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なんか失敗してしまった英雄

視点 ヴラド 所属 なし

場所 ???


ここはどこだ、私が目を覚ますと何もない真っ黒な世界、自分の動悸、息遣い以外、物音ひとつなく静寂に包まれた空間、自分の周りに人の気配はない

「なぜ私はこんなところに」

この真っ暗な空間は、洞窟などではないのだろう、地面のようなものはなく宙に浮いているようだ

オカルトじみた空間、表現するならには旧約聖書に書いてあったシェオールと呼ばれる地獄のイメージとよく似ている

とにかく何もなくさびしい空間

夢なのだろうか

ベタでな気もするが、頬をつねるが痛みはある

一応、夢ではないのだろう

……あれ、私は誰だったのだろう?

……ヴラド・ツェペシュ様

一つの呼ぶ声

そうだ、私の名はヴラド・ツェペシュ

ワラキアの王であり、強大な力を持ったオスマン帝国と戦った

その戦いは何年も続き…

どうなったのだろうか、何度となく迫りくるオスマン軍をのけることに成功したが、その国力の差は極めて大きく40対1ほどの勢力さがあり勝利したとは考えられない、ならば負けたのだろうか、戦いのために犠牲にしたすべてを無駄にしてしまったのか

その瞬間である。おぼろげな何かが頭を駆け巡り、音のない断片的な情景のみが次々と現れては消えていく

……木でできた家、その中からは悲痛なうめき声が聞こえ

何でこんな情景が浮かぶの

……私の手には松明があり男?はその松明をうめき声のする家に投げ込む

そうだこの中には多くの病人がいた

……油でもあったのだろうか松明の火は一気に燃え広がり中にいたであろう人ともどもすべてを消してします。

これが私の記憶

さらにそんな情景に連動するかの様にさらに多くの記憶が私の頭をかける。

「なんで?」

貴族風のきれいな服を着た男を串刺しにする私

小さな子供を抱えた女性が私に縋り付いている、それを私は払いのけると小さな村に火を放つ

いくつもの、過去の記憶が呼び起されは消えていく

ほかの平凡な光景や軍の先頭に立ち行軍する光景なども思い浮かぶがそれ以上に私のしてきた暗い光景の方が頭にこびりつき離れない

「あれだけのものを切り捨て、踏みにじっておきながら守ることができなかったのか」

 あの行動は必要なことだと頭では理解しているが、罪悪感が押し押せてくる。

「私は…」

声を出すが何もない。

当たり前か、周りに誰もいないのだから

「おはようございますー!」

誰もいないはずの周りから声が聞こえる。

全く緊張感のかけらもない。

誰?

気配はしなかったはず

だが、私の周りにあった真っ暗な世界は光に照らされている。

私は、光が照らしている方に何と顔を上げると目の前には異国の服(和服)を着た童女、黒い髪まるで、天使のような、かわいさを持った童女

絵に描かれたような笑顔

首には小さな鏡がネックレスのようにつけられており、体に羽織るように薄い布がひらひらとひとりでに浮いている

かわいいというのもあるが、その一方で突然現れ、変な格好をしているので胡散臭いという印象も受ける。奇術師か何かなのだろうか

「あなたは、だれかしら?」

私は疑問をそのまま口に出す。

すると童女は

「私は、神よ」

そういうと、その神とか名乗るわけのわからない童女はエッヘンといった感じに胸を張る

この子は何を言っているの

頭ごなしに否定するところだが、目の前の空間、を含めると

「ここはどこなの?」

状況が読めない、目の前には神とか名乗る。痛い人

「ここは冥界と現世の狭間ですよ」

…………

ほんの少しの沈黙、理解できなかったわけではない、理解したくない

「ふざけているのか、私を早くワラキアに戻しなさい」

怒りも含め声が出る

夢なのかもしれないがこんな胸糞を悪い夢は嫌だ

現実だったとしても、あの戦いは無駄にしたくはない。戦いの中で死んだ者たちの死は無駄なわけがない、切り捨てたものたちの死が無駄なわけがない

「びっくり、前世の記憶を持っているのですね」

多少だが驚いているようだ。

「ふざけているのかしら?」

何もない空間から、槍を生み出す

ずっしりとした重みをもった、ルビーのような輝きを持った赤黒い槍

怒りとともに、槍を投げる

すさまじい音とともに槍は加速し、女に突き刺さる

ように思えたが、赤黒い槍は女の目の前で虚空へと消え去る

童女の顔にはほんの少しの驚きが見えたようだが、今は微笑みを浮かべたまま

「魔道具の使用までできるのか、すげー」

この緊張感のないセリフには、だいぶ調子が狂う。

もう一度怒りに任せ、槍を生み出すが、生み出された槍は重さを失い、消失する。

「無駄なのですよ」

くそが、心の中で叫び

複数の槍を空中に生み出す。

なんとなくできそうだと思い、やってみたができた

「食らいなさい」

空中に浮かぶ槍が一斉に胡散臭い童女に……

全く変わらない、先と同じように突き刺さるように見えた複数の槍も虚空と消える。

「無駄なのですよ」

自分の力を誇示するかのような言葉

その瞬間に体はすべての感覚がなくなり動きが止まる。

これは?

