恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 9
今話はちょっと重く、気分が悪くなる表現が入っています。
ソフトに表現したつもりですが、気分が悪くなった方がいたら、すみません。
前半を飛ばして、後半だけ読んでいただいてもいいですよ。
さて、と。そんじゃあ、どう話すかな。
あまり本当のこと話すわけにもいかねえしな。
「なあ、本当に訊きたいか」
「訊かなきゃわからないでしょ」
「う~ん」
「ねえ、そんなに言いたくないのなら言わなくてもいいわよ」
「いや、言いたくないわけじゃないんだけど・・・」
「なんでそんなに煮え切らないのよ」
「・・・とりあえず結界張らしてくれ」
そういって俺は結界を張った。
「んじゃあ話すが、本当に気分悪い話だぞ」
「もう、分かったから。それで」
「えーと、タラウアカ国とリングスタット国が戦争をしていたってのは、知ってるよな」
「ええ」
「本来なら戦が起こるはずはなかったって知ってるか」
「そうだったの」
「ああ。まあ、これも何らかの作為ってやつだったんだろうがな。主戦派が暴走して戦になったんだ。だけど、うちの初代様とタラウアカ国の王弟が尽力して休戦させたんだ」
「タラウアカ国が負けたわけじゃないのね」
「ああ。なんでそうなってるのかわからねえが、リングスタットでもその戦はうちの勝利になってたぜ。それで、講和のために婚姻を結ぼうと言うことになったんだ。ただ、このとき両国に釣り合う年齢の者がいなかったから、3歳のアデリーナ姫とリングスタットの王弟で21歳の初代様が婚姻することになったんだ」
ここで一度言葉を切った。カップに水を出し一口飲む。
セレネは首をひねって考えている。
あーあ、気が重いぜ。
セレネが俺を見た。
わかってるよ、続きだろ。
一回息を吐き出すと続きを話し始めた。
「それでな、アデリーナ姫が輿入れしてきたときに問題がおこってな」
「問題?」
「ああ。リングスタットに来たアデリーナ姫の姿が3歳に見えなかったんだ」
「?・・・どういうこと?」
「アデリーナ姫の姿は6歳くらいに見えた。だが、セレネと同じタラウアカ王家の色を持っていたからな。こっちは混乱したがアデリーナ姫と初代様の言葉で本人と認めざるえなかったんだ」
「えーと、なにを?」
「初代様は講和のためにタラウアカ国に行った時に、アデリーナ姫と会っていたし、アデリーナ姫の他にタラウアカ王家の色を持っている女性はタラウアカ王家にいなかったからな」
「なんでそんなことになったの」
「最初は判らなかった。だが、アデリーナ姫が来て1ヶ月が経った頃には何が起こっているのかは分かったんだ。アデリーナ姫は呪いをかけられて早く成長させられていた。10日で1歳年を取るってやつをな。1ヶ月で3歳だ。呪いをかけた相手が分かったのはそれから、2か月後。アデリーナ姫についてきた神官が犯人だった」
「じゃあ、呪いは解けたの」
「それがな、そんな単純な話じゃなかったんだ」
「なんで?呪いをかけた相手がわかってるのなら、そいつに解かせればいいんじゃないの」
「そうしようとしたが出来なかったんだ。そいつは最初は婚姻を上手く行かせるために年を釣り合わせただの、国のためだの言ってたが、もう1ヶ月経ったところで呪いを解こうとしたんだ。だが、どうやっても解けなかった」
「そんな・・・」
「女神様にもお願いしたけど呪いは解けなかったんだ」
「えっ?女神様にも解けない呪い?」
「ああ。おかげで女神様にも確信が持てたんだけどな、他の神がちょっかいかけてるってな」
「でも・・・でも、それじゃあ」
「一応な、呪いは解けたんだ。だからアデリーナ姫は成人して、3人の子供を残したんだ」
「どうやって」
俺は溜め息を吐いた。セレネの顔色がとても悪い。
これ以上は言いたくないが、やめたところでセレネは納得しないだろうな。
俺はもう一度溜め息を吐くと続きを言葉にした。
「女神様が呪いを変質させたんだ」
「変質って・・・」
「変質っていうのも違うな。正確には呪いを別のものにうつしたんだ」
「移すってどうやって?」
「・・・アデリーナ姫を妊娠させてその子供に呪いをうつしたんだ」
「は、はあ~?子供・・・子供って」
「生まれたのは女の子だった。アデリーナ姫によく似ていた。その子を産んだことで呪いは解けて、アデリーナ姫はもとの子供の姿に戻れたんだ」
「えっ、えっ?」
