表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

暗闇遊戯

作者: 青芽野 雫

 これは明日の生死をかけた戦い。周りは全て敵のバトルロワイヤル。一撃もらえばそれ即ち死。さあ……闇の遊戯のはじまり、はじまり……



 悲鳴が聞こえる。女の声だ。酷い金切り声。長く耳障りなその声は、黒板を引っ掻く音を想起させる。

 笑い声がする。こちらは男だ。楽しそうに、愉しそうに、笑っている。


 僕はその声に目を開けた。真夜中、真っ暗な大広間の真ん中、大量に敷いてある布団の上で僕は寝ていたようだ。ぼーっとした頭では、それを思い出すのにも時間がかかった。部屋の周囲から、笑い声と悲鳴が聞こえ続けている。

 ふと、右手が温かい何かに触れているのを感じた。なんだ?と思って近づく。呼吸音がする。どうやら、人のようだ。

「大丈夫?」

 声をかけるが、反応が全くない。まるで、これじゃあ、死んで……



 ドサッ、と僕の近くで何かが倒れる音がした。手探りで近づく。触れると、その女は怯えたような声を出した。


「安心して、何もしないよ。大丈夫?」

「嫌……嫌……あ……」


 そう言うと、事切れたかのように倒れてしまった。呼吸はあるようだが、一体どうしたのだろう?

 何が起きてるのか探ろう。好奇心の強い僕は、その思いと共に枕を持って立ち上がった。


 瞬間、風切り音と共に、耳元を何かが掠った。


「うわ!?」

 僕は慌てて伏せる。何だ今のは?


 すると、男の笑い声が一際大きくなり、こう叫んだ。


「大分犠牲者が増えたようだな。では、これからより熾烈な本戦を始める」


 犠牲者? 本戦? 何が何やらわからない。僕は伏せ続ける。


「……開始!」


 男女関係なく混じり合った笑い声が聞こえ始めた。狂ったように笑っている。時折混じる悲鳴。


 わからない。見えない。だから恐怖は加速する。怖い怖いこわいコワイコワイ……っ!



 誰かが近づく足音がする。


 一歩、一歩、踏みしめるようなその音に吐き気がする。


 そいつは僕の真横で立ち止まったようだ。僕は枕を握りしめた。恐怖で冷や汗が滲む。



「オマエ、オキテルナ?」



 血の気が引く。何故この暗闇でわかる? 殺される? さっきの二人が思い浮かぶ。

 死にたくない。

 死にたくないっ!


 僕はとっさに立ち上がり、手に持った物で相手を殴りつけた。

 やってしまった。僕はそう思った。今の行動のせいで僕はこいつの逆鱗に触れ、さっきの死んだように眠る二人と一緒の、いや、それ異常の酷い目に遭うのだ。


「グワアアアッ!」


 だが、その予想は外れた。苦しそうに叫んでそいつは倒れたからだ。

 何故だ? 僕はそいつを殴った物の感触を確かめる。枕だ。確かに枕だ。

 だが、だがもし違ったら? 何も見えない暗闇で、何故確かに枕だ、とわかる?

 僕はひっ、という悲鳴をあげて、“それ”を放り投げた。


 もう嫌だ、嫌だ! 誰か、誰か助けて!



 その時、真っ暗な部屋に急に光が差し込んだ。静まる部屋。眩しいが薄目でそっちを見ると、人影がひとつ入ってくるのがかろうじでわかった。

 それが右手をあげると、パチッという音ともに、部屋が明るくなった。眩しさに目がくらむ。そして、入ってきた人影は声を張り上げてこう言った。





「こんな時間に何で枕で殴り合いなんてしてるんですか!」




 僕は安堵した。なんだ、枕で殴り合っていただけか、と。そうして、僕はまだぼーっとしている頭で眠りについたのであった。



 ……ちなみに、最初に僕が右手で触れていたのが、クラスの美少女マイナちゃんの、非常に、非常に慎ましい胸であった、というのは、僕だけの秘密である。

 企画競作第二段。

 お題「枕」


 企画競作に興味ある方は、小説家になろう」で企画競作するスレPart3(http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1319658024/l50)に是非。




 最後遊びました。主人公羨ましいぜ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