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ケルティング・ワールド  作者: 中川B奈
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巨人の事情

  「もったいないよ、長老」

 ガンコは息を整え、地面とおしくらまんじゅうしている長老を見下ろしながら言った。

 「はて、なにか損したかな僕は」

 長老は、手のひらに付いた土を叩き落としながら答えた。

 「もう、とんでもないよね。そのみすぼらしい格好。終わってる」

 「格好? いつもと同じだと思うけどなぁ」

 「じゃあいつも終わってるね」

 長老の言葉に食い込み気味でガンコがつづけた。

 「もっとちゃんとした格好すれば……」ため息が混じった。

 ため息の裏には期待もあった。ちゃんとした格好の長老をガンコは知っているのだ。

 話題を変えたい長老は、旅の道中気になっていたことを訊いた。

 「それより、あの子は元気かい?」

 大きな体に付いた大きな目を丸くし、ガンコは拳を震わせながら答えた。

 「……とっても、それはもう。お空に浮いてる雲が地中から湧き出てくるくらい、元気だよ」

 「そうか、元気か。良かった、安心したよ」

 ガンコのとんでも表現をサラッと受け流す長老。

 「さて、じゃあ体も疲れてることだし、大きなガンコちゃんの肩に乗って村に帰るかな」

 「え? その汚い格好で私の肩に? ご冗談ですよね」

 「ほら、これ、この葉っぱを敷いたら問題ない。それ用に採っておいたんだ」

 長老にとっては大きな葉っぱではあるが、ガンコにとっては小さなただの葉っぱ。

 そんなものを見せつけられて、ガンコはため息をつくほかなかった。

 「今日はため息だらけだよ、まったく」

 ガンコは、長老の座る横に手の平をそっと差し出した。

 その丸みのある手の平に、長老は大きなバックパックを背中に抱えて乗り込んだ。

 そして、いつ乗ってもいいクッションだと思う長老であった。

 その右の手の平が、左の肩に差し掛かると、長老は手の平から肩へ乗り移った。

 長老の動きはとても慣れていて、まるでここが自分の定位置だと言わんばかりに、肩のどの部分が乗り心地がいいかまで知っている動きだった。

 「やっぱここだよね。うん、この眺めはここでしか味わえない。外の世界にもこんなにきれいな景色は無いよ」

 『外の世界』という言葉に耳が自然と反応するガンコ。耳から脳に『外の世界』が到達し、ガンコは気になっていたことを訊いた。

 「ねぇ長老。今回はどうだったの? 外の世界」ざっくりとしか聞けないガンコは、なんだか自分がもどかしかった。

 「ガンコちゃんは何を訊きたいのか当ててあげようか」平静を装うとしているガンコだが、しっかり耳が反応していた。

 「ゴグとマゴッグ。自分の父親のことだろう?」

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