声に出そうとするが口さえも動かない

「金縛りです、少し、頭を冷やしてください」

息ができない

体も動かないためもがくこともできない。

「ああ、これじゃあ、息ができないですね」

うっかりしていたといった感じでだいぶ近づき、背伸びをし、私の頬をなでる。

すると、顔のあたりの拘束が解ける。

どうでもいいことだが近くで見るとやはり小さい百四十ほどだろうか

いきりたち睨み付けるが

「まあ、まあ、怒らないくださいよ、攻撃してくるからしかたないじゃないですか。話ができる程度におちついてください」

「あなたに命令される筋合いはないは」

私が返すが無視

……

少し落ち着くべきだろう。

……

この童女は何者だ

それにこの力もすべてを理解できているわけではないが、少なくとも私の生きた世界にあったものではない。

冥界と現世の狭間

私の知る世界の中ではありえないであろう場所であり、そのわけのわからない力を私も目の前の童女も使っている。

少なからず認めるべきなのか

夢という線もなくもないが、少なくとも作った槍に質量があり、痛みもある

ここは死後の世界とでもいうのだろうか?

そして、私には天国か地獄かの審判でも下されようとしているのでろうか…

……こんな時にどうかと思うが金縛りによって完全に体勢が固定され、先に槍を大量にはなった時のまま

右手を挙げ、だいぶかっこつけたポーズ

完全に固定されており、こんなポーズの銅像のよう

ちょっとしたナルシズム、あとは訳の分からない力に酔っていたのだろう

冷静になるとなかなかこのポーズも恥ずかしいものがある

「冷静になったから、この変な力を解いてくれないかしら?」

悟られないように表情を崩さず、言ったつもりだったのだが

「そうですか、残念です。かっこいいと思うのに」

「へ……」

いきなり、声が出てしまった

「何でもいいから、この金縛りとかいうのを解きなさい」

内心だいぶ恥ずかしいが

「はいはい」

そういうと童女は少し笑いながら、金縛りを解く。

ふぅ

体の感覚が戻る。術が解けたのだろう。

「死んで」

槍の先端のみを作り、突き刺す

悟られないように、時間も最小限にするために、取り回しやすいようにするために、槍の先端のみ

次も同じように質量を失い消えるのかと思われたが、刺さった感覚

人を刺したのはだいぶ久しぶりにも感じる。

飛び散る生暖かい血しぶき

だいぶ近かったためか刺した傷からあふれ、血が私にかかる。

残念ながら私には、人を殺して興奮したりする癖はないはず

血のにおいも血の生温かさも、何度もおこなってきたことなのだが、やはり慣れない。

いや、慣れてはいけないのだろう。これは少なくとも人を殺すという罪への罰なのだろう。

だが、それでも、私はワラキアに帰りたい。

無駄にしたくはない、わがままだとわかっているがその感情は私の心からは消えない。

どれだけの命を失わせたとしても勤めを果たす。

「不屈の心を持った英雄ですね。あなたは」

 誰もいなくなった空間からの声

「……何であなたは死なないのかしら」

目の前にはあの童女、先にあった時と全く変わらない笑みを浮かべている。

なんとなく予想していたが、やはり驚きもある。

「この空間の中で私を殺すこと不可能なのです」

……

「だって神だもの」

説明する気なしですか

またさっきと同じように胸を張る。

さっきまで服に染みついていた血も消えており、何もなかったのではと思ってしまうほど

そしてドヤ顔、すごく殴り飛ばしたい。

こいつほんとになんなのよ。

この力を見るのなら神と認めるべきだろうが

こんな神様を信仰したくないな…

「えええ、ひどいじゃないですか。これでも主神の一人なのよ。多くの民が私を崇め奉まつりまくってたのよ」

何も言っていないはずなのに

「何も言ってないはずなのに、ですね。」

……

「どうだ、すごいだろ」

私の心でも読んでいるのか?

