今の状況
視点 シャム 所属 毛利家
場所 鳥籠城、客室
私の名前は、シャム
部屋が涼しくて、ねむくなる
ふぁー
私は大きなあくび
今部屋の中には私と目の前の布団の中で静かにと寝息を立てた、銀髪の幼女
私は毛利隆元様の使役する召喚獣の一人
三人すべてがほぼ同じの容姿を持っており、年齢も少しずつ離れている
クロが十七歳
トラが十三歳
私は十五歳
くらいだと隆元様は言っていた
私やほかのやつらを比べた限りではそんなものなのだろう
私たち召喚獣は生まれた時からある程度一定の容姿を保っているが、生活や働きによって多少変化もある。
トラは少し、くまができつつあるような気がする。
トラの職は政務であり、勢力圏を何度となく失い、混乱を治めるため今でも仕事が全く減らないと聞いている
クロはほかと比べるときわめて表情の変化が少ない
クロの職は諜報であり、この頃、姿を見ない
隆元様の話を聞く限りならいろいろなところを駆け回っているようだが、どこにいるのかな
そして、私だがほかと比べると今現在大変な仕事をしているわけではない
別に職がなくてニートになっているわけではないのだが
私の職は魔術の研究をおこなっている。
魔術の研究はどこの大名家でもおこなわれていることであり、毛利家では大量の資金の投資によって技術面で最先端といっていい
だが、私の仕事は土地が減っても戦いがあったとしてもそれほど仕事の量が増えるということはない。投資している資金はまったく減っていないので減ることもないのだが
今現在、客間で瀕死だった、銀髪の幼女を見ているのも仕事である
「昨日はなかなかの長丁場だったな」
うん、頑張った、頑張った
そんな自分への励まし
「何でこの状況になったのか、説明していただけますよね」
「うわっ」
声を発するものなどだれもいないはずの部屋からの声に驚き、振り返ると
あるとするならば、眠っている銀髪の幼女
「……クロじゃない、どうしたの」
首元までに切りそろえられた真っ黒髪、私より少し背の高い少女
いつからいたのかとか、どこに行っていたのかとかいろいろ合わせて答えを返したのだが
「どうしたのではありませんよ。何でこの銀の子に大量の拘束魔術やら封印やらが施されているのですか、かなり雑ですけど」
私は悪くない
「ああ、それはですね。それは……」
昨日の午後、隆元様が連れてきた、緑髪の女性はほぼ即死クラスの重症だった。
鳥籠城の地下、密閉された空間は血のにおいで満たされ、石造りの床には血の水たまりができていて、本当にそいつが生きているとは思えなかった
背負っている隆元様の衣服にも当たり前のごとく真っ赤に染まっていた
だが、隆元様が連れてきた以上。なんとか治すことができるのだろう
この状況下で生きている。
そんな存在は、妖怪憑きの中でも高い不死属性を持っている存在ぐらいだろう
「隆元様、お帰りなさいませ」
いくらなんでも、不意打ちすぎますよ
部屋の中に入った瞬間のにおいだけで吐き気を感じてしまった。
「背中の方ですが生きているのですか。」
さすがにこの状態ならば聞かざるおえない質問
「ああ、多分生きているだろう、こいつは高い不死属性を持っている。頼んでいた部屋は用意できているか」
「はっ、命令の通り用意しております。」
「急な命令で悪かったな」
「いえ……、全く問題ありませんよ」
「おっと、早めに治療をした方がいいな、すまないが案内を頼む」
てか、何でこんな血まみれの状態で平然と日常的な会話をしているのですか
私のこの血のせいで吐き気を催したのだが、この方はほんとに私と同じ精神を持っているのかさえ不思議に思ってしまう
いや、半分は師匠さんのものだからそっちの方はそんな感じの方なのだろうか
「ああ、ええっと、案内します。ついてきてください」
「たのむ」
隆元様にけがはない
「何があったのですか?」
「こいつが本願寺の僧兵たちに襲われていたので助けた」
「よく生きていましたね。」
少なくとも僧兵たち完全な統率を持ちは格上の妖怪憑きでも殺しきれる火力があるはずだが
「たぶんだが、こいつは単純な魔力の量とか身体能力だけなら、毛利家の武将よりもはるかに上だろうな」
「それほどですか」
その言葉が、この幼女が傷を治した場合止めるものがいない状態になりえるが、隆元様がここまで連れてきたのだから、たぶん大丈夫なはずだ
いや、こんなことはいつものことか
心の中でのため息
