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恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 11

あまりこんなことはしたくなかったが、マリベル侍女長にまで言われちゃあな。

なので、セレネがいる客間に向かった。

扉をノックすると中から応えがあった。


「セレネ、俺だけど入ってもいいか」

「はい。どうぞ」


扉を開けて中に入るとソファーから立ち上がるところだった。

セレネは淡いピンク色の夜着を着ていた。とても似合ってかわいらしい。

セレネは俺を見ると途方に暮れたような顔をした。


「何か不足のものはないか?」

「・・・・・の」

「ん?悪い。聞こえなかったからもう一度言ってくれるか」

「だから・・が・・・すぎるの」

「へっ?」

「もう!だからね、こんな豪華な部屋じゃ落ち着かないの。さっきのドレスやこの服だって」


やべ~。笑いそうになったわ。まあ、そうだな。今までの生活と違いすぎるわな。

だけど、これからはこれが普通になるんだから慣れてもらわないとな。


「それは悪いな。だけど我慢してもらうしかないな」

「私なら使用人と同じ部屋でいいわよ」

「そう言う訳にはいかないな。セレネは大事なお客様なんだから」


セレネは黙って考え込んだ。考えがまとまったのか俺の目を見てきた。

・・・セレネ、男にそんな視線を向けるのはだめだぞ。

下心のある男にはいい口実になっちゃうぞ。


「私のことはお客様扱いしなくていいわ。だから、わっ」


セレネを抱き上げるとベッドのそばにいき乱暴に落とす。


「きゃあっ。いきなり何するのよ」


俺は身をおこそうとするセレネの上に乗り細い体を抑え込む。


「セレネは悪い子だね。そんな目で男を誘うんだ」

「なっ。誘ってなんかいないわ」

「そうか。無意識に誘ってたんだ。昨日は俺も我慢したけど、ここならいいよね」


そう言ってセレネに顔を近づけて左耳にキスをする。


「やだ、やめてよ。なんでこんなことするの」

「あれ、頭がいいのにわかってない。じゃあなんでセレネは擬態を解いた後に、年齢の擬態をやめたの」

「ロリコンじゃないって言ったじゃない」

「うん。あのままならこんなことしなかったよ。だけど、今のセレネは年相応より大人びて見える。とても12歳には見えないね」


耳元に囁きながら合間に髪や額にキスをしていく。セレネは俺の拘束を解こうと力を入れるが体格差で抵抗らしい抵抗が出来ずにいる。そっと横目に伺うと涙が目に浮かんできた。よし、もうひと押し。


「やめてってば。あなたを吹き飛ばしてやるわよ」

「できるならどうぞ。大丈夫、やさしくしてやるから」


そういってセレネのささやかなふくらみに左手を乗せる。セレネはビクリと体を強張らせると動かなくなった。そっとセレネの顔を見ると目から涙が溢れていた。

俺は一つ溜め息を吐くと身体をおこした。そして、セレネを抱き起こすと胸に抱きしめた。そっと髪を撫ぜるがセレネはされるがままだった。


「悪かった。俺が悪かったから泣くなら、声をあげて泣いてくれ」


そういったら涙を溢れさせたまま俺を見上げてきた。


「セレネ。泣きたかったら泣いていいんだ。我慢しなくていい。お前は、母親を亡くした時にタラウアカ王家の姫として村の奴らに対する責任を引き継いだんだろう。だから、気丈に振る舞っていたんだよな。だがな、お前は父親を亡くした12歳の子供なんだ。父親のために泣くのはおかしなことじゃない。だからな、泣いてやれよ。ベイグリッツ隊長のために」