「それからアデリーナ姫の記憶を封印した。4歳の子供には酷だろうってね。生まれた子供は1歳になったときにタラウアカ国の王弟のもとに送られた。そして、彼の子供としてディンガー公爵家に嫁いだ。子供には呪いの兆候は表れなかった。ある意味これはかけみたいなものだったんだ。子供の成長力と呪いの力。どちらが強いかなんてわからない。無事に子供が生まれたとしてもその子が普通に育つか分からなかったしな。だけど、アデリーナ姫を失う訳にはいかない。彼女が成人して子供を産むことが重要だったんだ。このことにキレた初代様、ミルフォードは関わった奴らをあぶりだして粛清してまわったそうだ。タラウアカ側の奴もタラウアカの王弟に連絡して処分させたっていうし。その後刺客を送ってきた奴には一族郎党ひっくるめて叩き潰したそうだから、ミルフォードの怒りのすさまじさに一時期王宮が大変なことになって、それで」
「リチャード!」
言葉を紡いでいたら、セレネが耳元で大きな声をだして、腕に摑まってきた。
なんだとおもいセレネの顔を見る。セレネは青い顔をしている。
「あなた大丈夫なの」
「あー、なにが」
「何がじゃないわよ。途中から私が声をかけても聞こえないみたいだったし」
「マジか?」
「大体わかったからもういいわよ」
「は?」
「だから、アデリーナ姫の話はもういいってば。・・・その、言いたくなかったのもわかったし。そんなことがあったのなら、悲劇の姫って言われるわよね」
「そうか」
「ねえ、本当に大丈夫なの」
セレネが心配そうな顔できいてくる。
はあ~。久々にやっちまった。
俺は頭を掻くと立ち上がる。
「ああ、大丈夫だ。そろそろ行こうか」
「でも」
「話はまた次の休憩でな」
そういってセレネをランスの上に乗せて俺も跨った。
ランスが走り出すとセレネは諦めたようにおとなしく前を向いた。
やべ~。途中から意識を持ってかれてたな。
俺、余計なことを口走ってないよな。セレネに話した言葉を思い出し・・・。
よし、ちゃんと聞いたぞ話になってたな。
安堵の溜め息を吐きかけて、慌てて息を止める。
それから、そろそろと息を吐き出した。
気をつけないと、セレネにバレるからな。
こいつには気を抜くとすぐ判っちまう。
また、ランスを2時間くらい走らせて、丁度いい木陰を見つけてそこで休むことにした。
女将が持たせてくれたお弁当を取り出して二人で食べる。
セレネがおとなしい。
やはりさっきの話にショックを受けたのか。
弁当と一緒に干しアンズが入っていたので、それを口に含む。甘味が口の中に広がっていく。
「ねえ、もう少し訊いていいかしら」
「ん?いいけど、何」
「アデリーナ姫は幸せだったのよね」
「そうだと思うけど」
「・・・なら、いいわ」
「・・・・・」
「だって今さらな話だもの。彼女が生きてた時から120年は経ってるじゃない。タラウアカ国も無くなっちゃったしね。それよりも他のことが訊きたいわ」
「他のことねぇ。了解。じゃあ」
「あっ、待って。もう一つ先に訊きたいことがあるの。今朝ユーリックさんと連絡取ってたでしょう。どうなったか教えて欲しいのだけど」
「あれ、話して・・・ないか。悪い。えーと、俺がまず見た情景は昨夜の惨劇の跡だな。踏み荒らされた畑に、赤黒い血の跡。死体や死骸は片付けられていたな」
「その血の跡って」
「ああ、ユーリックも言ってただろ。食肉用に解体するときに出る血を集めたんだろうな」
「えー、あー、そう言ってたわね」
「だろ。それを実行したんだろう。多分死体や死骸を片付けるふりしてばらまいたとおもうけどな」
「魔物に扮したオオカミたちは?」
「あー、訊かなかったが、眠ってるあいつらを抜け道から外に出して、傷を回復させてから元のところに戻したはずだけど」
「オオカミたちは・・・いえ、これも今はいいわ」
「ん。訊きたいのはあれだろ。普通のオオカミと違うってことじゃないのか」
「教えてくれるの」
「別に隠しているわけじゃないしな。セレネはこの世界の魔物の事についてどれくらい知ってるんだ」
「魔物?えーと、人里離れたところで発生して群れで人を襲う。くらいかな」
「魔物がどうやって発生するかわかるか」
「・・・知らないわ」
「んーと、そうだな。魔法を使うときに自分の魔力だけじゃなくて、そこら辺にある魔素を使ってるって知っているか」
「魔素って・・・?」
「俺たちが持っている魔力のもと。俺たちが魔法を使った後その魔法はどうなるとおもう」
「消えて無くなるんじゃ・・・あっ!」
「魔法は分解されて魔素に戻るんだ。それなんでそこら中に魔素はあるんだが、時々魔素が溜まるところが出てくるんだ。大体は人が踏み入らない山の奥や洞窟の中だったりするんだがな。そこにとある石があると魔素を吸い込んで魔石になるんだな」
「魔石ってそうやってできてたの」
「まあな。それで魔石のことはおいておくが、魔物はその魔素を体内に取り込んで変質したやつらなんだ」