「まあ、見た目だから完全に判断しきれないが」
「なるほど、怪我の治療はどのくらいまで、おこなってありますか?」
「空間維持と魔術符を大量に使って魔力の供給を続けている。その辺の処置をおこなっている以上すぐに悪化するということはないだろう。まあ、多分だが」
現時点の魔術で人の傷を癒す魔術は存在しない
人の体には魔力があり、それを消費することによって傷は自然に治っていく
魔力がある限り、人は簡単に死なない。
だが、体に保持している魔力は武人や妖怪憑きのような大量の魔力を持っていたとしても、その魔力は無限ではない
空間魔力が無限に存在しているが、人の体に保有している魔力はどれもが個人個人で固有のものであり、空間魔力をそのまま体に取り込むことはできない。
魔力の回復は空間魔力を自分自身の固有の魔力に変換し取り込まなくてはいけないため、使った魔力を即時取り込むということはできない
また、傷からは血と同じように魔力も流れ落ちてしまう。
流れ落ちた魔力は地面にぶちまけた水のように空間魔力と混ざり合い同じ魔力であっても自身の固有のものではなくなり回収することは不可能
人の皮膚には空間魔力と自身の持つ固有の魔力の境であり、攻撃には弱いが魔力に対する結界に近い性質を持っている。
そんな形で供給される魔力よりも消費する魔力のほうが多くなれば体の機能さえ維持できなくなり死んでしまう。
だが、空間維持は皮膚に似た性質を持った魔力で傷口を覆い、傷から漏れ出す魔力を減らすことができる。
その状態で取り込まれる魔力と消費する魔力で供給のほうが上回れば時間制限はあるが放置しておけば勝手に回復する。
放置といっても、傷を洗ったり、薬塗ったり、包帯巻いたりといった処置もするがある程度以上の傷を負って意識を失ったものにできることというほとんどの大名家でもそのくらいである。
意識があるのであれば現在普及し始めている魔術符の中にある魔力変化の符を使えば回復が可能
前に話したとおり、人の持つ魔力はひとつとして同じものはない、さらに言えば他人の持つ魔力や空間に存在する魔力はそのまま体に取り入れた場合、毒にしかならない
傷から放出される魔力も空間から進入しようとする魔力から体を守るために放出されるのであり、体の機能が維持できないほど魔力を失うとその魔力の放出が収まり、魔力の進入されてしまう
そうなれば、ほぼ死んでしまったと同義である。
体に進入した空間魔力を体に残っている固有の魔力と混ざり合い体の中の魔力さえも操れなくなり、体と空間の境界さえなくなり死んでしまう。
だが、魔力変化の符は、触れた魔力とまったく同じ魔力に変わる性質を持った魔力を皮膚などと似たような空間の魔力の干渉を受けない結界などで包み込み凝縮し固体化させたものである。
それを自分自身の持つ魔力で包み発動させることによって固有の魔力を増やしていくのである。
魔力で包み込むというのは、固有の魔力は体の内側にしかなく、その状態では身体能力の向上と回復能力のみ使われる。
攻撃を受ければ簡単に傷がつく
魔力は体の回りに纏うことによって体を守るのだが、それをするにはそれなりの訓練が必要であり、意識がなければできない
包み込まずに魔力変化を使ったとしても空間に存在する魔力に変わるだけで回復はできないのである。
だが、現に隆元様がやっているように魔術符を使い他人を回復する方法はある。
その方法は隆元様が作り出した方法である
空間維持の結界で全身を覆いその中で魔力変化の符を遠隔操作起動させるだけである。
傷を負ってから経った時間にもよるが早い場合、結界の中多少なりと残った空間の魔力は大量の固有魔力によって駆逐され純粋な固有魔力のみを増やすことができるのである。
その魔術、いや、もともとある魔術の応用であるため、技術といったほうがいいだろう
その技術は、意識を失ったもの、衰弱したものを救う現状唯一の方法である。
幕府への技術の献上後、多くの国にその技術は広まったらしい
幕府がしっかりとしている状態であれば、莫大な報奨金やら、領土やらがもらえていただろうが、今現在幕府にそんなものを生み出す権力もなく名前ばかりの地位を手に入れた程度である。
それに対して隆元様自身は割りと満足しているようだ
私も何度も賞賛の言葉を送ったが、その答えは毎度決まっている。
「私は京にあった数十年も前の資料から知識を得ただけの知識をただ、魔術符と組み合わせただけに過ぎない。」
だそうだ
