扉を開けた君の前には……
何も無い、青い空間。無限に広がるかのようなその場所に、白いテーブルと二つの椅子が置かれている。
テーブルには白いレースのテーブルクロスが敷かれ、中央には白い磁器の皿。それには香ばしく薫るクッキーが上品に添えられている。
二つの椅子の前には、やはり白いソーサーに載せられた白いティーカップ。そこに注がれている香り豊かな紅い液体は、傍に置かれた白いティーポットから注がれた紅茶であろう。
と、ティーカップに小さな手が伸び、カップを持ち上げると、これまた小さな口元へと運ばれる。
と、その手が止まって彼女がこちらを見た。
四方へ広がるように伸びたオレンジ色の髪は、先っちょの辺りが軽く上向きに跳ねていて不思議な髪型になっている。
まだ幼く起伏のない肢体を包むのは、オレンジのセーラーに赤いフレアスカート。足元はオレンジのショートブーツ。
椅子の背もたれに引っかけてあるのは、鍔広でオレンジのとんがり帽子。
まだ、あどけない容貌のその女の子は、赤黒い瞳の眼を細めてあなたに笑い掛けた。
「あら、いらっしゃい。『アリスのお茶会』へようこそ♪ アタシは破壊神アリス。この世界の門を守る、門番ってところね? まあ、立ち話もなんだからお座んなさいな」
にこやかに薦める彼女に対して君は言いしれぬ恐怖を感じてしまう。
君は、彼女の薦めに従い着席してお茶を楽しんでも良いし、薦めを拒絶して立ち去っても良い。
それは君の自由だ。