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恋とはなんぞや? ~リチャードとセレネの恋模様?~ 8

ユーリックの話にセレネは驚いている。


「なんか、言いたいことはあるんだけど・・・とりあえず、なんで?」

「・・・俺たちの様子を見ていたんだと。それで仕えるに足るかどうかとな。ほんと、ガキらしくないガキだよな」

「そうね・・・でも、女神様・・・」


2人して溜め息をついた。

鎖の先の石を触りながら続きを話し出した。


「まあ、女神さまのことはあとでな。それじゃあ、次。この石についてだったよな」

「ええ。なんでリングスタット王家ではなくてフォングラム公爵家が持っているのかよ」

「理由は単純明快。ミュスカリーデ様がリングスタット王家を危惧して、フォングラム公爵家にその任を任せたから」

「その石はフォングラム公爵領だけにおいてあるの?確か街道沿いにあるとか」

「いや、リングスタット王国中にある」

「その石が媒体となって見たいところが見れるのね」

「まあな」

「それはフォングラム公爵家の人なら誰でも見れるの」

「いんや。うちの両親と俺だけだ」

「なら、なんでユーリックさんに連絡ついたの」

「向こうからは連絡できなくても、こっちからはできるからユーリックにも石を持たせてるんだ」

「そういうことだったのね」


セレネがまた溜め息を吐いた。


「そろそろやめるか。なれないことして疲れただろう。明日も移動しなきゃならないし」

「そうね。思ったよりも遅くなったわね」


俺は椅子を窓際に持っていった。


「セレネはそのままベッドを使ってくれ」

「あなたはどうするの」

「これに包まって床で寝るから」


荷物の毛布を指さした。


「待ってよ。あなた怪我してるのよ。床なんて固いところで寝るのはよくないわ」

「平気だよ。討伐の間はテントで寝られればいいとこで、ほとんどそこら辺で毛布に包まって寝てたからさ」

「じゃあ、私が床で寝る」

「それこそ駄目だろう。セレネを床なんかで寝かせられない」

「私だってそうよ」


しばらくお互いの目を見て睨み合う。

引く気はなさそうなのを見て、俺は息を吐きだした。


「じゃあ、一緒に寝るでいいんだな」


セレネが頷く。


「ロリコンじゃないのよね」

「・・・俺はロリコンじゃない」

「なら、問題ないじゃない」


こいつは・・・いや、気にする方がバカだ。


「わかった。もう寝るでいいのか」

「ええ」

「じゃあ灯りを消すぞ」


この宿屋の灯りは魔石を使った照明だ。

スイッチを押すと灯りがついたり消えたりする。

灯りを消してベッドに寄った。鎧戸の隙間から月の光が入ってくる。

セレネは俺に背を向けるように横になっていた。

俺もセレネの隣に入り横向きに寝る。向きを直そうとして傷に響いた。


「つっ」


つい声が出てしまった。

セレネが起き上がってこちらを見た。


「大丈夫なの」

「大丈夫だ。ちょっと傷に響いただけだ」


その言葉に安心したのかセレネは横になる。

俺は腕を伸ばすとセレネの細い身体を抱きしめた。


「ちょっと」


セレネが抗議の声をあげて離れようとする。


「動くと落ちるぞ。・・・セレネは温かいな」


顎の下にセレネの頭がくる。

ギュッと抱きしめていたら、諦めたのか動かなくなった。

セレネの温もりを感じながらいつしか俺は眠りに落ちたのだった。


次の朝、まだ薄暗い時間に目が覚めた。

セレネを一晩中抱きしめていたようだ。

身体の下になった右手は痺れているみたいだ。

そっとセレネから離れて右手を引き抜く。

セレネが寝返りを打ち俺の胸元に顔を向けてきた。

昨日はあのまま耳飾りはつけなかったから、輝く赤銅色の髪が目の前にある。

左手を動かしてそっと髪に触れ撫でる。


「うん」


セレネが身じろぎをした。起こしてしまったかと思い動きを止める。

そのままでいたら、規則正しい寝息が聞こえてきた。


眠っている顔を眺めながら、昨日のことを思い返す。

あの村のことはユーリックに任せておけば安心だ。

それよりもセレネのことだ。