しばらくは涙を溢れさせながら無表情で俺の顔を見上げていた。俺の言葉を理解するにつれてセレネの顔が歪んできた。


「お・・とう・・さん。おとう・・さん。おとうさん、お父さん、お父さん!うわああぁーん」


セレネは絶叫するように叫び、それから大声をあげて泣き出した。

俺は抱きしめたままずっと髪や背中を撫ぜていた。

どれくらいそうしていただろうか。

気が付くとセレネは泣き疲れて眠ってしまっていた。


静かになった部屋にノックの音が響く。


「入れ」


俺の声にマリベル侍女長が入ってくる。


「あと、任せていいな」

「はい、リチャード様」


セレネをベッドに寝かせて離れようとしたら、服を掴まれていた。離れさせようと指に力を入れてみたが、白くなるほど握りしめていたので、諦めてシャツを脱いだ。


「あらあら。まあまあ」


マリベルの楽しそうな声に睨んでおく。

自室によりシャツを着ると、エルンストを呼ぶ。


「どうなさいましたか、リチャード様」

「今から親父と連絡をとるから、警戒しといてくれ」

「わかりました」


エルンストは緊張した様子で周りに指示を出しに行った。

俺は屋敷の中の礼拝堂に行った。

中に入ると礼拝堂に設置されている魔法陣を動かして結界を張る。

そして胸元から石を取り出し王都に向けて意識を飛ばす。

王都の屋敷にたどり着くと反応が返ってきた。


「あら、リチャードなの」

「お久しぶりです、母上」

「怪我をしたと聞いたけど大丈夫なの」

「はい。幸いにも動けなくなるほどの深手は負わずにすみました」

「そう。よかったわ」


安堵している雰囲気が漂ってきた。


「それで、今は領地の館からなのね」

「そうです」

「連絡をしてきたということは訊きたいことがあるのね。じゃあ、少し待ちなさい。場所を移すわ」


本当にこれだけでわかってくれるんだからな。


「さてと、もう少ししたらフィリップも帰ってくるわ。私で分かる事なら答えるけど」

「ええ、いくつかありますが、いいですか」

「もちろんよ。こちらに戻るまで待てないのよね」

「はい。それではまず、今回の討伐のことはどういう風に伝わってますか」

「魔物は討伐されて、王国軍、諸侯軍共に大きな被害は出なかったそうね。ベイグリッツが亡くなったのが大きな痛手かしら」

「やはりそういう風に伝わりましたか」

「他に何かあったの。あっ、待って。今、フィリップが来たわ」

「・・・リチャード。無事か」

「はい。父上。そちらも息災ですか」

「ああ、こちらはあいかわずバカばかりを相手にしているがな」


相変わらず辛辣だな。


「そうですか」

「で、どこまで話した」

「リチャードから討伐の結果がどう伝わったか聞かれて答えただけよ」

「そうか」

「父上、実は魔物の中に普通では考えられない動きをするものがいました」

「詳しくは戻ってきてから訊くがどんな動きをしたのだ」

「討伐が済んだと安堵した時に、別動隊の50頭ほどの魔物の群れが襲ってきました」

「不意打ちか」

「はい。激しい戦いの後でしたので、どの隊も疲労困憊しておりました。それにやや後方にいた我がフォングラム公爵軍に襲い掛かってきましたので。あいつらに迂回して襲うなんて知能はないでしょう」

「やはり女神様がおっしゃっていたとおりか」

「そう考えるのが妥当だとおもいます」


通信の向こうで溜め息を吐いているのが聞こえてきた。


「では、次か」

「はい。まあ、これも関係があるのですが。・・・親父、お袋。先に教えときやがれ」

「リチャード、言葉使いが悪いよ」

「なんで、ベイグリッツ隊長や、あの村のことを教えといてくれなかったんだよ。もう少しでやばいことになるところだったんだぞ」

「何かあったのか」


俺はベイグリッツ隊長に頼まれてセレネを村に迎えに行き、その後のあれこれを話した。

通信の向こうで動揺している気配が伝わってくる。

そして、村を捨てて、別の廃村に移動させていることを話すと、安堵の溜め息が聞こえてきた。


「よくやった、リチャード。もちろんその廃村は使ってくれて構わないよ。人をやって彼らが来る前に家の修理はやっておこう」

「わかった。あとで、手配するように言っておく」

「あちらはユーリックに任せれば大丈夫だね。こちらからは下手に動かない方がいいだろう」

「まあな。あとで様子を聞いておくから、必要な物があれば誰か人をやるよ」

「それで、リチャード。ベイグリッツのお嬢さんは無事なのでしょうね」

「もちろん、傷一つついちゃいないさ。・・・ただなぁ~」

「あなた何かしたの」

「ん~、さっき泣かせた」

「泣かせたって、何をしたの」

「いや、な。感情をどっかに忘れたみたいな無表情で白い顔したお嬢さんを周りが心配して、俺にどうにかしろっていうからさ」

「そ・れ・で!」

「お袋、怒んなよ。セレネの立場も考えればわかんだろ。あいつは王家の義務をはたそうとしてたんだ。そこに感情を入れちゃいけないのわかるよな。だから押し殺して、押し殺しすぎてどうしていいかわかんなくなってたんだ。だから、手っ取り早く泣かしただけなんだ」