「はぁ?待って、じゃあ元々は普通の獣なの」
「そういうことだな。あのオオカミやランスの一族は魔素の濃い所で暮らしていたから、他より一回り大きい体躯と賢さを持っているんだ。それに目をつけたやつがあいつらを捕らえようとしたからうちで保護したんだ」
「ええっと、じゃあ、もしかしたら彼らも魔物化したかもしれないの」
「う~ん、したかもしれないし、しなかったかもしれないし~、何ともいえないよな。魔物化するにはどのくらい濃い魔素に何日間侵されるのかわかってないからな」
「で、でも、魔物化する原理が分かっているのなら、何とかできないの」
「そりゃ無理だろう。魔素が溜まる場所なんてわからないし、そこに野生の獣が近づかないようにさせるなんてできないだろう」
「そ、そうよね」
「じゃあ、続き。それで、オオカミたちは目が覚めたあと、ゲーリーと共にねぐらに帰ったはずだ。それと村を監視していた一団だけどな、最初に奴らを見つけた村の近くに野営をしているのを見つけたんだ。ユーリックに伝えたから、怪我させて保護した奴を送り届けるついでに今回の魔物襲撃事件の証人になってもらうように話をするはずだぜ」
「・・・彼らが素直にきくかしら」
「こっちはただ事情説明するだけだ。あとは保護した奴が見たことを話すだろう。あいつらも村が魔物に襲われている様子は聴いてたはずだ。疑おうにも墓を暴くわけにもいくまいし。それに仮に墓を暴いたとしても、出てくるのは骨だけだし」
「えっ?」
「知らないのか。魔物に襲われて亡くなると動く死体になる話」
「何それ」
「神官が浄化すれば動く死体にならないとかいわれてて、その神官がいない場合燃やして骨にするしかないそうだ」
「そんなことが起こるの?」
「いんや。ただの迷信。だけど、今回はそれを利用させてもらったはずだ。今頃村人や傭兵の死体は燃えて灰になった頃じゃないかな」
「待って。死体役になった人たちはどうなったの。まさか」
「だから、大丈夫だって言ったろ。幻惑の魔法の使い手が人形をそれらしくみせて燃やしたから。夜中のうちに死体役のやつらは村を出たからな。骨も焼いちゃえばわからないからって、動物の骨を用意したはずだしな」
「・・・騙されてくれるかしら」
「大丈夫だろ」
「でも、生き残った彼らは?あなたたちの推測だと村を襲った彼らを処分するために送られてきたんでしょ」
「そっちも今はあいつらには手が出せないぜ。下手なことをすれば自分たちに疑いの目が向くのはわかってるだろうし」
「そうね」
「まあ、夜にユーリックと話すからその時に話せばいいだろう」
セレネは頷いた。
「そんじゃあ、そろそろ行くか」
「今、どこら辺まで来たの?」
「予定の半分近くかな。ランスも頑張ってくれてるがセレネの魔法も大きいな」
「役に立てているのならうれしいわ」
「・・・・・」
「なにか?」
「いや、まだ、先は長いから行こう」
そういってランスに乗り走り出した。
恋とはなんぞや?9話をお届けしました。
う~ん。ちょっと重いです。
というか、よく考えたらグロい?
あと、なんか別のフラグが立ったきがするのは気のせいだよね。
さて、補足。
えーと、アデリーナ姫が妊娠したのは25~27歳(見た目年齢?)です。
ただ、身体は大人でも、心は子供です。なので、妊娠はいいけど、出産はね・・・。
それと、子供を産んだことによって元の姿に戻ったと書いてありますが・・・。
これも、よく考えると大変なことになってますよね。 割愛しましたが。
なので、記憶の封印です。
アデリーナ姫を守るために。
で、前に25歳で亡くなったとありましたが、一度成長した年齢を足すと50歳超え。ということです。
あー、自分で書いていて、胸は痛いは、気分は悪くなるわ。
なんで、タグを最初に付けなかったかなと後悔しました。
でも、「守り人シリーズ」の中に戦いの描写があったりしたので、児童文学でOKなら、これくらいならいいかなと書いてみました。
もし、これでも警告タグをつけてくださいと言われたら考えることにします。
「ポッターシリーズ」だって、戦いで人が死んでるしね。
話がそれました。
もう一つ、補足というより説明かな?
魔物のこと。と、魔素のこと。
魔物は最初から魔物という種類がいるのではなくて、過剰に魔素をとりこんだ獣が魔物化します。
えーと、次回かな?その次かな?
魔法についての説明も出てきますので、それを読んでからわからない所はご質問ください。
それでは、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。