新しい村に移ってもいつまたバレるかわからない。

そんな危険なところにセレネをやるわけにはいかない。

一番いいのはフォングラム公爵家で保護をすることだ。


そして、昨日考えたあれ・・

多分それが一番いい手だろう。

クロフォードが本当にリントナー伯爵の娘と結婚するつもりなら、真相を知らせなければ上手く誤解してくれるだろうし。

それに、今なら・・・キュベリック国にそれと分からせずにかえせるだろう。

だが、まだ12歳、なんだよな。

ベイグリッツ隊長に許可をもらっているとはいえ・・・・・だよな。


やっぱり親父たちに訊くのが一番か。

と、すると、セレネの魔法と、ランスの脚力で今日中にフォングブルクの館に行くしかないか。


今日の予定を決めるとそっとベッドから離れる。

なんとかセレネをおこさずに離れることができた。

自分の耳飾りをつけて、部屋の鍵を持ちそっと部屋を出て行く。


宿の外に出ると厩に行く。

ランスは俺が来たことを喜んでくれた。

軽くブラッシングをしてやる。

終わると嬉しそうに頭を寄せてきた。


「今日も頼むな」


そう言って宿の中に戻っていった。

丁度女将さんが起きてきたところだった。


「おはようございます、リチャード様。今日は早いですねぇ。もしかして、眠れなかったのかい」

「おはよう、女将。ぐっすりと眠れたさ。ただ、早くに目が覚めてね」

「そうですか。ところで夕べはどうされました」

「・・・結局何もしなかった」

「じゃあ、待つことにしたのかい」

「まあな」

「今から支度するからもう少し待っていておくれね」

「ああ。ところで女将、昼に食べれるように弁当を頼んでもいいか」

「軽食でいいなら何かできると思うけどね」

「出来れば頼みたい」

「あいよ。何か見繕ってみるさね」

「よろしく頼む」


俺は2階の部屋に戻った。そっと扉を開けるとセレネはまだ寝ていた。

椅子に座ると石を握り、あの村の様子を見てみることにした。

村は静まり帰っていた。

朝日が届くまで暫し時間がある。

明るくなった村の様子は夕べの惨劇の後がありありとわかるものだった。

踏み荒らされた畑に、ところどころ赤黒い血の跡がこびりついている。

さすがにそこらに死体が放置されていることはなかったが。


笑いが漏れそうになる。

本当にユーリックたちは上手くやったようだ。


気配を探って、感覚の糸を伸ばす。最初に奴らを見つけた村の近くに野営をしている一団がいた。

奴らだ。半数が見張りに立っている。

そりゃ、そうだろう。魔物の襲撃を見たんだからな。

こいつらが動くまでまだ時間があるだろう。

俺はユーリックに話かけた。


「ユーリック」

「リチャード様、お早いですね」


すぐに返事が来た。やはり起きていたか。


「あー、早くて悪い。お前は少しでも休めたか」

「ええ。休みました。今日はあの一団に見せつけなければいけませんからね」

「そいつらだがな、最初に見つけた村のそばで野営をしてたぞ」

「そうですか。では、どう(調理)しましょうか」


おい、何か心の声が聞こえたぞ。


「その前に、そいつらの仲間で村の様子を伺ってたやつはどうした」

「保護しましたよ」

「・・・で?」

「あんな時間にこんなところにいたから軽く尋問はしましたけどね」

「なんて言ってたんだ」

「旅の商人で仲間とはぐれたから追いつこうと急いでいたそうです」

「ほう」

「なので、丁度いいから村人や傭兵の死体の証人になってもらいました」

「何をした?」

「いえ、特には」

「・・・・・」

「彼の治療を死体の片づけをしたり、傷が酷くて死を待つ者のそばでしただけですよ」

「おまえ・・・まあ、それが手っ取り早いか」

「ええ。本当ならもう2~3人いて欲しかったのですけどね」

「んじゃあ、そいつをその一団に送り届けて事情説明でいいんじゃねえの」

「それが妥当なところですね。でもいいのですか、奴らをそのままにして」

「証人はいるんだ。奴らも魔物に襲われている声は聴いていたしそれでいいだろう」

「もし、セレネ様を狙って来たら」

「させるかよ。俺が絶対守る」