京には知識などの蔵書が何十年、何百年も前から存在している
その中でもその時代の技術で実現不可能なもの、費用対効果の点であまりにも実用性の欠けるものを何年か後の技術発展で利用できるようになるかもしれないという名目で保存されているのである。
隆元様の言葉は嫌味でもなく、謙遜でもなく。ただの本心から出た言葉だろう。
隆元様にとってはいつものことだ
隆元様は消極的人物である。
そういった人格形成に深くかかわっているのは、隆元様の記憶を持つがゆえにいくらでも影響を与えたであろう事例が思い浮かぶ
自身が武人でなかったがゆえ
中国地方を一代で纏め上げるところまで行った毛利元就様という存在
吉川元春や小早川隆景という、武人であり、戦において何度となく武功を挙げた妹たちの存在
見聞を広げるためにと元就様にいろいろな地に行かされ圧倒的な力を持った存在とであったため
ほかにも理由は無数に存在するが、それらに強い劣等感を持っており、そんな力を持った存在を強く信仰する傾向が強い
それが私の持つ客観的な隆元様の性格であり、それが良いか悪いかで言えば今現在は良い方へと転がっているだろう。
自分に才がないと思うがゆえに才のあるものを尊重し、重用する。
出身や前科などの障害のあるものもあるが、隆元様の持つ人の心をある程度見る力もあるため、基本的に間諜や暗殺者が入ってくる心配も少ない。
この方もいつもどおりのことに過ぎない
そんなことを考えているうちに、回復用の魔方陣やらを敷き詰められた、部屋に到着
「廊下が血まみれだな」
「その辺は問題なく、部下に掃除を頼んでありますので」
「用意がいい」
「何度同じことをしていると思っているのですか」
私は、わざとらしくため息をついてみせる
鳥籠城に連れてきた。妖怪憑きやら人は、数十人位はいくだろうか
その多くが毛利家に、多くの力を貸している
この女性も隆元様が連れてきたのならそれほど不審なものではないのだろう
「ははは、何人くらいになるかな」
「笑ってないで助けることには反対しませんが、国の治安が少しずつですが悪くなっていますもしものことがあれば困ります」
「はいはい、それでは治療を始めてくれ」
何度も言っているが、出歩くのをやめることはないだろう
部屋の中心に、黄緑の光を放つ魔法陣、その他複数の色、形を持った魔方陣を壁やら天井に敷き詰められ、独特の雰囲気を放っている
隆元様は真ん中の魔方陣の上に、血だらけの女性を置く
「それでは服を脱がし、血を落としますので」
私が隆元様の方を向く
「ああ、わかっている。それじゃあ、まかせる。怪我が治ったらいつも通り適当に説明して、武人派に入れるか、自分のやりたいようにしてあげてくれ」
そういうと隆元様が退室
その辺は、いつも通り、隆元様はこの頃連れてきた妖怪憑きを助けてもあわないということが多い
今回女性ということもあるが、男性でも同じように回復を私に任せられる
その理由は割と簡単
武人派と商業派は、溝がある
武人派の内部では隆元様はぼろくそに言われている状態、へたに隆元様に恩義を感じでいる。妖怪憑きなどをいれると場合によって孤立、最悪の場合、組織が分裂したことがある
力のあるものは、それ以上に人を引き付ける才を持つ
この女性の持つ力がどれほどのものかよくわからない。だが、隆元様の言う通りならば人によってその力には信仰し、酔狂しかねないかもしれない
それと武人派の長になった吉川元春様と隆元様の仲があまりよくないため、素直に評価されないかもというところがあるだろう
そんなことを考えながら、女性の服を脱がしていくが、脱がした服はほんの少し離れるとそのまま形を失い、影の様に黒くなり床に沈んで消える
この服も魔力を使い作ったものか、だから、血染まっている以外は服に変化は残っていない
右足と左足がないのだがその部位の服も破けてはいない
体中血だらけだが、そのほかの傷は外側を見る限りならずいぶん回復している
連れてくる間に供給された、魔力で再生したのだろう
異常なほどの回復速度
「これなら私自身が特にすることもありませんね」
つぶやくが、誰もいない以上返事はない
あとはこの女の精神力とか体力勝負といったところだ、もし死んでしまったら考えるとさみしさに押しつぶされそうになっていってみたのだが、誰もいない以上それ以上にむなしくなるだけでしかない
いやこの場合死んでしまったほうが、今後のためになるのだろうか?
