暗闇遊戯
これは明日の生死をかけた戦い。周りは全て敵のバトルロワイヤル。一撃もらえばそれ即ち死。さあ……闇の遊戯のはじまり、はじまり……
悲鳴が聞こえる。女の声だ。酷い金切り声。長く耳障りなその声は、黒板を引っ掻く音を想起させる。
笑い声がする。こちらは男だ。楽しそうに、愉しそうに、笑っている。
僕はその声に目を開けた。真夜中、真っ暗な大広間の真ん中、大量に敷いてある布団の上で僕は寝ていたようだ。ぼーっとした頭では、それを思い出すのにも時間がかかった。部屋の周囲から、笑い声と悲鳴が聞こえ続けている。
ふと、右手が温かい何かに触れているのを感じた。なんだ?と思って近づく。呼吸音がする。どうやら、人のようだ。
「大丈夫?」
声をかけるが、反応が全くない。まるで、これじゃあ、死んで……
ドサッ、と僕の近くで何かが倒れる音がした。手探りで近づく。触れると、その女は怯えたような声を出した。
「安心して、何もしないよ。大丈夫?」
「嫌……嫌……あ……」
そう言うと、事切れたかのように倒れてしまった。呼吸はあるようだが、一体どうしたのだろう?
何が起きてるのか探ろう。好奇心の強い僕は、その思いと共に枕を持って立ち上がった。
瞬間、風切り音と共に、耳元を何かが掠った。
「うわ!?」
僕は慌てて伏せる。何だ今のは?
すると、男の笑い声が一際大きくなり、こう叫んだ。
「大分犠牲者が増えたようだな。では、これからより熾烈な本戦を始める」
犠牲者? 本戦? 何が何やらわからない。僕は伏せ続ける。
「……開始!」
男女関係なく混じり合った笑い声が聞こえ始めた。狂ったように笑っている。時折混じる悲鳴。
わからない。見えない。だから恐怖は加速する。怖い怖いこわいコワイコワイ……っ!
誰かが近づく足音がする。
一歩、一歩、踏みしめるようなその音に吐き気がする。
そいつは僕の真横で立ち止まったようだ。僕は枕を握りしめた。恐怖で冷や汗が滲む。
「オマエ、オキテルナ?」
血の気が引く。何故この暗闇でわかる? 殺される? さっきの二人が思い浮かぶ。
死にたくない。
死にたくないっ!
僕はとっさに立ち上がり、手に持った物で相手を殴りつけた。
やってしまった。僕はそう思った。今の行動のせいで僕はこいつの逆鱗に触れ、さっきの死んだように眠る二人と一緒の、いや、それ異常の酷い目に遭うのだ。
「グワアアアッ!」
だが、その予想は外れた。苦しそうに叫んでそいつは倒れたからだ。
何故だ? 僕はそいつを殴った物の感触を確かめる。枕だ。確かに枕だ。
だが、だがもし違ったら? 何も見えない暗闇で、何故確かに枕だ、とわかる?
僕はひっ、という悲鳴をあげて、“それ”を放り投げた。
もう嫌だ、嫌だ! 誰か、誰か助けて!
その時、真っ暗な部屋に急に光が差し込んだ。静まる部屋。眩しいが薄目でそっちを見ると、人影がひとつ入ってくるのがかろうじでわかった。
それが右手をあげると、パチッという音ともに、部屋が明るくなった。眩しさに目がくらむ。そして、入ってきた人影は声を張り上げてこう言った。
「こんな時間に何で枕で殴り合いなんてしてるんですか!」
僕は安堵した。なんだ、枕で殴り合っていただけか、と。そうして、僕はまだぼーっとしている頭で眠りについたのであった。
……ちなみに、最初に僕が右手で触れていたのが、クラスの美少女マイナちゃんの、非常に、非常に慎ましい胸であった、というのは、僕だけの秘密である。
企画競作第二段。
お題「枕」
企画競作に興味ある方は、小説家になろう」で企画競作するスレPart3(http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1319658024/l50)に是非。
最後遊びました。主人公羨ましいぜ!