「割とさらっとした対応だな、普通に考えとかすべてのぞかれたらあせるだろ」

焦っても何も変わらない、この言葉も考えもすべて読んでいるのでしょう

「ああ、そうですね」

何というか、だいぶ釈然としないといった風だが

それで何か目的でもあるのか。お前ほどの力があれば私を殺すぐらいは容易でしょう

少なくとも実力かぐらいは私にもわかる

「そうだ、あなたを殺すくらいならば赤子のそれよりよほど簡単なのですが、私としても色々と目的があるのです。」

目的ってなにかしら

「……、もうそろそろしゃべってくれないですか」

少し悲しそうに童女は言う

別に声に出す必要はないだろう

「まあ、そうなのですけど、私はこの頃一人でばかりいるから。誰かと話がしたいのですが。」

本音なのだろうか

なんだかうつむき加減で……

「それで目的ってなんだ」

まあ、いいよな

そう思いつつ声を出すと

「割と優しいのね。あなたは」

女は満面の笑み

くそが

私には自分が不幸であるがゆえに、かわいそうな子供に弱いという自覚がないこともない

「さてと、話を進めるわよ」

この童女は最初からこうなることが分かっていたのか

それじゃあ、つまらないでしょうね。

「そうなのよ、わかってくれる」

なんだよ、こいつ

せっかく、多少なりと理解できそうだったのに

だいぶいいところだったのに

空気読めよ。

台無しじゃないの

全く話が進まない、最初の方は私のせいかもしれないが

はぁーーーー

私は大きなため息をつきながら

「話してあげるからその力をときなさい」

「わかったー」

間髪入れずに元気よく返事

聞こえているのよね。

てか、これって確認する方法がないわね。

…まあ、しょうがないか

「それで、目的って」

「そんなに焦らないで、座りながらのんびり話しましょう」

さっきは、強引にでも進めるといっていたのにまったく進める気がないのか

「移動する必要があるかしら」

「ええ、だって疲れたんだもん」

……

「そ、そうね」

もういいや面倒になってきた

「大丈夫ですよ、すぐ終わりますから、ね」

ね、という言葉の後には真っ暗だった空間は、映画のスクリーンの様に一瞬にして変化し、一つの部屋に変化する

畳敷きの和室、その真ん中あたりのこたつの中に足を入れて座る私

足元があったかい

こたつの上にはしっかりとみかんやせんべいや入れたてなのだろう湯気の立ち上るお茶

まるで最初からここにいたかのような空間に私はいる

すごいのだけど、なんだかこんな超常現象がおこっておいて驚かない自分がいるのだが

「ふぅ、あったかい」

そして、この現象を起こしたであろう張本人は目の前でこたつに入り、机に頭を突っ伏してだらけている。

今ならこいつを殺れるだろうか

考えをめぐらすが、やはり前と同じように無理なのだろう。

「それで、話してくれるわよね」

zzzz

「寝てるのかよ」

なんだかこいつといると調子が出ない。

勢いでアツアツのお茶が入っている湯呑を投げそうになったがやめる。

「ああ、ごめんね、こたつがあったかいのがいけないのよ」

なんかよくわからんが言い訳をしつつ、頭を起こすと話し始める。

「まずは何から話そうかな」

「名前から教えてくれるかしら、あなたの」

「そういえば言ってなかったのですね、だから私、童女だったのだな」

なんか無駄な納得をしつつ名前をいう

「我が名はアマテラス、極東にて主神とし八百万の神を支配したもの、太陽の神を冠する存在だ」

ふはは、といった感じにかっこつけていっているのだろうか

 コタツにもぐりこんで寝転がっているようで顔が見えない。

「立ち上がっていったら多少の威厳が出るかもしれないわね」

「ええー、いやだよ。寒いし」

顔を見ることはできないがいやそうな顔が思い浮かぶようだ

「それでアマテラス、質問、このこたつとか和室とかは、ワラキアに存在しないはずのものよね。なんで私にはこれらの名称やら用途なんかが分かるの」

「ああ、それね」

うーーーーーん、

たっぷりと時間をかけ考え

あ、と何かひらめいたようで

パンと手を叩く

「その前に一応一つだけ」

「なにかしら?」

「甘いものの方がよかったですか」

そういうとこたつの上にいくつかのお菓子が現れる。

いきなりでちょっと沈黙

「えっと」

 少しの沈黙の間に、こたつの上はお菓子で埋め尽くされてしまう。

「いや、別にいらないは」

 甘いものが嫌いというわけでもないが、これだけあると邪魔だ。

「そうですか。」

 少し間をおいてこたつを埋め尽くしていたお菓子が消えていく。

アマテラスはその辺にあった半纏を着ると、起き上がる。

あったかそうなのだがな

「説明が面倒でながくなるけどいいですよね。」

「ええ、いいわよ。」

「それでは、説明していきますね。」


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