「そう、ね。あの子はいくつになったの」

「12歳だよ。隊長の言葉が間違ってなければ来月には13歳になるはずだ」

「そう」


やはりお袋はクリシュナ王女と会っていたんだな。もちろんセレネとも。

なら、話は早いか。


「父上、母上。許可していただきたいことがあるのですが」

「改まった言い方をしてどうしたんだ」

「私がセレネフィア・フィーネ・タラウアカ王女に求婚することをお許しください」

「いったいどうしたんだ。そんなことを・・・」

「まあ~。求婚だなんて。なあ~に。一目惚れでもしたの」

「盛り上がっているところを悪いのですが、そんな色っぽい話ではありません」

「あら。何を言ってるの。今まで女の子に見向きもしなかったあなたが言い出したのよ。色っぽい話になるでしょう」

「まあ、待ちなさい、フェリシア。リチャードの話を聞こうじゃないか」

「でも、あなた」

「本当に期待を裏切って悪いのですが、セレネとの結婚は敵を欺くためでもあります」

「どういうことだ」


親父、声を低めないでくれよ。これから言おうとしてるのはひどいことだってわかってるからさ。


「先に訊きたいのですが、クロフォードとリントナー伯爵の娘はどうなりましたか」

「あ・れ・は・な、自分のわがままを通しやがったぞ」


父上、あなたも言葉が・・・。


「そうですか。それなら、なおさらセレネとの結婚は好都合ですね」

「何のことかしら、リチャード。わかるように説明なさい」


母上もクロフォードの結婚にお怒りでしたか。


「えーと、詳しくはそちらに行ってから説明しますが、セレネの立場はユーゲリック・ベイグリッツ騎士爵の娘ですよね。あいつが結婚しようとしているのが伯爵家の娘。そして王位継承権1位のあいつと2位の俺。その俺が公的には騎士爵の娘と結婚すると言い出したらどうなりますか」

「うむ」

「あら」

「それにキュベリックのことも上手く行けば出し抜けるかと」

「何をするのだ」

「セレネには悪いけど早くに子供を産んでもらう。その子をキュベリックに嫁にだす」

「あなたは何を言い出すの。セレネと結婚するのはいいわよ。でもその言い方だと成人前に子供を産ませるつもりなのね」

「もちろんひどいことを言ってるのもしようとしてるのもわかってる。だけど今回の事を見て思ったんだ。奴はベイグリッツ隊長のことは気付いたけど、クリシュナ王女のことは気付いてなかった。だからセレネがタラウアカ王家の血を引いていることに気がついていないはずなんだ。今ならそうと気付かれずにかえせるんだ。その場合その子は俺たちの子供にはできない。父上たちの子供にするか、どこかの家に養子に出すかするしかない。でも、それでタラウアカ王家の血が戻るなら、それなら・・・」


思い出すのは小さな女の子。やっと歩けるようになったところだった。できることならその成長をそばで見守りたかった。

物思いに沈みそうになったとき頭の中に声が響いた。


『話はききました。リチャード、私が許します。あなたの思う通りになさい。・・・ごめんなさい。あなたに・・背負わせてしまうわね。でも、忘れないで。あなたたちは私の代弁者なのよ。だから、思った通りに行動していいのよ。それは間違っていないのだから』

「「「女神様」」」


それだけを伝えると女神様の気配は消えてしまった。


「わかったわ。でも、ちゃんと了承を得なさいよ」

「はい。それで、母上にお願いが」

「何かしら」

「玉紅石の首飾りと指輪をいただけませんか」

「・・・あれかしら。そちらに置いてある物よね。アデリーナ姫の時から代々フォングラム公爵夫人になるものに渡される物の1つよね」

「はい」

「いいわよ。あれはタラウアカ王家の色ですもの。相応しい人がいるのならその人に渡すべきね」

「ありがとうございます」

「それでは、続きはこちらに来てからだな」

「はい。では、失礼します」

「ああ。まあ、がんばれよ」


そう言って通信が切れた。



11話です。


えーと、言うことは・・・無しにするわけにはいかないよね。

あははは、はぁ~。

すみません。もう少し上手く襲う振りができるはずだったのですが、メモしなかったら忘れてしまって・・・。


この、「恋とはなんぞや?」はリチャードとセレネの結婚話です。

これを書くにあたって、2つ入れようと思っていた部分があります。

1つはプロポーズ。・・・理由はひどいけど、王道のプロポーズになる予定です。

もう1つが今回のセレネを泣かすこと。

親を亡くしたのに泣けない女の子を書きたかったのに、背景が酷いですね。

ちょっと言葉足らずな気もしますが、これが今の私の精一杯です。


あっ、そうそう。

リチャードがセレネに「そんな目で誘うんだ」といったのは、身長差のため上目使いになったからでした。


それから、リチャードの両親が出てきました。

最初は出る予定ではなかったけど、それだと王都に戻ってのあれこれまで書かないといけなくなるので、ミニシリーズと言えなくなるのであんな感じになりました。

・・・フォングラム公爵家って性格が・・・。

いえ、やめておきます。

書くとフラグになりそうだから。


それから、リチャードが余計な設定を増やしてくれました。

最後にそれもちゃんと明かします。


それでは、また。次話で。


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