「では、そちらはお願いします。それで今日は」

「フォンブルクの館まで」

「・・・ランスとはいえきつくないですか」

「まあ、大丈夫だろう。最悪シールド張ってランスを本気で駆けさせるからな」

「まあ、ほどほどに」

「じゃあな。あとは、よろしく」

「はい。お気をつけて」


ユーリックとの会話を終え、石から意識を外す。

肩の力を抜いて後ろに寄りかかって、背中に走った痛みに声が出た。


「つー」

「大丈夫」


見ると、セレネがベッドに起き上がるところだった。

起こしてしまったか。

俺が言葉を言う前にセレネが話してきた。


「起こされたんじゃなくて、目が覚めてたの」

「えーと、何時から?」

「あなたが部屋を出て行く時」

「起こしたか」

「いつもこのくらいに起きてたから違うと思うわ」


ああ、そうだな。セレネは自分で家のことをやっていたんだよな。


「で、大丈夫なの」

「ああ、つい怪我のことを忘れて寄りかかっただけだから」

「見せて」


セレネはベッドから降りてそばにきた。

背中を向けたら、シャツを脱げといわれた。

言われた通りシャツを脱ぐとセレネの手が背中を触った。


「大丈夫なようよ。傷が開いた様子はないわ」

「そうか」


服を元通りに着るとセレネの方を向いた。


「今日は急がせるけどフォングブルクまでいこうと思う」

「どれくらい離れてるの」

「普通の馬で2日半かな」

「ランスなら?」

「ランスでも普通は1日半はかかる」

「かなり無理をさせるのね」

「それほどじゃないと思うけどね。もちろんセレネが浮遊の魔法を使ってくれたらなんだけど」

「・・・急ぎたい訳があるんでしょ。いいわ。わかった」

「それじゃあ下にいって朝飯でも食うか」

「その前に着替えたいから出ていてくれる」


ん?ああ、よく見りゃ昼間の服と違ってたな。


「りょう~か~い」


そう言って俺は部屋を出た。また、扉の横の壁にもたれ掛かる。

しばらく待つとセレネが出てきた。もちろん耳飾りはつけているから髪の色は茶色に戻っている。

そのまま部屋に鍵をかけて食堂に行った。


朝食を食べ終わると部屋に戻り荷物と、昨日借りた桶を持って部屋を出る。


「女将、これありがとな」

「ああ、リチャード様。そんなもん部屋に置いといてくれりゃよかったのに。それと、はいよ」

「ああ、助かるぜ」

「ねえ、それは何?」

「ん。昨日のこともあるから弁当を頼んだんだ」

「そう」

「道中気をつけんだよ」

「ああ。また寄るよ」

「お世話になりました」


宿を出てランスに乗り街を出たところで駆けさせる。もちろんセレネに浮遊の魔法をかけてもらうのは忘れない。

2時間ほど走らせて休憩をとる。


「休憩の間に昨日の続きを話すか」

「えっ、いいの?」

「そうしないと、話す時間がなくなりそうだからな。それで、何から話そうか」

「あのね、説明してと言ったもののその前に訊きたいことがあるのだけれど」

「なにかな」

「アデリーナ姫のことよ。納得できなくて」

「何か変な事言ったか?」

「だって、母さんから悲劇の姫って聞いたのよ。でも、あなたの言葉だとすごく大事にされてたみたいじゃない。じゃあなんで悲劇の姫ってタラウアカ王家に伝わってたわけ?」


選りにも選ってそれかよ。

できることなら話したくないが、それでセレネが納得するとは思えないし、どうするか。


「そんな顔をするってことはよほどのことが起こったのね」


なんで、こんなところは鋭いかな。

俺は大きく溜め息を吐いた。


「聞いて楽しいもんじゃねえぞ」

「真実なら受け止めるわ」


本当に、覚悟は立派だな。王家の義務ってやつか?

だがな、セレネ。お前がそこまで背負い込む必要はねえんだぞ。


恋とはなんぞや? 8話です。


誰か、甘さをください。

一緒に寝てるのに甘くない。

湯たんぽ扱いって・・・。


本当にタイトル通りだわ。

恋模様?  ってね。


それでは、次話で。

・・・・・

次話はちょっと重いです。


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