替わると、国民にも諸外国にも外聞が悪いことになります。なるべく秘密裏に事を運びたかったので、王族の悪評と健康不良でご退場を願おうかと・・・。


さて、次話でこの、「恋とはなんぞや?」終わります。

最後に、すごいカミングアウトが待ってます。

こうご期待!(笑)


それでは、次話で。会いましょう。


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