あとやることは、魔力の供給と空間の維持だが、その程度ならば問題なしか
「やっぱり一人だとさみしいな」
隆元様に一緒にいてもらいたい気持ちもあるが、私の受け持った仕事なのだからしっかりとやらなければ、そんな使命感とか不安とかで昨日は一睡もせずにこの幼女を見ていた
いや、女は数時間程度動きもなく安静にしていたこと思ったら、体が縮み、こんな幼い姿になっていた
幼女から発せられる。魔力は時間がたつごとに禍々しさがまし、部屋には魔力の漏れを抑える、術を使っているが、中にいる私は圧迫感に押しつぶされそうになる
隆元様の言う通り毛利家に所属している武将とは魔力の質が全く違う
ほんとにこの幼女は化け物だな
もしこれほどの化け物が味方になったらと考えると、とても楽しみな面もあるがそれ以上にこんな化け物を近くに置いておくことができるのかが微妙なところだ
人格とか思想的には隆元様の判断があるから大丈夫だろうが、私自身も、隆元様の命令と信用がなければこんなところに居たくはない
どのような経緯で僧兵たちに襲われていたのかはよくわからないが、確実に人に対していい感情を持っているとは思えない
それなりに警戒していくつかの拘束魔術をおこなっているのだが、増え続ける魔力に不安が増していく
私が死んだとしても、中核となっているものさえ無事であれば、これまで積んだ経験や能力を受け継いだまま復活が可能
だが、痛いのは嫌いだ
気休め程度だが、何個か拘束魔術を追加しておくか、後ついでに魔力を抑える術式も組んでおこう
「何もすることがないと寝てしまいそうだし、ひまだ」
そんな建前を口に出しつつ
胸の中にある、怖いという感情を原動力に、これでもかってほどの拘束魔術を展開していく
「そんな感じのことがあって、回復だけなら数分で終わったのですが、朝までずっと拘束魔術を連打していました」。(マル)
そんな感じで、今まであったことを懇切丁寧に説明
ついでに、今の状態は、私が正座で、クロがたったまま
「…はぁー、隆元様の予想通りですか」
クロは大きなため息
「てか、何でクロがここに来たの」
なんとなく予想できるが一応
「シャムのことだから、ビビって拘束魔術とか連打しそうだから一応ついていてくれ、だそうです。完全に手遅れでしたが」
全く予想通りですか
「だったら早く来てくれればよかったのに」
「隆元様が明日でいいといっていましたので、つか、子守くらいまともにやってくださいよ。私眠いのですが。」
「いや、それは謝るけど、でもこんなに禍々しくなるとか思ってなかったし」
あはは
「否定はしませんし、笑い事ではないと思うのですが」
そりゃあそうだな
「そうなのだけど、もうそろそろ起きますから、あと任せてもいいですよね、ね」
「ふざけないでください、シャムが任されなんだから、あんたが生贄になりなさい。」
「ええ、こんなのに襲われたら、私なんて即死しちゃうじゃない、てか、生贄いうな」
私とかを含めた3人の魔力の総量はだいたい、農民とかより少し多いくらい
「それは私も同じだ、私も痛いのは嫌だ。心を決めてください。中核だけは回収してあげますから」
「戦いというものは、慣れているものがやるものだ、間者として色々なところで活動なされている。あなた様なら、魔道具で、質量を持った残像とか、影分身とかできるのではないでございませんか ?」
残念ながら、私はクロの魔道具がどんなものなのかはわからない
魔道具は完全な一点ものであり、その能力を知られるのは極めてリスクが高い
私を含め、3人の召喚獣の魔道具を知っているものは、隆元様のみであり、私は2人の魔道具がどんなものなのかわからないが、多分私の魔道具よりは戦闘向きで多少なりと使えるものだろう
そうクロならばやってくれるはず
「元は同じだ、そんな強力な魔道具とか魔法とか打てませんので、あしからず」
「ですよねー」
クロを送ってくれたのはうれしいのですが
隆元様、私はどうすればいいんだよ
はぁー
「まだ時間はあるはずです。作戦を考えましょう」
今やるべきは、どのようにしてクロを生贄にするか、その作戦の成否によって私は死にかねないほど大事だ
がんばれ、私